第1話 窮屈な日々:妹

「はぁ、今日も授業つまらなかったなぁ、勉強の何が楽しいのよ」


 そう、自分の部屋のベッドで仰向けになり呟く私は高井麗たかいうらら高校一年生。つまらないとぼやくのは何回目だろうかと言えるくらい、日々口から漏れている。もうすぐ高校生の一年目が終わろうとしているのだが、勉強もできず帰宅部の私はJKらしい輝きは特にない。きゃきゃっと笑い合える友達はおらず、クラスは皆勉強ばかりで息苦しい。そして、女子高生らしく髪の毛を染めたことがあるわけでもないし、メイクで変身したこともない。


「はぁ、自分のこの顔……もっとこう……キラキラにしたいよ……」


 私は、ほっぺたをグイっと両手でつまんで伸ばし自分の地味な顔を変形させる。


「目はぱっちりふさふさでお口はぷるぷるで、キラキラの髪の色……やめよやめよ、憧れたって学校も家族も厳しいし」


 私は無駄なことを考えるだけ無駄な時間になると考えるのをやめた。お腹もすいてきたので、自分の部屋がある二階からタタタと降りて、夕食の準備が出来たリビングの扉を開けた。そこには、やっと来たのかと家族が座りイライラの顔で待っていた。


「ほんとにお前、俺の妹か?おっそいなぁ。このルーズさは誰に似たんだか」


 お腹すいてんだから早く来いよと、自分の実の兄が私を言葉で叩く。


 というかさ、いやまずさ、こいつは社会人になってまで家族全員が揃って食べなければいけないルールを良く守るね?私には絶対無理だけれど、待たれてしまうならどうしようもないけど!こちらで、一緒に食べなくて済む策を練ってやろうか。


「悪かったねえ!」


 私は兄に怒りを込めながら一言放ち、サササとご飯にありつく。


「ちょっと、いただきますは?」


 お母さんがいつものセリフで怒って来ても、お構いないしに超特急でお皿とお茶碗たちを傾け口に流し込む。私はこの空間から早く逃げたいのだ。


 私は家族の視線と言葉なんか無視して食べ終わると、食卓を出て自分の部屋へと駆け込んだ。


「あぁ、窮屈窮屈。やっぱり自分の部屋が一番」


 家族の時間が窮屈すぎて、嫌だなんて考えながら部屋に入りテレビを点けた。たまたま点けた番組は最近流行りのモデルの特集だった。画面に映るきらきらと輝く自分とは程遠い存在に、羨ましいと言葉を漏らす。


「こういうモデルたちってどんな高校生活を送っていたんだろう、いいなぁ」


 そんなこといくら考えて羨ましがったって何も変わりはしないのに。私ははぁとため息をつきながら、チャンネルをポチっと変更した。しかし、そんなことをしている時間は実はないのだ。


「あぁ、学校の宿題やんなきゃ、テレビよりもそれが先……か」


 私の学校は有名な私立の進学校だ。勉強の量はそのへんの公立高校と比にならないくらい多いし、校則も厳しい。正直、入りたくもなかったし、もう嫌になってきている。レベルの高い大学に行けと両親は訴えてくるし、私はげんなりしているのだ。


 まぁそれでも、入学したのだからできることはやるのだけど。


 やるしかないわけで。


 私は今日もやらなければいけない宿題をして、明日の為に早く寝た。

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