253.初めてのキスは誓いのキス

「――――――――ハッ!?」


 僕が目を覚ますと、ベッドの上だった。


 何だか……幸せな夢を見ていたような?


 周りを見てみると誰もいない。


 それは当たり前か。


 僕の部屋だしな。


 あれ? 昨日、何していたっけ……。


 何だか……長い長い幸せな夢を見ていた気がする。



 僕は起きて、部屋を出た。


 いつものように朝食を食べにリビングに向かった。


 リビングに入るとナターシャお姉ちゃん、セナお姉ちゃん、リサ、ディアナが朝食を取っていた。


 あれ?


「四人共、うちにいるなんて珍しいね?」


 それを聞いた四人は驚いた顔をした。


 そして、みんなそれぞれを見つめ、何かを分かったように頷いた。


 みんな、僕の前に並んだ。


「????」


 そして、リサが僕の前に立った。


「リサ? どうしたの?」


 キョトンしてる僕に両手を僕の肩の上から抱き締めると――――


 リサと僕の唇が重なった。











 えええええ!?


 昨日の結婚式の夢って夢じゃなかったの!?




 リサの柔らかい唇が離れた。


 顔が真っ赤になったリサは「初めてのキスが人の前だと……恥ずかしいね」と呟いた。



 そして、次はセナお姉ちゃんが前に立った。


 えええええ!?


「昨日、ちゃんと誓いのキス出来なかったから、今、するの」


 あ…………そ、そっか……。


 僕、全然覚えてなくて、……そっか、誓いの……キスか。


 僕はぎこちない形でセナお姉ちゃんと唇を重ねた。


 セナお姉ちゃんがこんな目の前に――――気が飛びそうだった。


 唇を離すと、セナお姉ちゃんが「ぷあ~」って息を吸い込んだ。


 え!! お姉ちゃん息止めていたの!?



 今度は恥ずかしそうにディアナが前に立ってくれた。


 確か、昨日も付けていた気がするけど、今日も髪留めには可愛い肉球のヘアピンが付けられていた。


 僕はまたぎこちない形でディアナとの唇を重ねた。


 三回目ともなると、ちょっと落ち着いて来た気がした。


 それでもバクバクと跳ねる心臓の音が、僕のモノなのかディアナのモノなのか分からないくらい、緊張していた。



 ディアナとのキスが終わると、今度はナターシャお姉ちゃんがニコニコっと笑顔で前に立ってくれた。


 そして、僕が一歩前に出た瞬間、僕に飛び込んで来て唇を重ねてくれた。


 憧れだったナターシャお姉ちゃんとの誓いのキスが終わると、ナターシャお姉ちゃんは「てへっ、一秒も待てなかった~」と満面の笑みで話していた。



 四人との誓のキスを終えて……僕の心臓が持たなさそうで、寧ろ、吐きそうって言ったら、セナお姉ちゃんに滅茶苦茶怒られた。



 僕達の儀式? が終わると、メイドさん達が素早く朝食を準備してくれた。


 あれ……もしかして……見られ…………ううん、考えないようにしよう。



 そう言えば、しれっと食卓にレイラお姉さんも座っていて、凄く期待の眼差しを僕に向けていたけど、見えないふりをした。


 レイラお姉さん……その期待の眼差しは何を訴えているのやら……。



 食事が終わって、まだ収まらない心臓の鼓動を感じつつ、僕は奥さん達に話した。


「みんな……その、僕みたいな人と……結婚してくれてありがとう。まだ足りない事ばかりだけど……出来る事は全て頑張るから、何でも話して欲しい。もし、嫌な所もあったら教えてね。ちゃんと直せるように努力していくからね」


 みんな僕を見つめ笑顔になってくれた。



「はい!」


 ナターシャお姉ちゃんが手を挙げた。


「ナターシャお姉ちゃん、どうしたの?」


「クロウくんにお願いがあります!」


「うん? 僕に出来る事なら何でも?」


「はい! 私、クロウくんよりも年上ではあるんだけど、旦那様にお姉ちゃんと呼ばれるのも悪くないんだけど……出来れば呼び捨てにして欲しいな!」


「ええええ!?」


「あ、私も!」


 セナお姉ちゃんまで!?


「だって、アリサちゃんとディアナちゃんは呼び捨てじゃない」


「うっ、それはそうなんだけど……」


「……さっき……なんでも……するって…………」


 ナターシャお姉ちゃんが悲しい顔になった。


「う、ううっ、――――――な……な……な、っ」


「な?」


「――――ャ」


「え? 聞こえないわよ?」


「なななな、な…………なた……しゃ……」


 それを聞いたナターシャお姉ちゃんは僕に抱き付いた。


 ううっ、もう夫婦何だから構わず突撃してくる。


 柔らかいナターシャお姉ちゃんの身体と匂いを肌で感じられる。



 何とか普段はお姉ちゃんと呼んで良いって許可を貰えた。


 流石にナターシャお姉ちゃんとセナお姉ちゃんを呼び捨てするまでは時間がかかりそうだ。



 それと……その……後ろから期待の眼差しでこちらを見つめてくるレイラお姉さんを、誰か何とかしてくれないかな……。



 僕は昨日、挨拶出来なかった両親やお義父さん、お義母さんの所に挨拶周りをした。


 何故かみんなから笑われたけど、僕らしいと言われた。

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