リセットレベリングの不具合冒険者
ない
第一章 リセットスタート
プロローグ
――ああ、
この僅かな光が照らす
地面に横たわってふと思った。
僕は、今まで、
常人には決して理解できないであろう狂気じみている考えだ。
普通、自分の命は一回きりで、
誰もこの戯言を信じてくれはしないだろう。
でも、僕の命は
今まで、数えきれないほどの苦痛、
それでも、諦めないように、
なんとか
それでも、まだ僕は最善を尽くす事が出来ないでいたんだ。
「なあ…僕さ、あと何回お前に殺されればいいんだ?」
上を見上げて、自分をこんな状態にした奴に問う。
「…ギャッ!ギャッ!」
なんて、こいつに言葉なんて通じるわけが無かった。
こいつは魔物、僕達と敵対するゴブリンなのだから。
「ぐふっ……」
腰に刺さる短剣が、僕の体力を急激に減らしていく。
何回、あと何回刺されば僕は終われる?
洞窟に響くのはゴブリンのゲスな笑い声と、
一人の少女の悲痛な呼び声。
やがて、僕の体は動かなくなるだろう。
この展開が変わる事はない。
僕はここで死ぬ運命…
いや、もっと前に運は尽きていたのかもな。
「エレノア…さん。大丈夫、ですよ…」
ああ、僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。
駆け寄って来て、僕に向けて何か言っている。
もう、思考できる段階では無くなってきているんだ。
そんなに、悲しそうな顔をしなくても大丈夫。
だって、
「また…戻って…………」
リセット、リセット、リセット。
また、経験する。
また、人生がやり直される。
この地獄が終わる時が来るのだろうか。
彼女がそんな顔をしない時は来るのだろうか。
分からない。
そもそも、
何でこんな事になっているんだっけ…?
……そうだ。
あの、薬を…飲んだ……あの……日………………。
**
…とある薄暗い
肉を裂く剣撃の音が聞こえて来る。
その一撃は、速く重い。
並大抵の者では真似できない芸当。
魔物が悲鳴をあげる暇も与えない
細い刀身は真っ赤に染め上げられ、
敵を全滅させるまでそのスピードが落ちることはない。
それを振るう者は、
つい最近まで
剣は
経験と身体能力がカバーし合い、絶命させるまでの過程を完成させている。
やがて、その
突如として静寂に包まれ、
張り詰める空気が消える。
その少年は、
間違いなく経験とレベルだけなら“世界最強”を名乗っても許されるほどの力を有していた。
**
「――大丈夫ですか? エレノアさん」
僕は
「…ヴァン君、一体どうしちゃったのさ」
どうした。
そんなよく分からない事を聞いてきた。
「ひょっとしてこの髪の事ですか? …僕にもよく分からないんですよね」
血を払い落として刀を
「さ、早く街に戻りましょう。毒がまわりきってしまうと大変なので」
彼女は今毒にその身を冒されている。
一刻を争う状態なので、僕が
戦闘時間は一分くらいだろうか。
僕の割には素早く済ませられた方だと思う。
「…さっきまでとはまるで別人だよ。あれほど
「あまり無理して話すと危ないですよ?」
彼女を抱えて街へと向かう。
ああ、やっとだ。
やっとエレノアさんを、救える。
これまで何度
確か……120回ほどだっただろうか。
いや、もっとしているかも。
そう言えば…【L v 260】とあったが、前回のリセットの時よりもレベルが100くらい上がっていたな。
こんなに一気に跳ね上がったのは何故なんだろう。
「……まあいいや。今は走る事に集中しよう。
自分に言い聞かせて、街へと戻る為出来る限りの全力疾走で駆け抜ける。
――リセット。
あの薬を飲んだ日から、全てが変わった。
僕は、死ぬべき運命に
経験を積みに積みまくり、レベルを上げていったんだ。
“慣れ”で毒を克服して、エレノアさんを死なせない為に何度も何度も死んで、リセットした。
その結果。
――僕は、力を手にしたんだ。
道を切り拓く、力を。
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