妹side
第23話 ふたりのクリスマス:妹
今日はクリスマス。恋人たちが集う、駅前のショッピング街は、キラキラと輝いて、恋人たちをより、素敵な色に染めていく。
寒い空気を守るように、もこもこのマフラーを巻き付け、ふかふかのニットと花柄のタイトスカートを着て、私は恋人の街を今歩いているわけなのだが。
隣で一緒に歩いているのは……兄である。
「はぁ、なんであんたと今日を過ごすのよ」
「お礼だよお礼、俺が麗を両親の呪縛から守ったお礼」
「なによそれ」
どうしてこんなことになってしまったのか……。
私はそう思いながら、隣の兄と今日だけは宝石の街を練り歩く。
ちなみに、なんでこんなことになってしまっているのかと言うと、兄が両親に怒られている私を、何とかしようと叫んで助けてくれたことがきっかけだ。
両親は兄のおかげで私の話に耳を傾け、応援すると言ってくれた。
正直それには、感謝している。
そのおかげで、私は今も配信ライフを楽しめているのだから。
しかし。
「なんで、クリスマススにあんたなの」
「はい、なんか言いましたか?」
「いや、今日は恋人とさ過ごしたいじゃん、本当は」
「え?こ、恋人いんの……?え、うそ……」
「いない、やめてそういうの、いたらの話!」
「え、え、好きな人は?」
「ん……えっとぉ……」
「え、なんか照れてる?まさか?え?」
「やめて!気持ち悪い!きもい!いないってば!」
このお礼はクリスマス、ふたりでお出かけにしてくれ!反論は許さん!と兄に強引に連れ出され、私はここにいる。
ちなみに、最近の兄はありえないほど気持ち悪い。何か月か前に、お菓子を渡してからなのか、調子に乗ってしまったのか。よくわからないが、とにかく毎日気持ち悪い。
うららああーーと何故か家では毎日追いかけてくる。
そんな気持ち悪いやつが今隣にいるのだ。にやにやと笑うやつが。
とんでもないクリスマスだ……。
そう思いながら、私はしょがないと行きたいお店をとりあえず、練り歩く。兄は特に、見たい店なんてないみたいなので、ただ私についてきて、最近の若向けのグッズたちに面白いほど興奮し、目を輝かせていたので言ってやった。
「三十近いと、そんなに全部珍しいの?老けるってこわっ」
「老けてねーよ!あとまだ二十七!三十はやめろ!」
すごい勢いで突っ込んでくる兄だったが、十も離れていると、そんなに見える世界は違うのだろうかと首をかしげる私がいた。
そして、夕方が過ぎ、イルミネーションがチカチカと、街を新たな宝石の世界で彩る。買った服やアクセを兄に持たせたまま、今日はもういいでしょと私が駅に向かって歩き出すと、兄は立ち止まるので、振り返ってなによと顔を凝視した。すると、兄は大きなリュックから何かをごそごそと取り出した。
「なに、そのデカブツ」
こんな大きなぴかぴかのクリスマスツリーの前で、なにかまだあるのかとはぁとため息を私は漏らす。恋人しかいない今の街に、もう用はない。
しかし、兄は私に、謎の大きな箱を渡してきて、お願いをする。
「デカブツ何て言うんじゃない。これは麗に誕生日渡すことの出来なかったプレゼント、これは今日最後のお願いだ!それを開けてくれ!」
「え?」
ブランド名が、書かれた箱を開けると、彼氏にも貰ったことなんかない額のバッグがそこにはあった。
「お兄ちゃん……」
「って、もう、な、なにしてんのよ!あんたの、ば、馬鹿!」
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