190.兄と仲間の結婚式②

 ※結婚式の誓いの言葉に現実とは多少違う点があるかも知れません※




 パチパチパチパチ


 エドイルラ街の広場には多くの参列者がいた。


 誰もが本日の結婚を祝いに来てくれた人々だった。


 その参列者達は惜しみない拍手を送っている。



 誰もいないウェディングロード。


 真っ白なカーペットが敷かれており、広場を横切って、中央の祭壇まで続いている。


 ――――そして。






 広場の向こうから、綺麗な金色の礼服を着た男性と、綺麗な黒白の和風衣裳を着た男性が現れた。


 彼らが現れた瞬間、割れんばかりの拍手が広場を包んだ。



 そして、広場に美しい音楽が鳴り響いた。


 アカバネ商会の前にあるステージでは、楽器隊が美しい音楽を奏でていた。



 音楽と共に、それはそれは美しいドレスを身にまとった女性三名が現れた。


 二人は綺麗な白色のドレスで左右対の形になっており、それぞれ金色礼服の男の両傍に立った。


 もう一人の女性は、黒白の和風衣裳を着た男性の隣に立った。


 真っ白な和風ドレスも相まって、美しさをより色鮮やかなに引き立てていた。




 五人は、皆一緒にウェディングロードを歩いた。


 彼彼女達が通る度に、黄色い声援と共に、綺麗な花びらを空を舞った。


 参列者達が花びらを空に投げていた。


 その花びらは広場を包む、優しい風に飛び乗り、新郎新婦達を祝うか如く、空を舞っていた。



 五人はゆっくりウェディングロードを歩き、祭壇にたどり着いた。



 祭壇ではこの世で最も神々しいと錯覚する程の女性が立っていた。


 彼女は聖職者の衣裳を纏っており、見る者全てを祝うかの如く、神聖な雰囲気を醸し出していた。




 そして、結婚式の誓いの言葉が始まった。



なんじ健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め遣え、共に助け合い、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」


 彼女の美しい声で、読み上げられた言葉に広場の全員が息をのんだ。


「「はい、誓います」」


 二人の男性の声が広場に響いた。



なんじ健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、敬い、慰め遣え、共に助け合い、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」


「「「はい、誓います」」」


 三人の女性の声が広場に響いた。



 その言葉で広場は割れんばかりの声援と拍手が響いた。



「では、これにて、両方の結婚を認めます。では、誓いのキスを」



 彼彼女らは多くの祝福の中、唇を重ね、夫婦となった。






「では、ダグラス様とアヤノ様に、とある方の祝辞と贈り物がございます。僭越ながら、わたくしは代行し、伝えさせて頂きます」






 予定とは違う言葉に男性も女性も驚いたが、どうやらなのか、すぐに理解したようで、笑みをこぼして、お互いを見つめ頷いた。


「では――――、本日は私の商会の家族の結婚に集まってくださり、参列者様の皆様へ感謝を申し上げます。私はアカバネ商会のオーナーでございます。僭越ながら、私自身はこの場に来る事が出来ないので、こうして言葉で伝える事に致しますのでご寛恕かんじょくださいませ。


 さて、思えばアカバネ商会が始まり、私は最初の仲間であるダグラスさんとアヤノさんに出会ったのを人生最大の幸運だと思っております。お二人が長年、商会を引っ張ってくださり、商会が大きくなれ、多くの人々を助けるような商会に育ちました。それは私一人では決して成し遂げる事が出来なかった事でしょう。お二人には今でもこれからも感謝しております」


 その言葉を聞いた、男性も女性も既に大泣きしていた。


「お二人には、私なりの精一杯の贈り物を贈りたいと思います。どうか、受け取ってください。貴方達をこれからも家族だと思っており、愛しております。アカバネ商会オーナーより」


 そして神々しい女性は、とあるモノを取り出した。


 それは一枚の『契約の紙』だった。


 そして彼女は、その紙の中身を読んだ。




「アグウス・エクシアの名のもとに、なんじ新しい名爵位を授ける――――」











「その名を――『アカバネ』とする」











 二人はとめどなく涙を流していた。


 いや、二人だけではない。


 二人の事を知っている、アカバネ商会従業員全員が涙を流した。


 『アカバネ』。


 その名前に込められている意味を。


 クロウティアがこの世で最も大事にしていたモノ。


 それを二人に授けたのだ。











 二人は広場を向き、両膝をついた。


 そして男性は泣きながら叫んだ。



「この――――ダグラス!!!


 オーナー様に――――出逢えた事――――


 人生――最大の――――――――


 授けて――――くださっ――――


 名に恥じない――――ように――――


 これからも――――――――


 ――――――――


 ――――――――








 ありがとう――――――ございました!!!!」

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