309.魔王城制圧作戦会議

「では、魔王城制圧作戦会議を始める」


 ギレさんから開始の合図によって、作戦会議が始まった。


「まず、一番の目標は、クロウ殿を魔王様の所まで届ける事が最も重要な任務となる」


「はい!」


「ケニアか、どうした」


「魔王城の内部は熟知してます。入った際、クロウ様の案内は私がします」


「そうだな、魔王城でメイドをしていたな、では案内役はケニアに頼む」


 僕の案内役はケニアさんに決まった。



「次に、魔王城に入る方法についてだ、現在、魔王城には特殊な結界が張られていて、スニカーグル様も勿論、全ての魔族は入れない。というか、出て来た者でも中には入れない事を確認している」


 これが一番の問題だ。


 『不可侵の結界』ともなると、無理矢理入る方法は見当たらない。


 中が見えていても、中と外は完全な別世界なのだから。


「それで、噂を集めて、あの結界の出所が予想出来た。それが、四天王様がいらっしゃるそれぞれの領都だと推測出来る。各領都に新しく立っている『オベリスク』という像を壊せば、あの結界が消えると予想している」


 へぇー、既にそこまで調べがついていたのね。


「しかし、各『オベリスク』を壊すが一番の問題となっている……その理由は、それぞれの『オベリスク』をそれぞれの四天王様が守っているからだ」


 それもそうか。


 それぞれの領都に置いておく意味を考えれば……そうね。


 以前、スニカーグルさんにあった時は、その強さを目の当たりにしている。


 ここにいる魔族達が全員で掛かっても勝てないだろうね。


「それぞれの『オベリスク』を攻略する班は既に作られている……しかし、先も言ったように、肝心な『四天王様と対峙出来る戦力』がないんだ……」


 ギレさんの言葉に、魔族達全員肩を落とした。


「スニカーグル様と戦える人なんて……いる訳ないよ……」


 ペイルも落ち込んでいた。



 ――その時。


 ソフィアがテーブルの中央に、ぴょーんと飛んでった。


 ソフィアの登場に魔族達の視線が集まる。


 そして、ソフィアは部屋の端に『精霊の扉』を吐き出した。


 えええええ!?


 ソフィア、どうしたの――――――あ。




 『精霊の扉』が開くと、中から――――




「その話、聞かせて貰ったわ。四天王の相手は私達に任せていいわ」


「セナお姉ちゃん! それに、アリサとディアナ、レイラお姉さんまで!?」


 セナお姉ちゃん、アリサ、ディアナ、レイラお姉さんが『精霊の扉』から出てきた。


「クロウったら、何の相談もしてくれないんだから! こうやって、わざわざ来てあげたわよ!」


 セナお姉ちゃんが代表して、ドヤ顔になる。


 それに釣られてアリサとディアナもドヤ顔になって、レイラお姉さんも慌ててドヤ顔になる。


 みんなの仕草がちょっと可愛かった。



「あれ? でもどうしてみんながここに?」


「ソフィアちゃんに相談してみたんだよ。そうしたら、その『精霊の扉』なら『ルシファーのダンジョン』からならいつでも開けられるっていうから、『ルシファーのダンジョン』の最下層から来たの」


 そうだったのか……。


 どうやら、僕を驚かせる為に、秘密にしていたみたいね。


 ソフィアも何処か誇らしげにドヤ顔している。


 うん。うちのソフィア、世界一可愛い!



「いきなり現れたけど、話は既に聞かせて貰ったわ。それぞれの四天王は、私達、クロウの妻達に任せて頂戴。私がセナ、こちらがディアナ、こちらがレイラ、そして、その後ろにいるヒメガミの四人で対処するわ」



 うわ……既にセナお姉ちゃんが仕切り始めた……。


 ギレさんもポカーンとしていたが、ビショくんが「絶対に口答えしないでくださいよ? 逆らわないでくださいよ? あの方はマジでやばいんで」と隣で脅かしていた。


 あ、ああ……セナお姉ちゃんに問答無用でボロボロにされたの、ビショくんだっけ……。



 それから四天王の戦うスタイルを聞いたセナお姉ちゃんは、それぞれの奥さん達の行き先を決めていた。



 それを決めている間。


 僕は背後から刺さるような視線と恐怖を感じた。


 あ、ああ……これは振り向くと駄目なやつだ……。


 開いている『精霊の扉』から、ドスン、ドスンと一歩一歩に力が込められた音が聞こえてきた。


 ひぃぃぃ……。


 こ、怖いよ…………。


「く~ろ~う~く~ん」


 僕は振り向きざまに、それは見事な土下座を披露した。


 見ていた奥さん達はみんなクスクスと笑っていたけど。




「ご、ごめんなさい! ナターシャお姉ちゃん!」




 あんなに美しいナターシャお姉ちゃんが、鬼の形相で白狐のギルの上に乗って、睨んでいた。


 実は、ナターシャお姉ちゃんだけ・・神々の理想郷ジ・アヴァロン』が掛かっておらず、暫く話せていなかった。


「クロウくん、分かるよね?」


「は、はひ! ただいま!」


 僕は大急ぎに『神々の理想郷ジ・アヴァロン』をナターシャお姉ちゃんに掛けた。


 ナターシャお姉ちゃんが光り輝くと、満足げに笑顔になってくれた。






「クロウくんに捨てられたかと思ったのよね……」


 そんなはずないじゃないか!


 僕は魔族達や奥さん達、友人達が見守る中、ナターシャお姉ちゃんをぎゅーする刑となった。

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