第7話 クラスメイト

 翌日

 俺は昨日と同じ教室に入った。

 そして既にまろんは来ていた。


「文人さん、おはようございます」

『おはよう。まろん』


 とりあえず挨拶をする。

 結構始まるギリギリに行ったからすぐに先生が入ってきた。


「今日は、新しいクラスメイトを紹介します。まあ、他のクラスからの移動ですね。入って来ていいよ」


 先生がそう言うと2人の男子が入ってきた。


「はい、自己紹介」


 先生に言われたからその2人は自己紹介し始めた。


柴崎しばさき飛翔あすかです。身分は、ただの平民です。よろしくお願いします」

神代かみしろ風音かざねです。身分は宮職ぐうしょく平民です。よろしくお願いします」


 どちらも平民だった。宮職平民は多分、神社を職業としてやっている平民のことを言うんだろう。


「日和まろんと申します。三級貴族ですがお気になさらず、仲良くしてください」


 まろんも自己紹介をした。なんか、俺の時よりも気軽だなぁ……やっぱ身分の差みたいなのがあるのかな……


「文人さんも自己紹介を……」


 ああ……


『俺は、水風文人。一級貴族。訳あってこのクラスにいる。俺も身分とか気にせずに仲良くしてほしい。よろしく』


 俺も自己紹介を一応した。

 2人は色々な面で引いていた。


「えっと、文人さんはとある能力のせいで喋れなくて、こういう脳に直接話しかける能力を持っているんです。そして、このことは秘密で……」


 まろんが説明してくれた。俺が説明するより分かりやすかったと思う。まだ言霊自体のことは言ってないから完全な解説ではないけど……


「よ、よろしく」


 風音がそう返してきた。

 やっぱ気にしないでとか言われても気にしちゃうのかな……


「なんて呼んだらいい?」


 今度は飛翔がそう聞いてきた。こっちは気軽に話しかけてくれそうだった。


「私はまろんでいいです。逆に何と呼んだらいいですか?」


 まろんの言葉遣いも平民相手だと少し緩くなるのか……


「普通に飛翔でいい。よろしくな、まろん」

「よろしくお願いします」


 でも完全にタメにはならないんだな。小さい頃からずっと敬語で話してたからかな……?


「僕も風音でいいです。僕もまろんって呼んでもいいかな……?」

「いいですよ」


 まろんはニコッと笑ってそう言った。可愛い。


『俺は文人でいい。こっちも呼び捨てでいい?』

「いいよ」

「もちろん」


 なんとか輪に入れた……よかった。


「自己紹介、終わったか? 終わったなら席につけ」


 全員が席につく。すると先生が話し始める。


「今日はこの学校のシステムについて説明する。まずこの学校は名前にもある通り剣士を育てる学校だ。ここに集まってくる人はみんな剣士を目指している、ということを忘れるなよ。

 それで、ここは2年制で2年は上級2年と下級2年に分かれる。上級2年になれば将来必ず何かしらの剣士になっている。このクラスは周りから訳アリクラスって呼ばれているけど、上級2年も十分狙えるから諦めんなよ」


 確かに兄ちゃんは上級2年に上がってるしな……


「えーっと、この先は、剣士として必要なことを勉強してもらう。一般教養はもうやってるだろうからな。専門知識は自由にやれ。当たり前だけどな。じゃあ、説明もこの辺にして校舎見学行くか。まあ、準備してくれ」



 そして校舎見学に行くことになった。


 教室棟は一階に1年生、二階に上級2年生、三階に下級2年生の教室がある。そして普通教室から離れたところにある訳アリ教室。その隣は保健室で、その上の二階はホールになっている。そしてその上の三階は職員室だった。階段は普通教室の真ん中に一つと保健室の隣に一つの合計二つだった。


 そして外の体育館に行った。体育館は2つあってどちらも造りは同じらしい。一階はバトルフィールドになっていて二階からそこが見えるようになっていた。


「じゃあここで模擬戦やるか」

「え?」


 俺たちは全員揃ってそう言った。もちろん俺の声は聞こえてないだろうが。


 急すぎるだろ……


 そして渋々模擬戦をすることになった。


 身分を考慮してなのか俺とまろん、風音と飛翔で模擬戦をすることになった。



 まず風音と飛翔の模擬戦が始まった。

 二人は持っていた剣を鞘から出した。


 この世界の剣はいくつかのタイプをプログラムしておくことができて、ほとんどの人が練習用の剣と真剣をプログラムしてある。そしてほとんどの人が真剣にそれをプログラムしてある。それを切り替えて戦う。そして人によっては3つ以上プログラムしている人もいる。らしい。

 ちなみにこれは全部兄ちゃんとかから聞いた話だ。


 それは二人も例外ではなく、二人とも真剣を練習用に切り替えた。


「始め!」


 先生の合図で二人が一斉に走り出す。


 お互いの剣がぶつかり合う。力は互角のようだった。そして何度も打ち合う。この学校に入学してくるくらいだから、平民とはいえ相当な剣の使い手ではあると思う。むしろ平民だからこそ、よっぽどの実力があると思われる。


 そして何回か打ち合ったところでお互い首に剣を当てた。


「そこまで!」


 その戦いは引き分けとなった。



 そして俺とまろんの番になった。

 女の子相手に本気でいくのはちょっと無いよな……


「文人、本気で行けよ? 女の子だからって手加減してると実践で痛い目見るぞ」


 そんなこと言うなよ先生……まろんも気合い入れちゃってるし……

 それなりにやるしかないか……


 俺とまろんはお互いに剣を出してかまえる。


「始め!」


 その合図でお互いに走り出す。


「加速」


 俺は周りに聞こえないように呟く。言霊を発動した。

 そして加速して俺は剣をまろんの脇腹に当てる。

 可哀想かもだけどできるだけ早く終わりたかった。


「そこまで!」


 模擬戦は一瞬で終わった。


「すご……」

「さすが一級貴族……」

「文人さん、すごいです……」


 みんな口々にそう言った。


「さすが一級貴族ってとこだな」


 先生までもがそう言った。


 そこまで言わなくてもいいのに……



 そして校舎見学が終わって教室に戻って来た。



「文人すげーな。なんであんな速度出せるの?」


 飛翔がそう聞いてきた。

 どう答えたらいいかわかんない……能力のこと話すわけにはいかないし……


『模擬戦はいっぱいやってきたから』

「やっぱそうなんだ」


 それらしいことが答えられてひとまずよかった。



 そして昼休みになった。


 昼休みになり、新しいクラスメイトと昼ご飯を食べた。そして携帯を見ると、兄ちゃんからメッセージが来ていた。


 ――今から会える?


 恋人へのメッセージかよ……


 ――別に会えるけど……


 とりあえず返信しといた。そしてすぐに返信が帰ってきた。


 ――今から第二体育館来れる?

 ――わかった


 というわけで第二体育館に行くことになった。まろんたちには『兄ちゃんに呼ばれたから行ってくる』と言っておいた。



 そして第二体育館の前に兄ちゃんがいた。


「文人、ごめん呼び出して」

『別に大丈夫だけど……何かあったの?』

「いや……ここだけの話だけど……」


 そして兄ちゃんはとあることが起こるかもしれない。とこっそり言った。

 そのとあることは、ありえなくもないような話だった。兄ちゃんは「気を付けてほしい」と言って、校舎に戻っていった。


 対抗策くらいは考えといた方がいいかもしれない。でもまろんたちには言わない方がよさそうだった。



 俺も校舎に戻った。


 教室に入るとまろんが何か言いたげにこっちを見ていた。


『どうした?』

「いや……文人さんのお兄さんって、あの水風波瑠人さんですか? イケメンって有名な……」

『確かに兄ちゃんは波瑠人だけど、そんな有名なの?』

「有名です!! 少なくとも貴族の女性の中では……」


 そんな有名だったんだ……しかもイケメンだという理由で……俺のイケメンの基準はバグってはなかったみたいでよかった。


「文人の兄ちゃんってそんな有名なんだ……」


 飛翔はそう言った。

 平民という身分上、貴族のことはよく知らないみたいだった。だからこんなに気軽に話しかけてくれるんだと思う。俺にとってはむしろその方がやりやすい。



「ここ、訳アリクラスなんだよな……みんなさ、どんな訳アリなの? こんなこと聞くのもあれなんだけど……」


 飛翔がそう言った。それは俺も気になってたことだった。


「自分から言ったらどうですか?」


 まろんがそう言う。それもそうだ。


「俺は、唯一の平民だからさ、馴染めなくて……」


 飛翔がそう言った。確かにその条件だったらそうなるのもわかる。


「そうなんですね……私は、三級貴族で唯一女の子でここに入学したんです。周りに馴染めないことは目に見えていたので、自己防衛でここを志願しました」


 まろんは昨日と同じような説明をする。


「僕は、家の神社だけは継ぎたくなかったからここに入ったけど、飛翔と同じ理由で……」


 風音も自分が抱えてることを言った。


『俺は、生まれた時に色々あって、それで、父さんが勝手にこの学級にした。でも、このクラスでよかったと思ってる』


 俺も自分がこのクラスになった理由を言う。


 みんながみんなの抱えてることを知った。だからどうってことはないけど、知っておいた方がいいことだと思う。

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