先生、私のアソコ見て@エロ目的の方ごめんなさい純愛小説です
武田優菜
第1話:奇行
〝けったいな
関西風に言うとこうなる。
事実、彼女は校内で唯一関西弁を話す生徒だし、その使い回しは本当にネイティブで、関東芸人がやる関西人の「なんでやねんッ」的な白々しくも恥ずかしいモノマネではなく、その喋りは帰国子女のペラペラ英語のような流暢な舌使いで、何の
筒井
14歳。
3年A組。
極端に色白の身長152㎝の、中原淳一の描く美少女画のような、小柄なロリ系の少女である。
病的なまでに白い肌、
大きな離れ目、
ツンと少し上向きな形のいい鼻、
温かくぶ厚いおちょぼ口。
まさに中原淳一の描く美少女で、三次元の世界に抜け出して立体化されれば、それはそのまま結子という実物になり得るだろうと思わず実感してしまうような容姿である。
性格は地味……。
性格というより存在自体が地味。
クラスではまったく目立たない。
女子のグループにはどこにも入っていないし、集団のヒエラルキーにも拘束されていない。
いわゆる一匹狼。
一人でトイレに行き、一人で昼食を取り、一人で下校する。
特定の友人とお喋りするわけでもないし、特定の生徒と仲が悪いわけでもない。
成績は中の中。
当然スポーツも上手でも下手でもなくて、すべてが平均的で常識的でとにかく平々凡々。
あえて特徴があるとすれば、よく一人マンガを読んでいるということ。
本当に好きらしく、昼休み、女子の集団とじゃれ合うこともなく一人黙々と読んでいる。
あえて挙げられる特徴とすればそれしかない。
逆にそれだけが結子に対するみんなの唯一の共通認識である。
本当に何もない。
担任でさえ油断するとクラスでその存在をうっかり忘れて「あぶないあぶない」と心の中で自戒してしまうようなそんなキャラクターである。
まるでかげろう……。
しかし、そんな筒井結子が、今、職員室で話題沸騰なのである。
ただし、あくまでも職員室限定である、ということを断っておきたい。
事の始まりは、文化祭が近付く5月の初めにあった。
なんとあの地味で
「軽音楽部を立ち上げて文化祭のステージで歌いたい」
などと申し出てきたのである。
しかし、その宣戦布告は、職員室全体に発せられたのではなく、
一国一国に侵攻すべく、一人一人の教師が次々に狙い撃ちにされていくという形で進行されたのだ。
存在すら自覚していなかった女生徒に標的にされた教師たちはみな、
いたいけな少女の切実な願いにクールさを保ちながらも、
内心、不細工にそして嬉しくも恥じらいながら面食らったものである。
腐っても〝先生〟。
一対一で正面から頼られれば悪い気はしない。
そこを結子は攻めた。
まずは担任の
いきなり奇襲攻撃を掛けた。
自分の部活動のことはまず担任に話すのが筋だと結子は考えたし、
なによりも、仲間を持たない結子にとっては、事務的にせよ唯一校内で話す師岡正人に相談するよりほか道はなかった。
そして、結子にとっては、なんとしても、この担任という初戦を制してスタートダッシュに成功しておきたかったのである。
その師岡正人も一番初めに頼られて嬉しかったのか、いきなりの結子の奇襲攻撃に好感触を見せた。
「軽音楽部!?。何やるの?」
「ピアノッ。弾き語り。私の歌。あかん?」
「自分の歌!。へえッ、いいねえッ」
と少しヘラヘラした師岡正人のリアクションに結子は一抹の不安をチラリと感じ取ったのだが、あまりの師岡正人の反応の良さに我を忘れて浮き足立って積極的に攻め続けた。
「私、自分を表現したいんですッ!。あきませんか?」
「いやッ、それはいいことだよ。でも、意外だね?」
「私、今まで何にも出来ひんかったから、何か残したいんです」
「ほうッ!」
「協力してくれますか?」
「協力って顧問になるの?」
「何でもいいんです。文化祭のステージに立たせて下さいッ」
「ふうん」
「私、頼めるの先生しかおらん」
「そっか」
「あかん?」
「いや、それならいいよッ」
「ホンマに!?」
「何か自発的に挑戦することはいいことだよ。そういうのを後押しするのが僕らの仕事だからねッ」
師岡正人はニカッと八重歯を光らせ笑う。
結子も年頃だが、長い人生80年で、24歳の師岡正人だって立派な年頃の新卒男子である。きっと結子を妹のように思えたのかもしれない。
「おおきに!」
と結子がペコリペコリと深々頭を下げると、師岡正人は「やめろよ」と照れくさそうに余裕の笑みを見せた。
この悠々たる態度は結子を安心させ、さきほどの師岡正人に対する一抹の不安をすっかり一気に全幅の信頼へと昇華させてしまった。
でもまだ安心はできない。
結子の戦いは続く。
続けて師岡正人は言う。
「でも、部の新設は、安藤先生の許可をもらわなきゃダメだよ?」
安藤浩一46歳。
風紀委員の体育科の教師で、校内の部活動を統括する日体大
でも、師岡正人の快諾を得て勢いづいた結子には
〝どうにか落としてやる〟
という暴走に近い安易な自信があった。
なぜなら、
そして、次に落とす相手においては、
〝生徒の部活動に対する熱血で
実際、安藤浩一は
「嬉しいぞッ!。筒井!。よく決めたな!」
安藤浩一は小さな結子の大きな熱意にメロメロになっていた。
地味で虫けらのような存在の女生徒が、初めて声を張り、拳を上げて自分自身を
それは安藤浩一にとっては性的な興奮であったのかもしれない。
安藤浩一はまくし立てる。
「お前みたいな生徒を待っていたんだよ!」
「ありがとうございますッ。嬉しいです」
「最近自己主張しない生徒が増えてなあ……。張り合いがなかったんだよ」
「私、頑張りますッ」
結子は〝こんなに上手くいっていいのかよッ!?〟と思わず内心狂喜する。
1番センター前ヒット、
2番送りバントでランナー二塁、
そこで3番クリーンヒットでワンアウト一・三塁みたいな理想的な王道パターンである。
そして4番の登場。
この結子のビッグチャンスは安藤浩一にとっても理想的な展開だったようで、更に結子の話を独自に
「どうせならダンスとか器械体操にしないか?」
「私、スポーツあかん。音楽が好きやねん!」
「そうか。まあいいやッ。で、誰の曲、歌うんだ?」
「私の曲」
「お前、自分で作ったのか?」
「うん、作詞作曲やねんッ」
「素晴らしいよ!」
「ホンマに!?」
「やろう!。絶対成功させよう!」
「おおきに!!」
「でも、お前、確か、バスケ部じゃなかったっけ?」
4番バッターまさかの三振である。
そう、結子はバスケ部の幽霊部員だったのだ。
新しい部に入るのであれば、正式にバスケ部を退部しなければならない。
そこは部活統括の安藤浩一にしてみれば一歩も譲れないところ。当然である。
結子は絶好のチャンスを逃してしまった。
しかし、まだまだクリーンアップ。
ここは何としてでも5番センター前ヒットで1点をもぎ取りたい。
結子はドキドキしながら恐る恐るバスケ部顧問の理科教師で、生物学専攻の
「ぜっっっっっったいダメだ!!」
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