『死にたがり』と『生きたがり』

葵 悠静

『死にたがり』の話


 あー死にたい。



 そう思って何年の時を無駄に過ごしてきたのだろうか。


 そんなことを考えても、いくらそう願ったとしても、自ら死ぬ勇気なんて持っていないから、今日も死にたいと願いながら、生きるために食事をしている。


 無気力に仕事をして、味のしないものを食べて、ただそれだけの毎日を繰り返している。


 昔から僕がこの世に生きている意味を考えてはみては、意味なんてないと気づかされ、死にたいと願ってきた。


 たった数年間だけ、この人のために生きようと、この人と一緒なら生きたい。

そう思える人と一緒に過ごしたこともあった。


 だけどそんな君も、僕の手に届かない遠い場所へと逝ってしまった。


 それからはまた矛盾した生活の再開だ。

 死にたいと思いながら、生きるための行動をして日々を浪費する。


 誰かこの世に生きたくても生きられない、そんな人がいるのであれば喜んで僕の命をあげたい。


 すべてをあげる代わりに僕を殺してほしい。


 僕の体余すことなくすべてそんな生きたくても生きられない人に、行き届けばこんな無意味な人生でも、無駄に浪費した過去の日々でさえ、報われる日が来るのだろう。


「こんな意気地ない僕でごめんね。君の所にはまだ到底たどり着けそうにないや」


 一人でにこぼれたそんな言葉は、夜の闇の中に消えていく。


 いつまで僕はこの無意味な日々を過ごすのだろうか。


 生きていることに希望はない。だれか早く僕を死なせてくれないだろうか。


 そんなことを考えながら、久しぶりに、本当に久しぶりに、空を見上げる。


 ……あー、まだ夜空がきれいだと、星が輝いていることを美しいと思える、そんな感性が僕に残されていたんだ。



 こんな中途半端な感情なんて失ってしまった方が楽なのに。



 どのくらいその場で足を止めて、空を眺めていたのだろうか。



 ふいに眼前が真っ白な光で包まれる。

 当てられている光の方に視線を向けると、大きな物体が目の前に迫ってきていた。


 あー、もし神様がいるのであれば僕は感謝するだろう。


 あー、本当に。本当に……。


 強い衝撃とともに僕の体と意識は吹き飛んだ。






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