308.レジスタンス
「ケニア! し、シーッ!」
「あんたね!」
「バレたら、俺の首が」
ペイルが自分の首を親指で横に引くと、ケニアと言われた女魔族は両手で口を塞いだ。
「と、取り敢えず、今は隠れ家に逃げよう」
ペイルはケニアと僕達を連れ、裏路地に入って行った。
裏路地を走って数分。
目的地と思われる家に辿り着いた。
ボロボロの家は、家というよりは、廃材をただ繋ぎ合わせただけの廃屋に見える。
中も勿論想像通りだった。
「クロウ親分、ここは隠れ家なのでこういう作りになっているんです、一応地下はしっかりしてますので、そこに案内しますね」
ペイルに言われるがまま、僕達五人はケニアと共に、廃屋の地下へと進んだ。
辿り着いた地下は、綺麗に整理整頓され掃除もされていて、広々とした広場だった。
広場には数十人の魔族が装備を磨いていたり、テーブルを囲んで何かを話し合っている。
「ペイル!」
テーブルの一番奥に座っていた魔族がペイルの名前を呼んだ。
部屋の中にいた魔族達の視線がこちらを向く。
「ギレさん! 只今戻りました!」
ギレさんと呼ばれた魔族と、その他の魔族達がペイルくんに近づいてきた。
「無事だったのか……『抜け道』が全滅しているとの噂まで流れてて心配したぞ!」
「あ、あはは……やっぱりそうですよね」
「その状況も聞きたいが、その前に良い知らせが一つある」
「良い知らせ?」
――――と、何かを話そうとしたギレさんは、僕達を見ると口を閉じた。
「そちらは?」
「あっ! すいません、先にこちらのお方を紹介しますね。こちらの一団のリーダーのクロウ親分、こちらがヒメガミ姉御、ナミ姉御、ナギ姉御、そして、リッチお爺さんです」
怪しさがプンプンする僕達の紹介に、魔族達はどよめく。
「えっと、一応、俺の命の恩人っす」
その言葉に、場が静まった。
「ペイル、信用足り得る方々なのだな?」
「勿論っす。言っておきますけど、親分がその気ならここにいる全員、既に命はないっす」
えええええ!?
ペイル!?
何で脅しているの!?
ペイルの言葉に驚くギレさん。
「こほん、分かった。クロウ親分とやら……ペイルを助けてくれて、この場を代表して感謝する」
魔族達全員が頭を下げた。
……そうか、やっぱり魔族も人族も関係ないんだ。
根っから悪い人はいるけど、魔族全員が悪い思想……人族を殲滅したいという思想ばかりではないのかも知れない。
「初めまして、クロウと言います、こちらの一団のリーダーです」
僕も軽く会釈して挨拶をした。
「それで! ギレさん! 良い知らせって何ですか!?」
「おお、そうだな。奥の部屋で休んで貰ってるけど、そろそろ起きたはずだな」
ギレさんが奥の扉を指差す。
丁度その瞬間、扉が開いた。
「どうやら無事だったみたいなんだよ」
その中からとある魔族達が出てきた。
「「アンセルさん!?」」
見事に僕とペイルの声が
「ん? ペイルか、久しぶりだな、それと……貴方は? 初めて見る方だが?」
部屋から出て来たアンセルさん、そしてシュメルさん達の六人が僕を見つめた。
更に魔族達全員が僕を見つめる。
今も『霧属性魔法』で変装しているからね。
アンセルさん達にも見抜けないのよね。
「『霧属性魔法』解除!」
僕は変装を解いた。
「「「クロウ!?」」」
アンセルさん、シュメルさん、ビショくんが反応してくれた。
「なっ!? 姿が……まさか! 人族か!?」
勿論、ギレさんも驚いていた。
◇
ギレさん達に改めて自己紹介及び目的を話した。
ペイルだけでなく、アンセルさん達も同調してくれて、ここに集まっている魔族達――――
実はアンセルさん達六人は、このレジスタンスの一員だったみたい。
彼らは、人族との戦争に反対している。
反対と言っても、魔王が勝手に戦うと決めたのだが、何故か以前から大陸を支配していた四天王の四人は魔王を拒まず、全面的に従う事にしているそうだ。
四天王の四人は、元々領主として、非常に誠実な方々だったみたいで、彼らが戦いに身を投じた事に、多くの魔族達は悲しむ事となった。
このレジスタンスは、そういう領主達に向けての一団であり、意外と多くの魔族達が所属しているという。
ここにいないけど、数百名にも及ぶとの事だ。
「そうか……クロウは魔王様を直接……」
「はい。戦争を止める方法を探していたんですけど、どうやら魔王が強制的に事を起こしているみたいですから」
「…………」
「しかもまだ就任して一年だとか?」
「ああ、一年前。この城を収めていたスニカーグル様を訪れた事から始まる」
「スニカーグルさんというと、あの赤い羽根の魔族さんですか?」
「ん? クロウはスニカーグル様に会ったのか?」
「ええ、『暗黒大陸』の外側の確認に来た時、遭遇したんですよ。一応、風属性魔法で飛ばしただけなので、倒したりはしてませんけどね」
「そうか……それは良かった。あの方が倒られると困るのでな……」
どうやら四天王さん達は、多くの魔族達に支持されているみたいだね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます