第1章 始まりの街

第1話 創造と想像


「……はっ!?」


 目が覚めると、見知らぬ白い天井……ではなく、見知らぬ白い空間に俺はいた。


「……ここはどこだ? 精神と時の部屋か?」


 どうやらまだ寝ぼけているらしい。

 すると、突然目の前に袴姿の白髭お爺さんが出現した。まるで瞬間移動のように。


「ワシは神じゃ。いきなりじゃが、お主は死んだ。そしてお主には2つの道がある」


 1つ目は、今すぐ蘇生し現世へ戻る道。


 2つ目は、異世界へ特例転生をする道。


「お主はどちらを選ぶ? 3分以内に答えよ」


「神様、特例転生とはなんですか?」


「いきなり質問とはのぅ。まぁよい、特例転生とは転生時に赤子からのスタートではなく、今の年齢でのスタートになるのじゃ」


「神様、それは転移や召喚になるのでは?」


「お主はもう死んどるじゃろ? じゃから転生でしか異世界に行く方法はないのじゃ」


「なるほど、よく分かりました」


「ほれ、残り時間は1分切ったぞぃ」


「では、2つ目の異世界行きでお願いします」


「即決じゃのぅ」


「死ぬ前に未練が絶たれました、学校で……」


「そうか……」


 神様は憐れみの表情を浮かべたが、すぐに表情を戻して話を再開。

 それに併せ、完璧ではないが俺も気を取り直して話を聞くことに。


「次はスキルを決めてもらう。取り敢えずは欲しいスキルを言うてみぃ」


「それなら創造魔法を下さい! 異世界といえばこのスキル一択ですよ!」


 ラノベ好きの模範解答であり、これ以上の答えは皆無だろう。だが……



「それは無理じゃ。神法全書にも載っておる」


「そ、そんな……ん? 神法全書? 六法全書みたいなもんですか?」


「まぁのぅ。それよりほれ、次はなんじゃ?」


「うーん、あんまり半端なスキルは欲しくないんだよなぁ……やっぱり創造魔法しか……んん? あっ、そうだ!」


「神様、俺に創造魔法付与のスキルと、素材を好きな形状に加工できるスキルを下さい!」


「創造魔法付与? なんじゃソレは?」


「神様が知らないということは、神法全書にも載ってはいないということですよね?」


「……そうじゃ」


「それなら適用になりますよね?」


「スキルの内容によるかのぅ」


 俺は「創造魔法付与」の詳細とメリット、そしてデメリットをやんわりと伝えた。


「まぁソレなら、ギリギリOKとするかのぅ」


「ありがとうございます! YES! YES!」


 拳を握り盛大にガッツポーズ。

 素材を想像した形状に加工可能な「想像加工」というスキルも貰えたので喜びは2倍になったのだ。


「あとは最低限の装備と路銀を渡して終わりじゃ」


「神様! その前にこの場でスキルの練習をさせて下さい! いきなり異世界に行ってもすぐに死ねる自信があります!」


「そんな自信はいらんじゃろ……まぁええか。取り敢えずはコレで練習してみぃ」


 そう言うと神様は、銀鉱石のような物を数個と黒い木の枝を数本、謎の暗黒空間から取り出してきた。


「くふふっ、これぞファンタジーだよな!」


 その光景を見て思わずニヤけてしまったのである。

 何故なら、これからこの素材を自由に加工し、更に創造した魔法を付与できるという異世界ロマンそのものなのだから。


「神様、この素材は一体なんでしょうか?」


 神様にこの素材はどんな物なのかを質問してみると、神様は簡単に説明してくれた。


「この素材はのぉーー」


 どうやらこの銀鉱石のような鉱物は噂のミスリル魔鉱石らしく、そしてこの黒い木の枝はダークトレントという魔物の枝とのこと。


 ミスリル魔鉱石は魔力の伝導率が良くとても頑丈だが、鉱石なのでやはり重い。

 一方のダークトレントの枝は程良く丈夫でしなりもあり、何より鉱石よりも軽い。

 しかも木の枝なのに耐火・耐熱の自然付与まで付いているようだ。


 因みに素材には付与容量というものがあり、その容量内に付与能力を収めなければならないらしい。


 神様から貰った素材の量なら、小さ目な物を作れば6点はイケそうな気がする。

 早速、どんな魔法が必要でどんな物に創造するのかをワクワクしながら考えてみた。



「うーん、色々あり過ぎて悩むなぁ……」


 欲しい魔法が多すぎて迷う俺。

 それでもある程度は欲しい魔法の目処は付いた。


「先ずは欲しい魔法を厳選してみるか……」


 空間収納・瞬間移動・鑑定・分析・超人化・時間停止・蘇生・完全再生・即死攻撃・絶対防御・広範囲探知・絶対使役 など。


「よし、次は素材をどの形状に創造するかを考えなきゃな……」


 指輪・腕輪・アンクレット・ネックレス・イヤリング・眼鏡・ストラップ・カード・ナイフ・短杖 など。


 剣や槍などの武器類は大き過ぎて素材が足りないし、何より怖い。

 まぁ即死攻撃や絶対使役も充分怖いけど。


 まとめた内容を神様に報告をしたところ、神様から指摘があった。


 蘇生・即死攻撃は不可、時間魔法系は数秒なら可能で、空間収納は無限ではなく大容量なら良いらしい。

 また、瞬間移動は数キロ程度なら可能で、完全系や絶対系は全てNGのようだ。


(それらも神法全書に載ってるのか? 一度でいいから本の中身を見てみたいな……)


 そんなことを思いながらも次の段階へ進む。



 続いて素材の形状だが、指輪2つ・腕輪・ピアス・伊達眼鏡・短杖の計6点を選択。

 素材は少し余ったが、後々のために取っておくことに。


 指輪2つ・腕輪・ピアスはミスリルで、伊達眼鏡・短杖はDトレントの枝で加工予定である。

 因みに短杖はハリーさんの杖を参考にしようと思う。


「やっぱり、こういうのを考えるのは楽しいなぁ」


 浮かれ気分の俺。

 しかしあまり神様を待たせるのも申し訳ないので先へ進むことにした。



 とうとう素材の加工をするときがきたので、神様から貰った想像加工のスキルを使うことになるのだが、その使用方法のイメージが勝手に脳内へ流れ込む。


「……なるほど、そうすればいいのか……なら早速やってみるか!」


 素材を両手で持ち、生前に見たものをイメージして強く念じてみると、素材が白く淡い光に包まれていき、徐々に形状が変化していく。

 このスキルは色々と条件がありそうだがそれは今後試して行くしかないだろう。


「あとは欲しい魔法を付与して……できた!」


 こうして、6つの魔導具を完成させた。

 効果や性能に関しては使って確認しよう。

 しかし、これだけは言わせてほしい……


「ビームは男のロマンだ!」


「ぬおっ!?」


 突然声を上げる俺に神様は驚いたようだが、俺自身は全く気にしていなく、寧ろ他のことに夢中となっていた。


「とても楽しみだなぁ……あぁ、早く使ってみたい……」


 補足になるが、指輪と腕輪には「フリーサイズ」という創造魔法を付与。

 そして全ての魔導具には防犯として、登録者以外が使用した場合に限り電流が流れる「セキュリティ」という創造魔法を付与してある。

 この2種類の創造魔法は、今後に作る魔導具の標準装備としても付与していくつもりだ。



 一通り終えると神様から幾つかのアイテムを貰えることになり、思わず密かにガッツポーズ。

 そのあとすぐに緑色のローブと軽めの黒いブーツ、そして路銀の10万イェンを貰い、即座にローブとブーツを装備してみる。



「そろそろか……お主を送らねばのぅ」


 神様は俺の真下に魔法陣を敷き、その魔法陣からは白い光が放たれた。

 そのことに驚きはしたが、すぐに落ち着きを取り戻して神様へある言葉を伝える。


「神様、俺を見つけてくれてありがとう……」


 すると神様は無言で微笑む。

 それを見たら自然と涙が零れ出した。


「最後に、お主の名前は?」


「俺ですか? 俺の名前はーー」


 名前を告げると共に魔法陣が発動し、俺は異世界へと転生した。


「神様、また逢いましょう……」


 こうして、俺の異世界ライフは幕を開けた……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る