6人目

 リカは学校の下校中に、マンガを読んでいる。内容はこう。

 ナルベコフ家の少女がよその家に嫁ぐことになりました。名前は最初カレーシアでしたが、嫁ぎ先でカリンと改名します。

 彼女が嫁いだ先は、イルハムの息子で九條家に養子の出されていた忠利ただとしでした。2人とも美男美女のほまれ高く、このとき16歳。仲は良く、嫁いだ翌年には1男1女ともうけます。しかし、それから3年後、実家であるナルベコフ家は帝国に対しはんらんを起こし、宰相を暗殺。反乱は結局カンタールによって鎮圧し、カリンの父も逃亡途中に落命してしまいます。忠利イルハム父子はカリンを愛していましたが、自分たちの生き残りのため、カリンを幽閉します。

 お家のためにと自害を進めるものもいましたが、カリンは

「父への孝行もありますが、夫のいうことも聞かずそういうことをするのは、妻の道をたがえてしまうことになります」

と、忠利への愛をつらぬきます。

 やがてカンタールに許されて、忠利のもとに帰った彼女は、つらい暮らしが待っていました。九條家と交流があった共和国の外交官は、こういう記述を残しています。

「忠利どのの妻に対する過度の嫉妬ヤンデレのための、な幽閉と監禁は、それは信じられぬほどであった」

 こんなエピソードがあります。

 たまたま九條家の庭を整えているときに、カリンを見かけた庭師がいました。それを見た忠利はいきなり庭師の首をカタナで切り捨ててしまいました。そしてその首をカリンの前に置きましたが、カリンは動じません。たまりかねた忠利は

「おまえは蛇なのか!?」

と、怒鳴りますが、カリンは

「鬼の妻には蛇がお似合いでしょう」

と、返しました。

 やがて、天京院のもとに従軍していた忠利は

「もし、敵に攻められて追いつめられたときに、生きて辱しめをうけてはならぬ、よいな」

と、カリンと部下たちに言い含めていました。

 その後に起こったことは、本編で記述した通りです。

 すべてが終わったのち、忠利はカレンの墓所を造り、毎日そこに手を合わせるのが習慣になったそうです。

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