第14話 続・対ヒュドラ戦
「くそっ、ダメだ! 全く近づけない!」
そのあと何度も接近を試みたが、ヒュドラの猛攻が激し過ぎるために全く近づけずにいる。
九ツ首や尻尾を無軌道に振り回し暴れ続けるその姿は、最早災害と言っても過言ではないだろう。
「確かに災害そのままだけど、何かしらの打開策が絶対にあるハズなんだ……」
一定の距離を保ちながら新たな策を考え出す。
実は最初に策を練った際、新たな策となり得る取っ掛かりは既に掴んでいたのだ。
その取っ掛かりとは、拘束が可能となる魔法のことである。
問題はどのようにしてヒュドラを拘束するかであるが……
「……よしっ、こうなったら……!」
新たな策を追加して再び接近を試みることに。
早速、毒沼に左手を突き魔法を唱えた。
「
左手の掌からヒュドラの足元まで影が広がり、その影から無数の鋭利な十字架が一気に飛び出してヒュドラの巨大な体躯を串刺しにする。
「ジュロロロォッ!?」
ヒュドラは黒葬に貫かれ悶え苦しむ。
しかも、十字になっているので抜こうにも抜くことができずにいるのだ。
「きたっ! チャンスだ!」
絶好の好機と見て透かさずヒュドラへの接近を試みた。
なるべくヒュドラの視界に入らぬよう体勢を低くしながら颯爽と駆けて行く。
「ふぅ、どうにかなったな……あとは……」
接近に成功し一安心するも、勢いは止めずにヒュドラの右脚に触れる。
その直後、閃いた策の肝となる魔法を唱えた。
「
ヒュドラの右脚から徐々に凍結化が拡大していき、次第に全身氷漬けとなり動かなくなった。
その間もヒュドラは暴れて氷結化を阻止しようとしていたが、黒葬と獄氷のコンボには為す術が無かったようだ。
そして、完全に凍りついた姿を例えるならば「ヒュドラの氷像」というところだろう。
「勝った……のか……? そうか……勝ったんだな、俺……」
大苦戦を強いられたがどうにか勝利を手にすることができた。
そして氷漬けとなったヒュドラはそのままの状態で黒箱へ収納。
「さて、行くか……」
ヒュドラに勝利はしたが、依頼を達成したわけではない。
決して気を緩めることなく、再び浄化草の元へ向かい出す。
「あと少しだ……うおっ!?」
浄化草の生えている地点まであと少しのところで毒沼に右足が嵌ってしまった。
どうやら今まで歩いてきた所は運良く毒沼が浅かっただけのようである。
(もしヒュドラ戦でこの状態だったら勝てなかったかもな……)
そんなことを思っていると、背後から次々と木々が薙ぎ倒される音が聞こえてくる。
その音は最近聞いたことがあり、そして現状最も聞きたくない音でもあった。
俺は一縷の望みを懸け、あの魔物ではないことを願う。
しかし、残念ながらその願い虚しく、あの魔物が姿を現す。
「う、嘘だろ……」
思っていたことが現実となったらしい。
本日2度目のヒュドラ戦となったのだ。
しかも今は毒沼に右足が嵌っている状態であるため、前回より悪い状況だと言えるだろう。
すると、即座にこの状況を打開するための策を考え始めた。
「大丈夫だ……俺はちゃんと冷静だ」
自分自身に確認をするかのように呟く。
そして、2度目となるヒュドラ戦のゴングが今、鳴らされたのであった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます