第54話 愉快な仲間たち
「だがまずは貴様らからだ! こいつらの繁殖のために糧にしてやろう! さあ、行け、奴らを喰らい尽くせ!」
「「「ウゴアアアアアアアアアアアアアッ!!」」」
魔族が合図すると、オーガの大群が一斉に雄叫びを轟かせた。
「ど、どうすんのよっ!? さすがにこの数はあたしでも厳しいんだけど!?」
「アンジェ、珍しく弱気」
「う、うるわいわねっ! じゃあ、あんたに何か策でもあんの!?」
「ない」
「ないんかい!」
「ん。でも、レウスにはある。……はず」
ファナの視線が俺の方へと向く。
「うーん、そうだね……」
さすがにあの数のオーガとなると、今の俺では厳しい。
途中で魔力が足りなくなるはずだ。
マナポーションなら幾らでも亜空間に保管してあるが、あれは大量に飲み過ぎるとちょっと副作用があるしな。
俺が前世で作っていたマナポーションなら、その辺の心配もないんだが……特にこの赤子の小さな身体では怖い。
「というわけで、愉快な仲間たちを呼んじゃうね」
「愉快な仲間?」
「うん。家族と言ってもいいかも」
「……?」
俺は杖モードのリントヴルムを掲げ、召喚魔法を使った。
足元に巨大な魔法陣が展開され、煌々とした光が噴出する。
その光が収まったときには、そこに巨大な黒い影が出現していた。
『かーちゃん、久しぶり』
『……これはお前の仕業かい』
『うん。ちょっとかーちゃんの顔を見たくて。あと、力を貸してほしくてさ』
『どう考えても理由は後者の方だろう』
俺が呼び出したのは、狼かーちゃんだった。
実はいつでも召喚できるよう、寝ている間にこっそり召喚獣契約を結んでおいたのだ。
『夜中に何かごそごそしているときがあるなと思っていたら……』
ちょっと気づかれていたらしい。
狼かーちゃんはあまり魔法に詳しくないので、まさか自分が勝手に召喚獣にされているとは思っていなかったようだが。
『……まったく、面倒な子だねぇ』
呆れたように溜息を吐くだけで、怒ってはいないみたいだ。
やっぱりデレてくれたのかもしれない。
さらに俺は、仲の良かった子狼たちも一緒に召喚していた。
「「「わうわうわうわうわうっ!」」」
「ちょっ、潰れちゃうって! ていうか、また大きくなったな~っ!」
子狼たちに飛びつかれて揉みくちゃにされてしまう。
人間の俺より遥かに成長が早く、すでに全長二メートル近い大きさになっていた。
「レウスくん、その巨大な黒い狼たちは一体……?」
「な、な、な、ナイトメアガルムじゃ……」
「ナイトメアガルムだと!? 北の大魔境に棲息するっつー、めちゃくちゃヤベェ狼たちじゃねぇか!?」
「じゃあ、あの一番デカいのは……?」
ナイトメアガルム?
どうやら子狼たちはそういう名前の魔物らしい。
かーちゃんには額の辺りに三日月状の黄色い毛が生えていて、これは子狼たちにはない特徴なので、その上位種とか進化種かもしれない。
魔物の場合、必ずしも生まれた子供が親と同種になるとは限らないのだ。
『そんなことより、あのオーガどもを倒せばいいんだね』
『うん、お願い、かーちゃん。やつら魔改造されちゃって、ゴブリン並みの繁殖力があるみたいでさ』
『……なるほど。道理でこんなに不快な臭いがするわけだね』
狼かーちゃんは顔を顰めながら鼻を鳴らす。
そして次の瞬間、子狼たちを引き連れて、真っ直ぐオーガの大群へと突っ込んでいった。
かーちゃんが前脚を振るうと、それだけでオーガ数体がまとめて吹き飛び、壁に叩きつけられて絶命する。
子狼たちも負けじとオーガに噛みついては、あっさりとその身体を食い千切っていく。
「つ、強過ぎる……あれが危険度Aのナイトメアガルム……」
「あのデカいのに至っては、間違いなくそれ以上……」
「オーガが紙切れのように……まるで天災じゃねぇか……」
驚愕しているのは魔族の方も同じだった。
「信じられぬ! なぜこんな強力な魔物を、人間のような下等生物が手懐けている!?」
「手懐けてるっていうか、家族だから」
「き、貴様は本当に何者なのだ!?」
「おにーさんが言うただの下等生物の赤子だけど?」
「そんなこと信じられるかああああああああっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます