292.中央大陸の防衛
クロウティアが暗黒大陸に向かっている間。
各国のダンジョンの前には、物々しい雰囲気の大勢の軍隊が戦いの準備をしていた。
未だに信じられない作戦『アブソリュート』。
空想の作戦が、初めて発令され、多くの兵達は不安と共に、世界を守りたいという一心で一致団結していた。
そして、ダンジョンによりモンスターの群れが――スタンダードが始まった。
◇
◆アーライム帝国、ミカエルのダンジョンの前◆
『戦慄の伯爵』こと、アデルバルト伯爵は静かにその時を待っていた。
クロウティアから贈られてきた『大斧』を前に置いている。
かのお方から「これからは魔族との戦いになるかも知れません。その時の為にアデル伯爵さんの『斧』も準備しておきました」と可愛らしい笑顔でくれたその斧は、今の伯爵には最も大事なモノとなっている。
クロウティアに助けられ、救われた自分だからこそ、彼が愛する世界を守る為にその命を掛けると決意していた。
そして、時が訪れる。
大きな音と振動が外にまで漏れていた。
「帝国軍よ! 剣を取れ! 我々が愛した世界を守る為に戦え! 我々には女神様が付いている! 必ず、モンスター共から世界を守ろうではないか!!」
『戦慄の伯爵』の号令と共に、兵士達から大きな歓声が上がり、同時にダンジョンの入り口からモンスターの群れが溢れ出した。
「全軍! 全力で一匹でも多く討伐せよ!!!」
ミカエルのダンジョンの前で激しい攻防が繰り広げられた。
◇
◆アーライム帝国、ラファエルのダンジョンの前◆
「マスター! 全ての準備が整いました!」
青い髪が風になびいている『大器の賢者』アレクサンダーに青年が報告する。
ミカエルのダンジョンとは打って変わり、こちらには数十人の兵士……いや、海賊の格好ではないローブを着込んでいる者達がいた。
これほどの少人数に対応する理由。
それは――――、ラファエルのダンジョンの正面に大型兵器魔道具が多数設置されているからである。
超大型兵器魔道具が三台並んでいる壮大な景色であった。
「前の戦争で使えないようにコッソリ隠した超大型兵器魔道具……漸くお前達にも出番が来たぞ」
アレクサンダーは嬉しそうに、魔道具達を見つめていた。
「アレクお兄様」
何処か凛々しくなったレイラ皇女をアレクサンダーは嬉しく思えた。
きっと、恋を知った女になったのだろう。
「レイラ、もしもの時は俺と時間稼ぎだな」
「はい、念の為、
レイラの言葉通り、魔道具の後ろには、アカバネ大商会の警備隊として有名な顔ぶれから、最近現れたという大型白い狐のモンスターが並んでいた。
「しかし……あの狐達……強過ぎないか?」
「ふふっ、だって、あの方の従魔ですよ?」
「まあ……あの
「ふふっ、お兄様から見ればまだ少年っぽいですものね」
その時、ダンジョンの中から大きな音と揺れが伝わって来た。
「皆! これからモンスターの群れが溢れ出る! この一帯なら一撃で全滅も出来るはずだ! 戦争時、人々の命を奪わないように眠って貰ったが、今回は人々を守る為に働いて貰う! 総員、心してかかれ! 我々の後ろには守るべき愛する人がいる事を!」
アレクサンダーの号令に、数少ない兵達とアカバネ大商会の警備隊から声援があがる。
――そして、ダンジョンの入り口から大量のモンスターが溢れ出た。
溢れ出たモンスターは、真っすぐ魔道具に向かい走り続けるが、モンスターが平原一杯に出た頃、超大型兵器魔道具『エターナルキャノン』の一台が動き出し、火を噴ぎだした。
轟音と共に、平原が一瞬で火の海になり、モンスターの群れは一掃された。
そして、またダンジョンの入り口から新しいモンスターの群れが溢れ出た。
◇
◆フルート王国、カマエルのダンジョンの前◆
フルート王国の『鋼鉄の将軍』の異名を持っているのは、ベガリー・イハイム将軍である。
「フェルメール、今回の
「相変わらずの熱血っぷりですね。『破滅の騎士』さんの所為ですかな?」
「ふん、あいつばかり戦場で名を上げてるからな、今回は儂も名を上げないと」
ベガリー将軍は『破滅の騎士』こと、ジョゼフとは因縁のある関係であった。
幼い頃から、常に比較され、学園の両国の親善試合では三戦三敗と、いつも彼の足元に隠れてきたのである。
しかし、ジョゼフからはその強さから信頼に置かれ、時々酒を飲む間柄となっていた。
先日――――孫の自慢が兎に角凄くて、自分の活躍なんかよりも孫の話ばかりだった。
ベガリー将軍はその事を「貴殿とは勝負にすらならないから気にならない」と受け取っていたのだ。
「フルート王国の勇敢な兵士達よ! 此度の戦いは、守る為の戦いである! 我々の大事な人々を守る為、その命を捧げよう! 儂に続け!!」
号令と共に、歓声が上がった直後、ダンジョンの入り口からモンスターの群れが溢れ出た。
フェルメールの作戦により、ダンジョン一階の入り口付近にはトラップ魔法が仕掛けられており、外に出て来たモンスターの群れは多少なりとも傷を負っていた。
『鋼鉄の将軍』率いる兵士達は大盾でモンスターを受け止めると、後方から長槍でモンスターのトドメを刺す戦法で戦い始めた。
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