第55話 助っ人 くーちゃん誕生(5)
「なゼ人間ガ、鬼人ヲ・・・心配スる、人間ハ・・・人間は」
既に虫の息のような状態である
その光景にシノアリスは慄くが、喋る魔物の存在にふと何かを思ったのか暁に問いかけた。
「暁さん、もしかしてあれが」
「あぁ、
暁の回答に、この魔物がとシノアリスは再び視線を向けた。
その姿は確かに猪人族に似ているが、猪人族でもない。
「おやおや?おかしいですね」
「!?」
突如シノアリスの背後から聞こえた声に、暁は咄嗟にシノアリスを引き寄せ身構える。
だがそこには魔法の絨毯の上に行儀よく鎮座した黒猫のことくーちゃんがいた。
「あ、くーちゃん!」
見知った様子のシノアリスに暁は、くーちゃんに警戒しつつも腕の中にいるシノアリスへ問いかけた。
「シノアリス、あの猫は?」
「
「
「えーっと実は私も良く分かってないんですけど」
正直
シノアリスが分からないことを暁が分かるはずもなく再度くーちゃんに視線を向けるも、くーちゃんは
「・・・先ほどの
「え?そんな高機能なことできるの?」
「
「動物が、喋ってる・・・」
今更な突っ込みを暁がするも、スルー機能も搭載されているのかくーちゃんは暁の突っ込みには何も返さなかった。
「確かに調整したはずのに、
くーちゃんの言葉通り、先ほど放った
まるで意思があるかのように巧みに避け、魔物だけを貫いた。
そして、勿論
届いたのに、なぜ
「獣人、だからじゃないの?それで威力が落ちたとか」
「わたしにも分かりません」
「まぁ、そうだよね」
分からない、と首を振るくーちゃんにシノアリスも自身の仮説が無理矢理すぎるのは理解していた。
では、一体なぜなのか。
「こんなときステータスとか見れたらいいのにね」
思わずゲームやラノベ世界にあるステータス鑑定が出来たらとシノアリスは冗談交じりでつぶやいたつもりだった。
「ごしゅじんさまは見れますよ?」
「え?」
「ごしゅじんさまには
「えぇえ!?私加護なんて授かってな・・・」
途端、シノアリスの脳裏によみがえる
思い出した瞬間、シノアリスは即座に己のヘルプでスキル一覧を開いた。
----------------------------------
【スキル】
・鑑定 Lv.MAX
・薬神の眼
・妖精の眼【new】
・錬金術 Lv.MAX
・創作 Lv.2
・生活魔法 Lv.7
【エクストラスキル】
ヘルプ Lv.3
【
・くーちゃん
----------------------------------
シノアリスの知らないスキルが勝手に増えていた。
思わず現実を拒絶するかのように両手で自身の顔を覆い、空を仰ぐように仰け反った。
「・・・」
あれか、あれなのか。
実はあの頬キスが加護を授けていたことになるのか。
事実を否定したく、妖精の眼の項目に触れれば詳細と取得条件がシノアリスの前に現れる。
【妖精の眼】
【妖精族の加護を受けた者、または血筋のみが受け継げる特殊な鑑定眼。
対象のステータス内容を全てを見れる。
また使用回数などな所有者の魔力によって見れる内容が違う。】
【取得条件】
【① 妖精族より加護を受ける】
【② 妖精族の血を受け継いでいる(血が薄くなっている場合、取得確率は0.01%以下になる)】
その取得条件に、シノアリスは静かに自身に妖精の眼をかける。
すると目の前にうっすらと透けた紙のような物が出現した。
・シノアリス
【種族:人族】
【職業】錬金術士
一番初めに書かれた項目にはシノアリスの名前と職業が出ている。これがシノアリスのステータスなのだろう。
そっと視線を動かし下へと進めていく。
【体力】110/500
【魔力】120/108500(+100000)
「ぼはッ!!」
「「!?」」
それを見た瞬間、思わず噴き出してしまう。
傍にいたくーちゃんや暁は、突然噴き出したシノアリスに驚きで大きく肩を跳ね上げる。だが、それに気づいていないシノアリスはステータスが書かれている紙から視線を逸らした。
なんだこれ、とシノアリスの頭の中には混乱と驚きで満ちていた。
何故なら自身の魔力量が異常であったから。
シノアリスは自身の記憶を遡る、以前どこかの国の図書館で、魔力数値についてシノアリスは読んだことがあった。
魔力数値とはその人の魔力の量である。
魔力の数値が高ければ高いほど、高度な魔術を利用できる。
歴代の聖女や有名な魔術師なども高い数値を所有しており、それらを基準として今でも魔力測定をする際の判断基準とされている。
彼ら、聖女や有名な魔術師が所有する魔力数値をシノアリスは必死に思い出す。
「確か、今代の聖女様の魔力数値が5,000だったはず」
その数値は歴代聖女の中で最高値と言える、と風の噂で聞いた。
しかし先ほどシノアリスのステータスには一万以上を超えており、明らかに異常な数値であった。
「・・・」
もしかしたら、見間違えたのかもとシノアリスは恐る恐るステータスに表示されている魔力を確認する。だが悲しいことに未だ数字は一万以上を超えていた。
「これ・・・隠ぺいとかできる?項目削除とかできないの?」
「シノアリス、どうかしたのか?」
「いえ、なんでもありません!」
あまりに挙動不審だった所為か、暁が恐る恐ると声をかけてくる。
ステータスがシノアリス以外に見えていないと分かっていても無意識にその項目を隠す様に手で覆いつつ、誤魔化した。
無視したいような、無視できないような内容ではあるが、いまはそれどころではないためシノアリスは強制的に今見た内容を頭の中から追い出した。
気を取り直して、再び視線を下にずらせばようやくお目当ての項目を見つけた。
・
・
【
・くーちゃん
【加護】
・
ばっちり加護がついてた。
その瞬間、シノアリスの思考は静かに停止した。
だが無情にもステータスは変わることなく、思考停止をするシノアリスに現実を突きつけている。
「おそら、きれい・・・」
既に思考回路はショートになる寸前であり、頭を抱えそうな展開にシノアリスは現実逃避をするように空を見上げた。
だが、それ許さず現実に引き戻す様にくーちゃんはシノアリスの服の袖を引っ張る。
「さぁ!ごしゅじんさま!早速ステータスを見てください!」
「おぉう」
現実逃避をさせてくれない助っ人にシノアリスは内心涙を零しつつも、鮮血将軍猪人族に視線を向けて妖精の眼を発動させた。
「ん?!んぅううう!?」
発動させたのだが、出た結果に思わずシノアリスは驚きの奇声をあげてしまう。
いまシノアリスの眼には、しっかりと二つの結果が表示されていた。
【鑑定結果】
・
【種族:猪人族】
【体 力】100/30000
【魔 力】0/0(3000)
【スキル】
・忍耐(共鳴中)
・ダークスライム(闇属性所有/融合中)
【種族:魔物(レア)】
【体 力】1/5
【魔 力】0/3000
【スキル】
・憤怒(共鳴中)
「え、なんで!?結果が二つもあるんですけど!?」
「二つ?」
「一つは猪人族なんですが、もう一つはダークスライムって書いてあります」
「ダークスライム?ごしゅじんさま、他に何が見えますか?」
シノアリスの発言に、結果が見えていない二人は訝し気な顔になりさらに詳細を求めた。
「えっと、スキルのところが共鳴してる」
「共鳴ですか?」
「うん、猪人族が忍耐を、スライムが憤怒のスキルを持ってる」
「忍耐と憤怒ですか」
「あと、融合中とも書いてあるよ」
「忍耐、憤怒、そして融合・・・」
シノアリスから与えられた情報に、くーちゃんはなにかを考えるように黙り込んでしまう。
それを見守っていたシノアリスと暁だったが。
「スライム・・・だト?」
シノアリスの鑑定結果が聞こえたのか鮮血将軍猪人族は、ありえないとばかりに声を震わせ否定した。
「フザケルな!俺ハ、鮮血将軍猪人族「スライム」ダ!スライムじゃナい「ダヨ」ッ!?」
鮮血将軍猪人族から二重に聞こえる声にシノアリス達だけでは鮮血将軍猪人族自身も驚いたように目を見開いた。
シノアリスも暁も同じように驚きで鮮血将軍猪人族に視線を向けるが、くーちゃんだけは冷静にその状況を分析していた。
「ふむ、どうやら体力を消耗した所為で片割れが表に出てきたのでしょうね」
****
本日の鑑定結果報告
・妖精の眼
妖精族の加護を受けた者、または血筋のみが受け継げる眼。
対象のステータス内容を全てを見れる。
また使用回数などな所有者の魔力によって見れる内容が違う。
取得条件
〇 妖精族より加護を受ける
〇 妖精族の血を受け継いでいる(血が薄くなっている場合、取得確率は0.01%以下になる)
・魔力数値
魔力数値とはその人の魔力の量である。
その人の魔力の量である。
魔力の数値が高ければ高いほど、高度な魔術を利用できる。
今代の聖女の魔力数値は5,000であり、歴代聖女の中でトップクラスの数値らしい。
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