290.消失間の出来事①
◆クロウティアが消失していた頃◆
クロウティアの奥さん達は、記憶を無くしてはいたものの、何か大事な
指輪から想像出来るのは、自分達には旦那様がいる事。
みなが同じ旦那様の妻となっている事。
今、住んでいる場所が、恐らく、旦那様の家である事。
自分達の
そこで、思い出せるまでの間。
彼女達は全力で、今するべき事に当たった。
第一婦人であるアリサ。
彼女は『聖女』の力を持って、対魔族の事を考えていた。
何故かは分からないけれど、いつか世界に魔族が訪れるかも知れないという不安があった。
魔族は数が少ないが、一人一人強力であると本に書かれていた。
そんな魔族に対抗する上で、最も困難なのは、彼らに対した効果的な攻撃手段がない事だ。
圧倒的な魔法があれば、塵も残さぬほど消滅させられるだろう。
だが、皆が皆それを出来る訳ではない。
そこで彼女が考えたのが、対魔族用武器だった。
実は武器を作る過程で、彼女の血を一滴足す事によって、その武器に対魔族の属性が付与される。
確か、自分が作ったその武器を……ソフィアが使い、前教皇にトドメを刺した記憶があった。
彼女は、ソフィアに頼み、自分の血を使い、対魔族用武器を量産していく事となった。
第二婦人のセナ
今や『仮面騎士』として、世界で有名である。
余談にはなるが、彼女が名前を失ったその日。
大好きな友人の
まず、連合軍の三国。
彼女の大きな戦果を知っており、その噂も重なり、グランセイルの光となった。
そんな彼女が自分を犠牲にしてまで守りたかったもの。
それがアリサであり、帝国であった事を、三国の全ての者達は分かっていた。
だから、怒るのではなく、彼らもまた帝国に歩み寄る事にした。
帝国に一切の差別もしないまま、非難する事もなかった。
更に帝国。
最初は彼女が自分達の『聖女様』を奪った事に怒りを感じていた。
更に敗戦から彼らは『聖女様』を取り戻す事が出来なかった。
そんな怒りは、全て皇帝に向くはずであった。
帝国がまた血に染まるはずであった。
それを救ったのが、セレナディアの追放事件である。
その事件の発表により、帝国民達は混乱する。
彼女は本当にグランセイル王国を追放されたからである。
その時、発表を行ったのが『聖女様』であるアリサだった。
『女神教会』の発足。
他人を慈しみなさいという神託。
アリサは大好きな『セレナディア』をいつまでも想い続けると告げた。
一度決まった決定は覆されない。
セレナディアの追放は、多くの帝国民の心にも苦い想いを残す事となった。
しかし、暫くして、『仮面騎士』の登場。
多くの者は、彼女が何者なのかを知っていた。
一度決まった決定は覆されないが、彼女の出現に帝国民も沸き上がった。
こうして、世界に最も愛される事となる『仮面騎士』が誕生するのであった。
グランセイル王国以上に、帝国では『仮面騎士』が有名となり、モチーフとした人形が『女神様』よりも売れていたりするのであった。
自らを犠牲に世界の平和を案じた一人の女性の物語は、その後、大陸中に語り継がれ、最も愛される物語となっていくのであった。
そんなセナは、既に各国から絶大な信頼を手にしていた。
セナが一番最初に取り組んでいたのが、前戦争の時の教訓として、全ての街の対応及び避難の課題であった。
各国のお偉いさんだけでなく、色んな業界の人々にも愛されている彼女だからこそ、みんなが真摯に彼女の言葉に耳を傾けてくれた。
まずは、もしもの時に避難場所になるのは、『ダンジョン』である。
各国のダンジョンに避難する経路を確立し、その対応の為の兵士の配置等も日頃から行っていた。
こうしている間に完成した『アカバネ島の管制塔システム』により、一瞬で危機察知から各位に連絡まで行えるようになり、幾つかの作戦が出来上がった。
作戦『エクリプス』は、災害が起こる兆しがある為、救助隊を編成して、戦いの地もしくは、災害の地に当たる作戦である。
作戦『タイダルウェイブ』は、災害の種類で津波が来る場合発令される。
海沿い側の街は直ちに避難し、各街がそれを受け入れ、対応に当たる作戦だ。
作戦『バースト』は、特大災害時に発令されるモノで、ここで挙げられた作戦の中で、最も重い作戦である。
この作戦が発令された場合、全ての街の住民達を一斉避難させる事となる。
全員をダンジョン一階に避難させ、ダンジョン一階内部と入り口の外部で守るという作戦である。
作戦『アブソリュート』。
この作戦は言わば、空想の作戦である。
この作戦が発令される場合、最も大きな原因は何処から来るか分からない敵に対して、全域で守るという作戦である。
発令された場合、全ての街の人々が首都に集められる。
勿論、全ての首都の地下にはアカバネ大商会が作った地下
各国の上層部には、この作戦が発令された場合……それは『魔族の侵攻』と伝えていた。
本来ならそんな
――――まるで、そう遠くない未来に、そういう出来事が起きるかのように。
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