302.ナミとナギ
カチッ――
鍵を閉める音が響き、扉が開かない事を確認する。
「ヒメガミさん、本当に戻らなくても大丈夫ですか?」
「ええ、お母様にはそのまま旦那様の為に戦ってくると伝えてますから」
「う~ん、それならいいんですけど…………」
それはそうと、とても気になる事がある。
ヒメガミさんの両足の後ろに、女の子二人が隠れてこちらを覗き見している事だ。
「姉上? ナギちゃんがどういうお方なのか知りたいそうです!」
女の子の一人が話した。
二人は全く見分けは付かないくらい似てるけど、さっきリッチお爺さんに頭を下げていた雷使いの子は髪型を左向きにしている。
今喋った子は髪型を右向きにしている。
よくよく見ると顔にほんの一か所だけ、ホクロがあるのがまた可愛らしい。
「ナミ、ナギ、挨拶してくださいね。こちらは私の旦那様となるお方です。クロウ様と言うのですよ」
「えええええ!? 姉上の旦那様!?」
二人一緒に同じポーズで驚く。
何となく、これでナギちゃんと言われている雷の子は声が出せないのかも知れないと思えた。
もう一人の子が代弁していそうな雰囲気だからね。
「初めまして、僕はクロウティアと言います、名前が――」
「ぬあんだとぉおおおお!? おぬし、名前はクロウではないのか!!」
「へ?」
後ろからリッチお爺さんが騒ぎ出した。
「まままままま、待ってくれ、おぬしの名前はクロウなのか、クロウティアなのか、どっちじゃ!」
「え? どっちも……ですよね? クロウティアなんですけど、長いんでクロウって呼んでください!」
リッチお爺さんが口をパクパクさせている。
どうしたんだろう?
「クロウ様ですね! 私は姉上の双子の妹、ナミと申します。こちらはナギちゃんですけど、声が出せないので私が代わりにナギちゃんの言葉を伝えてます!」
「へぇ! 仲良し双子ちゃんだね! そうか! だからヒメガミさんと瓜二つなんだね、ヒメガミさんに似てて可愛いと思ったよ」
僕の言葉に双子は「えへへ」と笑顔になる横で、ヒメガミさんの顔が心配になるくらい緩んでいる。
後ろでは、ずっと口をパクパクさせているリッチお爺さんもいるし……何だか凄い状況になったね。
いきなり人が増えたので、一旦、野営にしようとの事で、野営となった。
と、いうのも、次は『ウリエルの扉』何だけど、恐らく、これは大丈夫。
何故なら、僕に『鍵』を渡してくれたシエルさんが、『ウリエルのダンジョン』は既に閉めてあると話していたから。
◇
「も、もう一回だけ聞こう……おぬしの名前は本当に『クロウティア』なのだな?」
「ですよ~リッチお爺さん、それもう十回目ですよ?」
「お、おう……すまぬな……」
「リッチお爺さん、僕の名前になにかあるんですか?」
「う、うむ…………そうだな、今度話せる時にでも話そう」
「分かりました、じゃあ次はヒメガミさんですね」
「へ!?」
涎を垂らしているくらい顔が緩んでいるヒメガミさん。
最初会った時は、あんなにクールだったのに、婚約後はいつもこういう状態だ。
ヒメガミさんの左腕の薬指に嵌められている指輪がキラリンと光った。
「姉上がこんなにも嬉しそうにしてるのは、私達と仲良くなって以来、久しぶりに見ます!」
「!!」
ナミちゃんの言葉に合わせて、ナギちゃんも「うんうん」って大きく頷いた。
「あ~ナギちゃん? もしよければ、僕に少し見させて貰っても良いかな?」
「??」
チョコンと首を傾げて、どうしたの? と言っているようだ。
「声が出ないと聞いていたから、僕には色んな人の病気とかを治す力があるから、ナギちゃんにも試してみていいかな?」
「!!」
ナギちゃんが物凄い勢いで首を上下に振った。
お、落ち着いて!
首痛めちゃうよ!
一先ず、精霊眼を発動させ、状態を見てみる。
……
…………
残念ながら、『呪い』は見つからなかった。
「ナギちゃん、期待させちゃってごめんね? もしかしたら、治せないかも……、一応、念の為に『エクスヒーリング』使うね?」
少しぬか喜びしたナギちゃんが、少し落ち着いて頷いた。
僕は『エクスヒーリング』を発動させて、ナギちゃんに掛けた。
「ぬおおおおおお!! これは……これは!!!!」
へ?
後ろを見るとまたもやリッチお爺さんが何かを叫んでいた。
リッチお爺さん……。
ナギちゃんは、やっぱり何の変化がなかった。
声が出ないのは『呪い』や『病気』ではなく、生まれる瞬間から『声が出せない状態』のまま生まれたという事だろうね……。
何かを喜んでいるリッチお爺さんとは対称に、ナギちゃんは物凄く落ち込んでいた。
ナミちゃんが優しく背中を撫でてあげている。
…………
期待させちゃって、申し訳ないな……。
【クロウくん!】
【うん? メティス、どうしたの?】
【喋れるようにはなれないけど、特定の人とは喋れるようになる方法ならあるわよ?】
「えええええ!? どんな方法!? 教えて!」
僕の急な言葉に三人ともビクッとなった。
【クロウくんは『従魔のパス』を使っているでしょう?】
「『従魔のパス』? う~ん、従魔になってくれた子達となら……」
【クロウくんは一つ大きな勘違いをしていると思うの。『従魔のパス』は従魔になった者としか出来ない訳ではないわ】
「えええええ!?」
【そもそも『従魔のパス』というより、クロウくんはレジェンドスキル『神獣の加護』のおかげで、従魔ではなく
僕はメティスの『従魔のパス』に付いての説明に食入るように聞き始めた。
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