25日目「少しでも埋められるなら」
朝、美咲と歩く登校路。1日経った今でも、美咲は昨日のように不貞腐れたままだった。どうやら最近のアタシの態度は余程美咲にとって堪えるものだったようで、これは機嫌を直してもらうのにも大変な苦労をかける必要がありそうだ。
「美咲、どうしたら機嫌を直してくれるんだ?」
これ以上このままの状態でいるのはアタシがしんどいのはもちろんだが、美咲も美咲でしんどいだろう。不機嫌なままでい続けるのは、それだけで疲れるものだ。こうして一緒にいてくれている以上、アタシと縁を切るつもりはなさそうだし、きっと何かして欲しいことがあるんだろうと聞いてみる。自分で気づかないといけないという意見もあるだろうけど、それでずっとこのままなのは耐えられない。
「じゃあ、今日1日私の彼女になって」
案外、美咲は自分で考えろというタイプの人ではなかったことに安堵する反面、その答えにアタシは硬直してしまう。いま、美咲は何を命じた? うん、きっと聞き間違いだ、そうに違いない。
「ごめん、もっかい。何して欲しいって?」
「今日1日! 私の彼女!」
全くもって聞き間違いではなかった。なんということだ、アタシが美咲の彼女? いやいやまさか、本気か?
「彼女って、アタシは何をすればいいんだ?」
彼女、彼女か。と言っても、この場合アタシは彼氏ポジションにおさまるのだろうけど、一体何をさせられるのか。というか、それってつまり1日なんでもいうことを聞くというのと同義では無いか。友情のためとはいえ、ちょっと面倒臭い。まあ、流石に無茶振りは来ないと信じることにしよう。
「じゃあ、まずは恋人繋ぎで学校まで行こっか」
美咲は笑ってこちらに手を差し出す。ううむ、仕方あるまい。恐る恐るその手を握って歩く。なんだか変な感じだ。ムズムズするというか、そもそもあんまり手を繋ぎ慣れていないので、こそばゆいような、なんというか。
「えへへ、制服デートだね」
美咲はデレデレになって嬉しそうに話す。まさか本気でアタシを彼女にしたいとかじゃないだろうな。少しだけ警戒してしまう。
「制服デートも何も、普通に高校で勉強だろ」
いくら浮かれているとしたって、平日の登校路でデート気分は流石に浮かれすぎというものだろう。もう少し落ち着いて欲しいのだが。まあ、それで機嫌を直してくれるなら、まあいいかと、こちらからもぎゅっと手を握ってやる。
「つまり、学校デートってやつですな!」
まったく、まあ、それでもいいか。
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