第115話 キミの探し者


「あの……ご相談があるのですが、先ずは南門に残る魔物を討伐した方が良いのではないでしょうか?」


 不安気な口調で話すシリウス。確かに、幾ら殆どの魔物が東へ流れたとはいえ、1匹でも門内に侵入されれば大変な事態へと発展してしまうだろう……だが、それは既に対策済みであり、もうじき解決することを俺は知っている。何故なら……


「あぁ、そのことなら心配要りません。優秀な子達が頑張ってくれてますので……あっ、どうやら終わったようですね。魔物の魔力反応がたった今なくなりました」


 そう……優秀な子達とはムツコとギンのことで、1人と1匹が南門に集まる魔物達を一掃し、その動きを常に魔力探知で確認していたからだ。

 これで憂いなく駆けつけられるだろ? と言わんばかりに俺が微笑むと、シリウスは呆気に取られた表情を見せた後に「ははっ、敵いませんな」と笑い返し、俺達は引き続き東へ向かうことに。



 ……それから少し進むと突然ミカゲが口を開き、その内容は私兵団の副団長に関することらしく、返答している時のシリウスは何か困った様子であった。

 心配になり聞いてみたところ、その副団長は大の女好きなうえに訓練サボりの常習犯で、更には教会批判を平気で口にするという。だがそれでも副団長でいられるのは、団長と互角以上の実力を持ちつつも決して威張らず、住民に対しても分け隔てなく接する優しい心を持っているから。おまけに顔は整っており、年齢も22歳と最も脂の乗っている時期なので今後の期待も込めて、とのこと。

 しかし、そんな期待値の高い副団長を嫌悪するミカゲ。2人の間に何かあったのだろうと思いながら理由を聞くが、ミカゲは何故か教えてくれず。その歯切れの悪さにシリウスも気になったようで、俺とシリウスは示し合わせてミカゲの両隣に移動し、口を割るよう挟み込んで圧を掛ける。すると観念したのか、嫌々ながらもミカゲは理由を口にした……が、それは俺の眉を顰ませるものだった。


「だってよ……あの野郎、セリーヌにコナ掛けてんだぜ? ムカつくったらありゃしねぇ!」


 その発言にピクリと眉を動かす俺だが、一方でシリウスは「あぁ! そのことですか!」と喜びの表情を見せる。それを見て複雑な心境になるも、2人から詳しい話を聞くことにした。それは、詳細を聞けばセリーヌにフラれた理由が分かるのでは? と考えてしまったからかもしれない……ーー




「ーーそうか、1ヶ月も前からそんな関係に……全く気づかなかったよ……」


 2人から詳細を聞き肩を落とす俺。だが同時に何故ミカゲが教えなかったのかを理解した。それは、約1ヶ月前にミカゲと副団長である『ロラン』はある理由で決闘し、接戦の末ロランが勝利した……が、問題はその勝負を仕組んだのがセリーヌであり、それ以降ロランとセリーヌの仲が急激に深まったという事実。それも2人で食事や買い物など、謂わゆるデートするほどの仲にまで発展しているらしく、ミカゲはその事実を俺が知ることで傷心するかもしれないと気に掛けてくれたわけだ。無論、その事実をシリウスも知っているようで、2人が結ばれるよう陰ながら応援しているのだそう。

 その後もシリウスが嬉しそうに語っている傍ら、俺は作り笑いを浮かべて小さく呟く「見つかったんだね……キミの探し者……」と……

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