第92話 元陰キャのお部屋に女の子がやってきた!
「わぁ、ここが修平くんの部屋なんだぁ。お邪魔しま~す」
「さすが勇者様、綺麗に整頓されていますね」
部屋に入った途端。
ハスミンとリエナがキョロキョロと部屋の中を見回しながらそんな感想を呟いた。
「勇者であることと部屋の綺麗さって関係あるのかな?」
「私の持つ理想の勇者様像ですね。まさにイメージ通りだったんです」
「まぁそういうのはあるよな」
俺にしても、ハスミンの部屋はおしゃれで可愛い女の子らしい部屋だろうな、みたいな勝手なイメージがあったりするし。
ちなみにリエナの部屋には一度入ったことがあるんだけど、なんていうかその……乱雑だった。
汚くはないんだけど、本とか物が雑多に置かれていて整頓されていないのだ。
本人は「どこに何があるかちゃんと把握してるからいいんです」って言っていたけど。
「ふんふーん」
「それで、ハスミンはなんで楽しそうにベッドの下を覗き込んでるんだ?」
「それはもちろん、えっちな本が隠してあるかなってちょっと気になったからだけど?」
「ああそう」
俺は内心のわずかな動揺を悟られないように、努めてあっさりと返事を返した。
異世界で5年間培った俺の鋼メンタルは、これくらいで感情を大きく揺さぶられたりはしないのである。
「ほら、漫画とかじゃよくベッドの下に置いてあるのが定番でしょ?」
「あー、あれは創作だと思うけどな」
「え、そうなの?」
「だって考えてもみろよ? 普通の男子高校生は親と同居してるだろ? そんな見つけて下さいって言ってるようなあからさまな場所に、親に見られて困るものを隠したりはしないよ。一撃でバレる」
「ふんふんなるほど、それは納得の意見だね。それで修平くんはどこに隠してるの?」
「あるって前提で聞いてくるのはどうなのかな……?」
「だって男子はそういう生き物だってメイが言ってたよ? もし
「新田さんって割と物分かりが良いというか、すごく大人びてるというか。そういうドライなところあるよな」
高校1年で、男子がエロい生き物だということについてそこまで達観できる女の子は、あまりいないんじゃないだろうか?
新田さんは、精神年齢をプラス5年している俺と同等かそれ以上の精神年齢をしている気がする。
まさか新田さんも俺と同じく異世界帰りだったり――なんてな。
「で、どこに置いてるの?」
「……持っているかどうかも含めてノーコメントだな」
「うわ、あやしー……」
ハスミンがジト目で見つめてくる。
と、そこで、
「ハスミンさん、ハスミンさん。勇者様は淫魔サキュバスの女王エロスティアの精神攻撃にも耐える鋼の禁欲力を持っているんです。それにとても品行方正なんですから。えっちな本なんて持っているはずがありませんから。ね、ですよね、勇者様?」
リエナがとてもキラキラした目で言った。
もちろんそんな目で見つめられても俺は視線を逸らしたりはしない。
異世界で5年も過酷な魔王討伐の旅をやり遂げた最強勇者の鋼メンタルを、舐めてもらっては困るのだ。
「もうこの話はいいんじゃないか? それより本題に入ろうぜ?」
「あ、露骨に話を逸らしたんだけど」
そう言いつつも。
勉強机のイスに座った俺に続いて、ハスミンとリエナも真面目な顔になってベッドに腰かけた。
今日こうして俺たちがなぜ3人で集まったかと言うと、
「じゃあ改めてハスミンに紹介するよ。リエナエーラ=エリアス。異世界『オーフェルマウス』で一緒に魔王討伐の旅をした天才神官だ」
ハスミンとリエナの顔合わせのためだった。
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