第3話 ねねとの出会い:妹
高校二年生になった。季節はすっかり春になり、暖かく軟らかい風が私を包む。学校帰り、散っていく桜を眺めながら今日も家へ到着する。
すると、会社帰りだろうかいつもより少し早い帰宅だったようで、玄関先の廊下で兄と鉢合わせた。
「狂暴女、許さん。可愛くない」
「はぁ?この変態」
兄はどうやら、あの事を根に持っているようだ。ノックせずに入ってきた方が悪いというのに。思い出すだけで気持ち悪いし、私は忘れたい。掘り返さないでほしいと思っている。松葉杖はもう取れていつも通りの生活になっていても未だに嫌な言葉を言ってくるのだ。そんなやつ、気にしたって仕方が無いので私は顔で威嚇して、そのまま通り過ぎた。
「可愛くなくてごめんなさいねぇ」
そして、部屋に着いてから私はもやもやと言葉を吐いていた。
「可愛くなりたいけど」
心も顔も美少女の妹だったら、あいつは可愛がったのだろうか。
「いや、それはないな」
「でも、顔くらい美少女になりたい」
そんなことを考え、呟きながら今日も少しの時間だけでもとテレビを点けた。宿題は大量にあり余裕はないのだが、テレビくらい帰ってから見たいのだ。少しの時間だけでも。
「はぁ、勉強ちゃんとして私いい子だよね」
「ん?新時代アイドル特集?」
点けたテレビを見ると、そこにはキラキラと輝くアイドルが映っていた。夕方のニュースでのちょっとした流行りものの特集なのだが、そこに映っていたのは私と同い年の女性だった。
「こ、これで同い年!?めちゃくちゃ大人じゃん」
そこには、同い年とは思えないほどの輝く容姿だが、テロップにはちゃんと、十七歳と表示がある。正直、信じられていない。ロングでブラウンのさらさらつやつやな髪の毛に、長く美しいまつ毛。ぱっちりとした、男を一瞬で落とせてしまいそうな瞳。プルンと揺れる唇は、正直エロい。すべての美貌に吸い込まれそうだ。
「この子は、アイドルトップガールというアプリで、今人気の注目ガール!では一言聞いてみましょう!」
「ごきげんよう!アイガールのねね!今年もトップ目指して頑張るんだから!皆、この放送で私の虜よおおおおお!」
「元気な、ねねちゃん、ありがとうございます……。アプリで簡単にアイドルになりファンと会話できるのが特長だそうで!是非皆さんもアプリを始めてみてはどうでしょうか?」
アナウンサーはそういうと、続いて明日のお天気はーと話題を変えた。きっと、まだ出だしたばかりのアプリの宣伝か何かできたのであろう。声の大きく元気なねねちゃんは一瞬でいなくなった。
「あれで、同い年……」
しかし、あまりにもキラキラした容姿に衝撃を受けた私はすぐに、先ほどのアプリや映っていた子をネットで調べる。すると、沢山の記事が出てきた。
「注目アイガールねね、高校二年生……アイドルトップガール、登録者数急上昇中……略してアイトプ……ん?」
どうやら、最近アイトプという配信アプリでアイドル達、通称アイガールという子たちが大活躍しており、その中でも一番すごい存在がねねちゃんらしい。
皆きらきらしており、同い年くらいとは思えない子たちの写真が沢山ネットに出ていた。
そのまま気になる情報を探しながら、様々な記事をポチポチと漁っていると、ある記事に目が留まる。
「え?噓でしょ?」
その記事には、先ほどテレビに映っていた、ねねちゃんの昔の写真が晒されていた。
「え、元々はこんな顔なのに?ああなれるの?え?てか、晒されるのこっわっ」
私は驚きを隠せなかった。何故ならあのねねちゃんの昔は、私よりもひどい容姿だったからだ。そんなことは言ってはいけない、でも、本当にキラキラした容姿とは考えられない姿なのだ。いや、これはデマ?しかしもし、これがさっきのねねちゃんだとしたら……。
「変われる、私もいける、そういうことだ」
人気者になると、昔の顔を晒されてしまうんだなと一瞬怖くなったが、そんなこと今はどうでもよい。私は今、感動しているのである、人は変われるのだとわかったからだ。
いや、でもこれは本当の記事かまだわからない。私はツリッツアーなどで記事が出ていないか、ハッシュタグをつけて検索をした。すると……。
「東浦桃の葉女子高等学校……?」
ねねちゃんが通っていると思われる高校が特定されているツイートを発見した。そして、私は決めたのだ。
「会って確かめるしかない!」
もう、今日は宿題の事なんて忘れてねねちゃんのことばかり考えていた。
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