史上最強の LV.1 勇者ロリコン〜不本意で召喚された勇者、無能野郎だと蔑まれているがロリコン特有のユニークスキルで天下無双〜

さとう としお

第1話 王国が危ない!

 事の発端は些細なことだ。この国の名前はマーガレット王国。なんとも綺麗な花のような名前だ。しかし、そんな花にはさっぱり似合わない問題がこの国では発生してしまっていた。


「このままだとまずいわね、」


「火の神、やはり勇者召喚するべきですよ!」


ここ、神聖なる会議室では、いつにも増して緊張感が走っている。そして只今、いかにも深刻そうな顔を浮かべた火の神に風の神が容赦なく追い討ちをかけている所である。

 そう、この国、マーガレット王国ではとある会議が行われていた。その内容と言えば・・・・・・勇者召喚をするか否かである。

 何故ここに至ったのか、その経緯を説明しよう。まずこの国ではそれぞれ火、風、水、土、四人の神様が存在している。そして、それぞれ四人の神達は各自決められた大きさの領土を領しており、それぞれの神ごとに区画が設けられている。

 それぞれの神がそれぞれ自分の領土を集中的に気にかけ活発に栄えさせ発展させていく。そんな構造で今まで上手くやりくりしてこれた、そして現にこの国は三百年間なんの音沙汰も無く平和に暮らせてきたのだ。

 ところがどっこい三百年経った今、マーガレット王国の平和に終止符を打つように魔王軍が攻めてくるらしい。この国の危機、このままではこの国が危ない! とそこで出てきた頼みの綱が勇者召喚という訳だ。『勇者召喚』と一言で言っても勇者召喚には勇者召喚なりのリスクってもんがそれなりにある。

 リスク云々の前に勇者召喚とは何か、勇者召喚。それは至ってシンプルなことで、ここの世界とは別次元に存在している世界から勇者の素質があるもの、ステータスが高いもの、特集なスキルを持つもの・・・・・・をセレクトし、この国に転移させ、修行を行わせ勇者に仕立て上げるといったシンプルなものだ。

 ここまでは勇者召喚するにあたってのメリットだ。そして肝心なデメリット、、勇者召喚のリスク、、それは勇者召喚を行い召喚された勇者たちが万が一、魔王軍に敗北を喫した場合、勇者召喚をした神々、四種の神々『全員』が消滅してしまうということ。四種の女神たちが渋っていた理由がなんとなく分かるだろう。勿論、火、土、水、風、四種の神々が消滅するとなれば魔王軍の侵略は滞りなく進むに違いない。


 だがしかしこんな状況で勇者召喚を渋っていては勝敗云々の前に世界が滅んでしまう、厳密に言えば魔王軍に支配されてしまう、支配される事は、滅ぶこと、とニアリーイコールで結ばれることだ。すると


「やはりするべきよね」


 火の神が口を開いた。流石の彼女も今やこの世界の現状に冷や汗を垂らしているようにみえた。すると先程まで深刻な表情を浮かべ黙り込んでいた土の神も焦りを見せたのか続けて喋り出した。


「うん、そうだよ、このままだとこの世界が危ない、、勇者召喚しなきゃだよ、、」


「異議を唱える者は挙手よ!」


 数秒の沈黙が続いた。・・・・・・まあ、要は異議なし。そういう事だ。そして次に沈黙を破ったのはまたしても火の神だった。


「ッよし、決まりね! 明日また会議室で待ち合わせよ、しっかり未来の勇者を見極めるのよ、勿論明日の会議、遅刻なんて許さないわ! いいね??」


 淡い赤色の長く綺麗な髪の毛がさらさらっと肩にかかっている、なんとも奇抜な髪型だが 火の神 プロテア にはうってつけの髪型でよく似合っていた。そんな見かけによらず、火の神プロテアに圧倒されるように神々の会議は幕を閉じた。




早朝の六時、火の神プロテアだけが勇者決めに苦戦しているようで朝早くから起きているようだ。真下の床にこれほどまでよく用意できたな、という量の勇者候補の人材を並べていた。さらに驚くべき事は真下の床では並べきれずにまだファイルに残っているという事だ。

 一方のプロテアはベッドから体を起こし、あぐらをかいて座っていた。ゆえにあぐらをかきながら勇者候補を眺めるプロテアの姿は到底女神とは言い難かった。


「うーん、、これは迷いものね、銘々のステータスや潜在能力が書かれた紙が渡されたのはいいけど、、どうにもこうにも量が多すぎるわ!!」


 すっかり困りきった様子でプロテアは愚痴っていた。念を押して『明日の会議で待ち合わせよ!!』なんてぬかしていたのは一体誰だっただろうか。おまけに明日の会議までのタイムリミットはもう残り三時間と言ったところだろうか。


 今更になって何を言っているのかこの女神、昨日の会議からはそれなりの時間は経っているだろうに、、今まで何をしていたのだ? そう、あろうことかこの女神は今の今までずぅっと眠っていたのだ。そして今の時刻は六時、早起きといえば早起きだろうがこの女神、十五時間はくだらないほどに寝ている。寝過ぎている。


 一方その頃、他の女神はもうとっくに勇者候補などは決め終わり会議の為の支度を始めている真っ最中だった。‥‥すると突然


「ッぷぷぷ、何よこの人っっ!」


っと思わずプロテアが吹き出した。それもそのはず、思わず笑ってしまうのも無理はない。今、プロテアが指をさし、まるでゴミを見るような目で嘲笑っている相手というのは

白石 湊人(しらいし みなと) そう、この男。よりによってコイツのステータスは、力をはじめとし、体力、精神力、攻撃力、魔法攻撃力、防御力、魔法防御力、運、素早さ、命中力、回避能力、全てに置いて綺麗なまでの1だった。白石湊人コイツは正真正銘、潜在能力のカケラもない勇者とは言い難い勇者候補だった。その後数分間、プロテアは散々コケにして笑い続けた。


すぅ〜はぁ〜っ


 深い深呼吸を一つ。ようやっと落ち着いたようだ。すると自分より格下の相手に笑い疲れたプロテアは


「あ〜あっ! この人面白いわ!! ‥‥あっ、そうだ!  会議で皆んなに見せて笑い物にしてあげるわ!! それで決まりよ!!」


 プロテアは笑い混じりにこんな提案をし、白石湊人について書かれた紙を強引にポケットへと詰め込んだ。全く、女神としてあるまじき行為だ。すると、次の瞬間なるはずのない目覚まし時計のタイマーがなった。うるさいくらいに部屋全体に響くタイマーはプロテアが朝早く起きれなかった場合を想定し遅刻する可能性を未然に防ぐために八時四十五分にセットしたタイマーだ。

 よって今なるはずがない。ましてやこの前に買ったばかりだ、相当使い方が荒くない限り壊れている事はないだろう。


 そう、女神様がそんな手荒な真似するわけないだろう? 


 プロテアはあぐらを少しほどき前のめりになって部屋の時計を確認する。だがしかし絶賛愛用中のピンクの時計のさす時間にはまだ余裕があるように見えた。まだピンクの時計の時針は六を少し過ぎたくらいだ。まだ余裕がある。

 『?』で頭が一杯になったところで最近使っている目覚まし時計(電波)を確認しようとした。しかしこの目覚まし時計は朝起きる時にこれでもかというほどに払いのけてしまっていたのでプロテアは仕方なくベッドから立ち上がり目覚まし時計を確認しに向かった。

 っとすると覗き込んでみてみた目覚まし時計がさしている時針はびっくり仰天! もう少しで九時をまわるところだった。そうだ、九時といえば会議をする約束の時間じゃないか。これには思わずプロテアも「え??」と声が漏れていた。

 これでは会議まで残り十五分といったところだろうか。これには彼女も空いた口がふさがらなかった。なにゆえこんなことになったのか。

 残念・・・・・・無念・・・・・・まさにプロテアが愛用していたピンクの時計は壊れていたのだ。





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