企み①

「よし、っと。」

データを全てアップロードし、下書き保存を終えた俺は、小夏に声をかけた。

「そろそろ投稿するぞ。」

「えー、ちょっと待って。もう一回だけ、読んでから!」

「お前なぁ・・・・」

投稿後でもいくらでも読めるだろうに。

小夏はまたも、スマホに送信したデータを読み返し始めたらしい。

呆れる俺に構うことなく、小夏は

「ちょっと、麦茶入れてくる。爽太くんも飲むでしょ?」

と言って、リビングへと行ってしまった。


この話は、俺の・・・・いや、俺と小夏との合作ではあるが・・・・久しぶりの作品だ。

俺は、小夏と付き合い始めた前後から、どうにも話を作れなくなり、俗に言う『スランプ』とやらに陥っていたらしい。

小夏は、ココナッツとして、俺(バンブー・ブック)の新作が読めないことが不満でもあり、気がかりでもあったらしく。

ある日突然


「爽太くんて、バンブー・ブックだよね?わたし実はね、ココナッツなんだ。何で最近お話アップしてくれないの?」


と言ってきた。

正直、びびった。直球すぎて。

小夏が、ココナッツだったことにも。

でも、話を作らないんじゃなくて、作れないんだと打ち明けた俺に、小夏が言ったんだ。


「じゃあ、わたし達のお話、書いてみたら?」


って。

で。

たまに小夏にネタを提供してもらいつつ、書きあがったのが、この話。

お陰で、次の話の構想も浮かんできていて、どうやら『スランプ』は脱出できたようだし。

だからこそ。

この話は、小夏との合作として、ペンネームも変えて、一緒に投稿しようと思ってるのに。


「はい、爽太くん。」


小夏はのんびりと麦茶なんて飲みながら、まだ読んでるし。


仕方なく、小夏が入れてきてくれた麦茶を飲みながら、PCの前でボーッとしていると、ふと小夏が顔を上げた。

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