314.山賊討伐依頼

 僕の奥さん達四人が、それぞれの『オベリスク』を壊す為に出発した。


 向こうの領都に着くのは二日後になるだろう。


 レジスタンスの力添えもあって、案内もスムーズになりそうで良かった。


 僕はというと、アンセルさんから街はずれの森に隠れている山賊討伐を請け負った。


 魔族の中でも山賊っているんだね……。


 どうやらはぐれ魔族達らしくて、他の魔族が被害を受けているそうだ。


 魔族の中でも格差はあるので、はぐれた連中なのだろうね。




 念の為、リサには残って貰って、レジスタンスの隠れ屋の防衛に当たって貰った。


 なんと、ナターシャお姉ちゃんも多くの白狐を連れてリサと一緒に防衛に当たってくれている。


 実は、進化した技である神々の理想郷ジ・アヴァロンには、もう一つ、特別な能力があった。


 今までは相手のステータスを本人のステータスの最大値分しかあげられなかったけど、今回は無制限となっていた。


 最大五万も追加であげられるんだから凄い……。


 今のナターシャお姉ちゃんはステータスだけでも、人類上位戦士と同格である。


 まぁ、実際戦っても勝負にはならないんだけどね~。


 それでも威圧感は放てるようになって、本来のナターシャお姉ちゃん雰囲気も相まって、他の奥さん達よりも強力・・な威圧感を放てるようになっていた。


 多分、そこいらの魔族なら威圧感だけで制圧出来ると思う。


 だって…………試し打ちしたレジスタンス全員がひれ伏していたから……。




 僕は森の前に降りて、歩いて森の中に入って行った。


 う~ん。


 この森全体に幻術が放たれている。


 山賊達が厄介な理由として、アンセルさん達が森に入っても見つからなかったそうだ。


 それどころか、向こうからの遠距離攻撃の餌食になって帰って来たみたい。



 暫く歩いていると、向こうから気配を感じ取った。


 恐らく、普通の人なら気配すら感じられないかも知れない。


 僕には精霊眼があるからね、幻術で隠しても見え見えだ。



 一応敵と決まった訳ではないからソフィアには攻撃しないように話しておいた。


 頭に乗っているタマモもやる気満々だけど、向こうの出方次第って感じだ。



 相手の気配が近づいてくると、魔法の気配がした。


 その直後、復数の魔法が飛んでくる。


 その魔法が僕に当たると、そのまま跳ね返されて向こうに飛んだ。


 余程の魔力を持った存在の魔法じゃないと、僕には効かないからね。



 数秒後、向こうから悲鳴が聞こえて、逃げる気配を感じ取った。


 こっそり付けて、向こうのアジトを掌握したいね。




 逃げ込んだ魔族を追った先にあったのは、小さな部落だった。


 勿論、魔族達が生きている。


 魔族達はまだ僕の存在には気づいてないが、数人が怪我をして治療に当たっていた。




「は? 魔法が跳ね返ってきた?」


「そ、そうなんだよ! 俺らが放った魔法がそのまま跳ね返ってきたんだよ!」


「……」


「本当だってば! 俺だって信じられないよ! あいつはやばいかも知れない! 親分がいないからとにかく逃げてきたよ」


「ふ~ん、まぁ、実際負傷者が居るからね……仕方ない、信じてあげるよ」


 ごめんなさい、彼が話した事は全部本当の事です。


 魔族の数は、ざっと四十人。


 向こうに遊んでいる子供が十人くらい。


 それと飼っているモンスターも数匹。


 山賊というよりは、部落民って感じだ。



 一先ず、交渉してみる事にしよう。


 僕は部落に入っていった。



「なっ! あ、あいつだ!! 魔法を跳ね返したやつが来た!!!」



 先程、跳ね返った魔法で負傷した魔族が叫んだ。


 叫びを聞いた他の魔族達が前に出て来る。


 全員武器を取って臨戦態勢だ。


「初めまして、僕はクロウっていいます」


 ……。


 …………。


 やっぱり、受けては貰えないみたい。


「皆さんがなら容赦するつもりはないのですが……」


「間もなく親分が戻られる! みんな! ここは絶対に死守するぞ!!!」


「「「おおおお!!!」」」


 魔族達の士気は非常に高い。


 仕方ない。


 その親分という方がくるまで、制圧させて貰おうかな!


 超手加減の風属性魔法!!


 僕は放った暴風に魔族達が全員ぐるぐる飛ばされ落ちた。


 よし、制圧完了!




 目の前に落ちたリーダーっぽい女性魔族に近づいた。


「あの、もう制圧は完了したので、皆さんについて話して貰――――」




「槍技! 臥竜閃撃!」




 後方から声と共に、強力な突き・・攻撃が飛んできた。


 ここはヒメガミさん直伝の『武術、真剣白刃掴み』!


 突いてきた槍をそのまま右手で掴んだ。


「なっ! 俺の槍を素手で止めた!?」


 彼は驚いていたけど、僕の力に対抗するかのように槍を離さない。


 へぇー以外と強い方なんだな。


 こういう部落の親分というから、弱い方だと思っていたら、想像以上には強そうだ。




「初めまし――――え? えっ??」




 彼を見た僕は思わず驚いてしまった。


「あれ? ……ん? 違うな…………でも似てる?」


「ん? 君は一体……?」


 僕に槍を突いて来たのは、人間だった。


 『暗黒大陸』に入ってから人と会うのは初めてだね。


 あ、『精霊の扉』は除いてね。



 更に僕が驚いた理由。


 それは……。




「ん? 君、名前は?」


「は、はい。クロウって言います」


「クロウ……? 聞いた事ない名前だな…………だがな……似てるんだよな~」


 彼も僕を見て何かを思ったみたいだった。



 僕はそのおじさんにとても見覚えがあった。


 初めて会うのだけれど……何度も見たその顔立ち。






 ――――お父さんの顔とそっくりであり、綺麗な黒髪と碧眼のおじさんだった。

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