第10話 大爆発
「あぁ、お腹が空いたなぁ……」
朝から慌しかったので食事を取れていないのだ。
空腹のため、先へ進みながらも食料を探していると、微かに水の流れる音が聞こえてくる。
「……ん? この音は……!」
急いで音のする方へ向かうと、そこには綺麗な川が流れていた。
「やった! これで食料も確保できるぞ!」
喜びながら川へと駆けつけ、流れる水を両手で掬って口へ運ぶ。
「ぷはっ、うまいなこの水!」
喉も渇いていたので、より一層美味しく感じる。
喉を潤したあとは食料の確保だと考えると、透かさず左手を川の中へ浸けて魔法を唱えた。
「
その瞬間、川が輝き水中から沢山の魚が浮かび上がる。
そして魚が流される前に次の魔法を唱えた。
「
一度に沢山の魚が宙を舞い、そのまま俺の元へと引き寄せる。
近くに落ちていた枯れ葉や木の枝を集め、更に魔法を唱えた。
「
小さな種火が枯れ葉や木の枝に火を着け、その火に魚を近づけることで焼き魚をつくり出す。
とても美味しそうな見た目と匂いにヨダレが出てきたので、早速その焼き魚を食すことに。
「うん、うまい!」
塩などの味付けはないが、素材本来の味だけでも充分に美味しく、そのあとも様々な種類の魚を食して堪能する。
「ふぅ……もう、お腹がパンパンだ」
満腹後、適当に採取した大葉で余った魚を包み、全て黒箱へ収納。
「よしっ、それじゃあ出発するか!」
食事休憩を終え、再び歩き始めたのだが、その時ふと疑問が浮かび上がる。
「そういえば、あれだけの魔力は一体どこから……?」
「天職」が「無職」であり、魔力適正すら皆無である俺には、当然の如く魔力もほぼ無い。
しかし、その魔力でさえもニカナによる影響で物凄いことになっていたのだ。
まぁ、そのことに気づくのはまだ先の話だが……
歩き始めてからほどなくすると魔物の気配を感じ取り、その魔物は1匹だけだがとても強い気配を放っている。
すると、その気配が異様に気になってしまい、確認の意味を含めて魔物の元へと向かうと、丁度その魔物と対峙してしまったので仕方なく退治することに。
「
「爆裂甲虫」とは揮発性のガスを発生させる兜虫系の大型魔蟲で、脅威ランクBの強敵である。
「爆裂甲虫には手を出すな」そういう注意書きを以前に見たことを思い出す。
つまり、それほど危険な魔物だということだろう。
だがそのことを理解していてもなお、臆することなく魔法を唱えた。
「空を斬り裂け!
魔法を唱えると一瞬にして爆裂甲虫の胴体は縦真っ二つとなり、見事一撃で屠ることに成功。
しかし、真っ二つになりながらも爆裂甲虫は最期のチカラを振り絞り、辺り一帯に揮発性のガスを発生させる。
「マズい! 早く風で散らさないとーー」
風魔法を唱えようとしたその瞬間、爆裂甲虫を中心に大爆発が起きた。
黒煙や土埃が物凄く辺りが全く見えず、爆発音により聴力にも異常をきたし、草や花の焼ける匂いで鼻も馬鹿になって、まるで自分の身体ではないような感覚に陥ってしまう。
(あ、身体の感覚もない……これは、本格的にマズいかも……)
果たして俺は、一体どうなったのであろうか……
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