第53話 助っ人 くーちゃん誕生(3)
シノアリスは、ヘルプから問われた内容にいまいち把握が出来ず首を傾げた。
皆が助かる方法をヘルプに求めたのに、返ってきた内容が
だが、シノアリスは何かに気付いたようにボードを凝視した。
「もしかして、これを使用したら暁さんを助けられる?」
この“助っ人”というスキルがどういう内容なのかシノアリスは知らない。
だけどヘルプはどんなときでもシノアリスを手助けしてくれた。
その絶対的な信頼があるからこそ、これを使用すれば
ならば迷うことなどない。
「する!
【
【
「はい?」
何故に見た目?
シノアリスは意味が分からず首を傾げるが、そんなシノアリスを置いてヘルプは三つの画面を表示する。
三つの画面にはそれぞれ犬、黒猫、
すると三つの画面が消えて、次の画面が現れる。
【名前を決めてください】
「は、はいぃぃい!?」
今度は名前の入力画面へと切り替わり、シノアリスは本格的に混乱した。
これが普段であれば、シノアリスも楽しんで名前など決めただろう。
だが、今は非常事態なのに何故アバター作成みたいなことをするのかと頭痛に襲われる。
スキップする機能がないかと探すが見当たらない。
名前を決めないと次に進めないのだろう。
「名前、名前・・・えっと、うーんと・・・・・黒猫、だから“くーちゃん”?」
【“くーちゃん”で登録しました】
【性格はどうしますか?】
「細かいな!?」
選択肢には“のんびり”“人懐っこい”“ツンデレ”と出ており一体今自分は何をしているのだろうとシノアリスは若干現実逃避しながら“人懐っこい”を選択する。
【大きい子にしますか?小さい子にしますか?】
「どっちでもいいよ!」
適当に画面を叩きつけながら叫んでしまう。
すると項目は“小さい子”を選択したようだが、どうでもよかった。
半場投げやりな回答になってきているが、非常時なので致し方ない。
【女の子にしますか?男の子にしますか?】
「その質問の意図はなに!?」
お好きにどうぞ!?と若干キレながら返答をすれば項目に“自由”と明記され、次の画面へと切り替わる。
【求める力を選択してください】
「まだあるの!?」
いまとても非常事態なんですけど!とヘルプに訴えるが、ヘルプからの要求は変わらない。
現れた選択肢には【武技】【魔法】【防御】とあり、シノアリスはフルフルと耐えるように震えながら一番真ん中の【魔法】を選ぶ。
【付与したい魔法属性を選択してください】
「もぉぉぉお!なんでもいいから!!全部でいいから、助けて!!!」
我慢の限界だったのか、シノアリスは表示された項目全てを選択し腹の底から叫んだ。
【設定が完了しました】
【
「!?」
突如ヘルプ画面から眩い光が発せられ室内を包みこむ。
咄嗟にシノアリスは光から顔を守るように両手を交差させるも、僅か数分で光は収まりシノアリスは恐る恐ると腕を下ろすも景色に変わりは全くなかった。
どういうことだ?と首を捻るも、何かが膝を引っ搔いているのに気づき、視線を下げれば。
「おはようございます、ごしゅじんさま!わたくし
「へ?」
「ごしゅじんさま!最初のご命令をお申しつけください!」
真っ黒な毛並みに青色の瞳をもった小さな黒猫が、行儀よくお座りをし可愛い声で自己紹介をしている。
シノアリスは事の展開についていけず固まってしまうも、黒猫のこと“くーちゃん”はご命令を!と何度も同じ言葉を繰り返した。
「え、あ、じゃあ・・・い、入口。入口が塞がってるの。どうにか、なる、かな?」
「お任せください!ごしゅじんさま!!」
最初の命令をそれは嬉しそうに承諾し、くーちゃんはスタスタと入口へと向かっていく。
「“
一言唱えた瞬間、まるで空気の大砲を放ったかのように入口が吹っ飛んだ。
いや寧ろ、入口どころか部屋の壁も一緒に吹っ飛んでいる。
さきほどよりも大惨事な状態となった部屋にシノアリスは驚きよりもドン引きしていた。
「ごしゅじんさま!くーは出来ましたよ!」
褒めて褒めて!と尻尾を揺らし駆け寄ってくる姿はとても愛らしい。
前方にある破壊した壁の存在がなければ。
シノアリスは片手でくーちゃんを褒めるように撫でるも、徐々に現実が見えてきたのか両手でくーちゃんを掴みあげた。
「くーちゃん!お願い!!」
「は!はいぃぃいい!?なんですか、ごしゅじんさま?」
「あなたの力を貸してほしいの!」
くーちゃんのこの強大な魔法があれば、この危機を乗り越えられるのでは。
まるで暗闇に光が差し込むかのように希望があふれ出てくる。
やはりヘルプは、いつでもシノアリスを助けてくれる。
シノアリスは心の中でヘルプに感謝をしながら、くーちゃんに現状を説明した。
現在。
「なるほど、
「
勿論主人であるシノアリスから助けを求められ、
「くーに全てお任せください!ごしゅじんさま!!」
「くーちゃん!凄い頼りになる!」
「ではまずは現場に向かいましょう!!」
「うん!いそご・・・あれ?」
急ごうとその場を駆けだすために、座り込んでいた腰を浮かせようとするが足に力が入らずペタリと再び腰を落としてしまう。
今更ながらに腰が抜けて力が入らないことに気付いたシノアリスは青褪めた。
「動いて!動いてよ!!」
足手纏いになってしまっている事実を受け入れたくなくて、シノアリスは何度も足に力をいれるが立ち上がれない。
まさか此処で自身が足を引っ張る形になるなんて、とシノアリスは悔しくて涙を滲ませた。
「ごしゅじんさま?」
「・・・くーちゃん」
せめて、くーちゃんだけでも現場に駆けつけてもらえるよう願おうと口を開きかけたとき。
「ごしゅじんさま!くーにお任せください!」
シノアリスが
「ごしゅじんさま!こちらにお乗りください!」
「え、あ、うん」
くーちゃんに言われるがまま、シノアリスは這うように絨毯に乗った。
するとシノアリスが絨毯に乗ったのを確認すると、くーちゃんは「“
その瞬間、絨毯はまるで某ランプ映画に出てくる魔法の絨毯のように空を浮き始めたではないか。
「え?えぇぇえ!?」
「行きますよ!ごしゅじんさま!!しっかり捕まってください!」
「おぎゃぁああ!?」
前世の日本で見た映画のように、まるで意思があるかのように宙を飛んでいく絨毯。
「おい!シノアリス!!無事・・・・」
絨毯が商業ギルドを飛び出す途中、カシスと思われる声が聞こえた気がしたがシノアリスは絨毯に必死に捕まっていたので振り返ることすらできなかった。
絨毯は商業ギルドを飛び出しグングン上昇していく。
シノアリスはそろりと目を開けば絨毯は、屋根よりも高い位置で飛行していた。そのお陰か大門での状況が良く見えた。
ナストリアの正面に発動している透明の壁が魔物の侵入を抑えているのだろう。
大門から人の喧騒や爆発音が聞こえ、あがる黒い煙から香る焦げた匂いに顔を歪める。
幸いまだ大門は破られていないが、時間の問題だ。
そして、突如現れた黒い竜にシノアリスは驚いたように目を見開いた。
「なにあれ!?」
「ほほぉ、どうやら向こうに闇属性の使い手がいるようですね!」
くーちゃんの眼がキラリと光る。
そして黒い竜が
だが、くーちゃんは動揺することもなく指示を伺うように見上げてくるので、シノアリスは我武者羅に叫んだ。
「くーちゃん!助けて!魔物も全部やっつけて!」
シノアリスからの指示にくーちゃんは愛らしい笑顔で「おまかせください!」と返事をすれば丁度ナストリアの前門上空で絨毯を止め、全身から眩い光を纏い始めた。
「
くーちゃんが呪文を唱えた瞬間、巨大な光の十字架が無数に現れる。
そしてまるでガトリング砲のように一斉に魔物に向けて降り注がれていった。魔力操作もできるのか器用に冒険者や暁などは避け、魔物だけを串刺しにしていく。
勿論、
****
本日の鑑定結果報告
・
契約者の不足を補う存在、契約者の魔力を代わりに使用して攻撃、防御、回復などを行ってくれれるマスコット的なもの。
動物には【犬】【猫】【
また内容は【武技】【魔法】【防御】と統一である。
【魔法】は属性も選択できる(数に制限は設けていない)
シノアリスは急いでいたので全属性を選択したので、最強の魔法使いマスコットを入手したと言える。
※過去Excelにて断トツ「お前を消す方法」で検索されるマスコットがモデルです。
・
光属性の古代魔法。
失われた魔法と言われるくらい強力な攻撃魔法、聖なる十字架の刃にて広範囲の敵を貫く。
生産量やコントロールが非常に難しく、また巨大な十字架を作成するにはとてつもない魔力を要する。
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