独占したい。
平 遊
はじめに
「ていうか、
椎茸檸檬βこと 椎野小夏 は不満げな顔で、椎茸檸檬αこと、俺を見る。
「当たり前だろ。」
「なんで?いらなくない?いきなり〈俺が悪いのか?〉から始まった方が、インパクトあると思うけど。」
「そーゆー問題じゃない。モノには順序ってもんがあるだろ。」
あーうるさい。
口には出さないが、俺は少々辟易していた。
これを書いたのは、俺だぞ?
まぁ、多分に小夏のお陰でもあるけど。
だから、いつものペンネームじゃなくて、二人のペンネーム『椎茸 檸檬』にしたんじゃないか。
なぜ『椎茸 檸檬』かって?
それは。
彼女、椎野 小夏 と、俺、竹本 爽太 の名前のミックス。
椎と竹で、椎茸。
夏に爽とくれば、檸檬だろ。
で、椎茸 檸檬。
お前はこれ以上俺に、何を望むんだ?ココナッツさんよ。
あ。
ちなみに、『ココナッツ』は小夏のハンドルネームだ。
小夏は読み専なので、ペンネームは持っていない。
「でもさ。」
なんだよ、まだ何かあるのか?
もう何度も読んでいるこの話をまた読み返しながら、小夏は言った。
「ずるいよねー、かっこよさ8割増しじゃない?この『俺』。」
「うるさい。」
しまった、とうとう心の声が漏れ出てしまった。
小夏は、機嫌を損ねると後がやっかいなのだ。
恐る恐る小夏を見ると。
「ふ~ん・・・・自覚は、あるんだ?」
ニヤニヤして俺を見ていた。
確かに、自覚はあるさ。
でもこんなの、執筆者の特権だろ?
つーか、8割増しって!
いくらなんでも言い過ぎだろ、それは!
「お前さぁ・・・・俺のことなんだと思ってるんだ?」
溜め息混じりに聞いてみる。
すると小夏は。
「大ファンの、バンブー・ブック!」
とびっきりの、笑顔。
ちなみに、『バンブー・ブック』とは、俺のペンネームだ。
安易だな、という意見は、聞かなかったことにする。
おかげで、小夏には最初からモロバレで、出会ってすぐに気づいたらしい。
俺がココナッツ=小夏に気づいたのは、俺たちが付き合い始めてしばらく経ってからだ。
にしても。
俺をキュン死にさせる気か、こいつ。
たしかに、ココナッツはいつも、俺の話を心待ちにしてくれているファンではあったが。
面と向かって言われたのは、初めてだ。
だが、さらに小夏は続けた。
「大大大好きな、私の彼氏!」
・・・・参りました。
降参です。
俺も小夏にメロメロです、ハイ。
「それからぁ・・・・」
「わかった!うん、小夏の気持ちはよーくわかった!」
これ以上何か言われたら、俺はきっと溶けて無くなってしまう。
え~、まだまだあるのにぃ。
と、不満そうな小夏はおいといて。
次の話からが、本編です。
「えーっ!もう始まってたんじゃなかったのっ?!」
「んな訳無いだろ、まったく・・・・」
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