嫉妬 Challenge 2-4

「これと、これと、あとこれと・・・・」

「まだあるの?!」

「うん。あと、これと・・・・これっ!」

目の前に積まれた土産の山に、小夏は目を丸くして驚いている。

真っ直ぐ自宅に帰った彩と途中で別れ、俺はその足で小夏の家に向かったのだ。

「どうしたの?旅行でも行ってたの?」

土産のひとつひとつを手に取りながら、小夏が尋ねる。

そりゃ、まぁ、そうなるよな。

誰がどう見たって、これは旅行の土産だ。

だが。

土産も旅行も、ライブのついでだ。

目的はライブであって、旅行ではない。

端から見れば、女連れの旅行になるのかもしれないが、連れは彩だ。

何の間違いも起こり得ない。

実際に、起きてもいない。

「小夏。」

「ん~?」

間延びした応答をする小夏の前に、俺は何故か正座して姿勢を正す。

何一つ悪いことはしていないのに、微かな罪悪感が、そうさせるのか。

強いていうなら、事前ではなく、事後報告になった、ということくらいだろうか、この罪悪感の源は。

よく分からないながらも、怪訝そうな小夏を前に、俺は昨日から今日にかけての説明を始めた。

「実は俺、昨日彩と一緒に・・・・」


最初こそニコニコしながら話を聞いてくれていた小夏だったが、次第に眉間に皺がよりはじめ、話し終わる頃には完全に、怒りを顕にしていた。

完全なる、お怒りモードだ。


やっぱ、いくら相手が彩でも、一泊二日はまずかっただろうか。

一応、性別は女だし。

でも、本当に何もないから、こうして話せているんだ。

小夏ならきっと分かってくれる!

そう思っていた俺に、怒りを抑えた様な、小夏の低い声が聞こえた。


「爽太くん、酷い・・・・」


心なしか、目が充血しているようにも見える。

ズキン、と胸が痛んだ。

俺はもしかしたら、ひどく小夏を傷つけてしまったのかもしれない。


だからか?

だからなのか?

彩が事前に俺に確認を取ったのは!

あいつはこうなることを、予測していたってのか?!


『だからお前はダメなんだ』


彩の言葉が頭に響く。

まさか。

もしかして俺は今ここで、小夏に振られてしまうのだろうか。

嘘だろ、そんなのイヤだ!

俺は、小夏と別れたくなんかないっ!

もう絶対、たとえ彩でも、たとえ目的がライブだったとしても、他の女と旅行なんて行かないからっ!

だから。


別れるなんて、言わないでくれ!


と口にするよりも早く、小夏の怒りが爆発した。

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