嫉妬 Challenge 2-3

「・・・・マジ?」

「しょうがないだろ、できるだけ節約したかったからな。」

翌日に小夏とのデートの約束を取り付け、浮き足だって辿り着いた、ライブの地。

彩が予約していたのは、ツインのひと部屋のみだった。

「荷物置いたら、さっさと行くぞ。ちょっとお腹に入れたいし、早めに会場入りしたいしな。」

何一つ気にすることなく、彩はさっさと部屋に入り、ベッドの上にバッグを放り投げる。


確かに。

確かに、な。

彩と俺の間に間違いが起こることなんて、1,000%無いぞ?

無いけどっ!


俺たち一応、

年頃の オンナノコ

年頃の オトコノコ

だぞ?!

さすがに部屋は別にした方が・・・・


部屋の入口でモタモタしている俺に、彩の苛ついた声が飛ぶ。

「なにやってんだよ、爽太!さっさと行くって言ってるだろっ!」

「あ、うん。」

彩には微塵の迷いも感じられない。

気にしている俺が、おかしいのだろうか・・・・

少しばかり解せない気持ちを抱きながらも、俺は急いで支度を整えた。

「あ、これなんか美味しそうだなぁ。」

俺の支度を待ちながら、彩はスマホでご当地名物を調べていたらしい。

「じゃ、行くぞ!」

「おう!」

彩が気にしないなら、俺も気にするべきじゃない。

俺だけ気にしてたら、かえっておかしなことになりそうだ。

そう自分に言い聞かせ、俺は彩と共に部屋を出た。



「あー・・・・サイコーだった!」

「うん!想像以上だった、やっぱライブはいいな。」

ライブは、初っぱなからアンコールまで、最高潮のボルテージだった。

二十歳を超えてりゃ、二人でそのまま飲みにでも繰り出したい気分だが、そこは高校生の俺達二人。

地元の旨いものをたらふく食って、おとなしくホテルに戻ってきたのだった。

歌って叫んで飛び跳ねて。

俺達は汗だくでクタクタだった。

「風呂、先がいい?後がいい?」

「え?」

何気ない口調で、彩が言う。

「あ、ああ・・・・別に俺はどっちでも・・・・」

彩相手に、何をドギマギしているのだか。

突然の『風呂』のワードに思わず口ごもってしまった俺を見て、彩はニヤリと笑った。

「なんだ?おかしな想像でもしたか?」

「んな訳無いだろっ!」

「失敬だな。あたしだって、一応女だぞ?」

ニヤニヤ笑ったまま、彩がジリジリと距離を詰めてくる。

「いちお、胸も平均的な大きさはあるんだけどな?確かめてみるか?」

完全に、彩は俺をからかっている。

だが確かに、言われてみれば彩の胸はソコソコでかい。

今まで気にもならなかったのは、着崩している制服のせいか。

いや。

おそらくは、それ以前の問題だ。

俺は彩を女として見たことなど、一度も無い。

「お前、彼氏と上手くいってないのか?」

彩の動きが、ピタリと止まった。

もしかして、図星?

まぁ、暴力彼氏と上手くいっていないのであれば、その方が俺的には安心なんだけど。彩に暴力の矛先が向かいさえしなければ。

「悪いけど、俺は代わりはできないぞ?」

「当たり前だ。」

ふんっ、と不機嫌そうに吐き捨て、彩はさっさとバスルームに入っていった。

と、すぐにドアから顔だけを覗かせる。

「見るなよ?」

「誰が。」

あははははっ、という笑い声とともに、ドアが閉まった。

彩は女の割に、風呂の時間は短い方だと思う。

キャンプでも、確かいつも俺と変わらない位の早さだった。

少し休んでいればすぐ、出てくるだろう。

でも。


しまった。

ここはバストイレ一体型のユニットバスだ。

先にトイレ、行っとけば良かった・・・・なんか、行けないとなると行きたいような気が。

あや~、なるはやで頼むぞ~っ!

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