企み②

「あれ?・・・・爽太くん、スマホ、鳴ってない?」

「えっ?」


言われてみれば、遠くの方から音が聞こえる。

あれ?

俺のスマホ、どこで鳴ってるんだ?


「そう言えばさっき、リビングで見たような?」

「え?リビング?」


俺、今日リビングにスマホなんて持ってったっけな。

この暑さでボケたんだろうか、俺。


そんなことを思いながら急いでリビングに行くと、小夏の言うとおり、リビングのテーブルの上で、俺のスマホが鳴り響いていた。

発信者は、彩。


「もしも」

”遅いっ。なにしてたんだよ、電話くらい早く出ろ。”

通話が始まるなり、ご機嫌が直角かと思うくらいに斜めな、彩の声が耳に突き刺さる。

「悪い、ちょっとスマホから離れてて・・・・」

”で?なんだ、用って。”

「・・・・え?」


えーと?

今俺に電話をかけてきたのは、彩だよな?

で、普通、用があるのは、電話をかけてきた方、だよな?

うん、間違ってない。

俺はまだ、そこまで暑さにはやられてない。


スマホ越しにでも感じる彩のイライラ感にビビりながらも、俺は頭をフル回転させて、現状を整理する。


「俺、別に用無いけど・・・・」

”え?”

スマホ越しの、彩の怪訝そうな声。

”さっき小夏から連絡あったんだけど。爽太が電話欲しいって言ってるって。”


えーと?

なんだか再び頭の整理が必要になってきたぞ?

俺、なんか彩に用あったっけ?

で、小夏にそんなこと、お願いしたっけ?

今日は俺、ずっと部屋でアップロード作業してたけど・・・・夢中になりすぎて、小夏におかしなことでも言ってしまったんだろうか?


”そういや今日、小夏と一緒に小説アップするんだろ?あたしも登場するってやつ。”

「あ、ああ。」


彩と俺が幼馴染みなのは、本当の話だ。

そして彩も、俺が昔から、色々話を作ってはサイトにあげているのを知っていて、気が向いたら読んでくれている。

批評は結構辛口だ。

でもまぁ、有難い。

ここまでズケズケ批評してくれる奴なんて、滅多にいないし。

・・・・凹むけどな、もちろん。


”で。小夏はそこにいるのか?”

「いや、今俺の部屋。」

”・・・・お前、どこにいるんだ?”

「あー、俺はリビング。なんか、知らないうちにスマホがリビングにあってさぁ。だからさっき、すぐ出られなかったんだよ。」

”なるほど。”


そう小さく呟くと、彩はスマホ越しでもわかるくらいに、笑いを爆発させた。


「なんだよ、突然。」

”爽太お前・・・・やられたな。”

「はぁ?なにが?」


俺には、彩が何でこんなにも愉快そうに笑っているのか、さっぱりわからない。

わからないままの俺に、彩はまだ笑いが収まらないまま、言った。


”賭けてもいい。小夏はもう部屋にはいないぞ。”

「はぁ?」

”他にも、無くなってるのがあるかもな。”

はははははっ!

と笑い声を残しながら、彩は電話を切った。

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