166.十三度目の祭り①

 ※場面の入れ替わりが激しいです。

 ※何となく文章の雰囲気で読んで頂けたら幸いです。(ここから先の話し全てで三人称視点が描かれる事が増えます)




 十三回目のアカバネ祭が開幕した。


 本日は各街は多くの人で賑わっていた。


 王都、各辺境伯領都、共和国領都等……計八箇所で開かれている。



 僕は現在王都の支店に来ている。


 何故なら今回アカバネ祭は王都支店で開かれるためだ。


 今まではエドイルラ本店で開かれてきたが、これからは毎回違う街で開催をする事になった。


 その初めての開催地は『アカコレ』の参加者もいるので、王都という事になった。



 そんな僕はイベントの一つ『アカコレ』に参加する。


 ――が、しかし、本日はそれよりも大事な事があった。



 とある人からの爆破予告があった。



 勿論、うちの警備隊は優秀なので守りはしっかりしている。


 けれど、今回の爆破犯は強いかも知れない。


 なので僕が直々に相手する事にした。


 警備隊他、全従業員にも既に伝えてある。


 もしもの時は避難も考えているけど、実は二回目の『アカバネ祭』からこういう場合の避難訓練は既に行っていた。


 『人命第一』だからね。


 『次元袋』を携帯している従業員達にはまだ非売品の『ポーション』も渡しておいた。




 ◇




 『アカバネ祭』の発表会が始まる一時間程前。


 僕は精霊眼を発動させ、爆破犯を見つけた。


 やはり……そこに隠れていたのね。


 全て爆破予告・・通りだった。



 念のために気配を消したソフィアに、爆破犯の近くで待機してもらった。


 そして時は過ぎ、アカバネ祭は始まった。




 ◇ ※ここからずっと三人称視点。




 『アカバネ祭』が始まり、発表会が始まった。


 ステージ上には――なんと、クロウティアの母、フローラが上がって来た。


 素朴で純白なドレスに綺麗な茶髪の髪が風に揺れていた。


 実はこの司会役はフローラの立候補で決まった。


 今回はナターシャも色々と忙しいので、司会出来ないからと相談があった際、一緒に聞いていたフローラがやってみたいと手を挙げすぐに決まっていた。


「こんにちは! 今日の進行役を務めさせて頂きます、フローラと申します!」


 フローラの自己紹介で、最初はナターシャではないと驚いていた多くの群衆も、その美貌と綺麗な声にたちまち声援を送った。


「では最初の発表です! 実は……本日の『アカバネ祭』の『ライブ』の前にとあるイベントを行います!!」


 その声でまたもや大きな声援が上がった。


「そのイベントの名前は――――『アカコレ』と申します!」


 声援はあがっているが、初めて聞く言葉に各街の観衆は不思議がっていた。


「この『アカコレ』とは、これからアカバネ商会では、専門的に『衣装』を売る事になりました! このイベントでは『モデル』という方々に、『衣装』を皆さんの前で発表するイベントになります!! 美しいモデル、カッコ良いモデルさん達が沢山準備しております! 是非楽しみにしていてください!!」


 各街で物凄い歓声があがった。




 ◇




【ご主人様! 犯人ターゲットが動いたよ!】


【ありがとう! ソフィア】


 爆破犯が動いたのでソフィアが反応した。


 ソフィアは出来る限り身体を小さくして爆破犯に隠れ、彼の背中にくっついた。


 その爆破犯は現在、アカバネ商会の王都支店の裏手に隠れていた。


 表側は『アカバネ祭』の真っ最中で賑わっているが、その賑わいとは裏腹に、裏手は沈黙が流れていた。


 実はこの静けさはクロウティアの作戦であった。


 爆破犯がそこ・・を通ると既に読んでいたからである。



 爆破犯は爆発物が入っているであろう鞄を大事そうに抱え、静かに一歩ずつアカバネ商会王都支店へと向った。


「流石に……ここまで賑わっていると、裏手は静かなのね……」


 ふと、爆破犯が呟いた。


 フードを深く被っており、誰かは分からないが声は若い男の子の声のようだった。


 そして彼は王都支店の裏手側に入って行った。



 そんな彼の事など、誰も構わないといわんばかりに、王都中は歓声に包まれていた。




 ◇




「それでは次の発表です! 皆様から多くの声援を頂けたおかげで、『アカバネ商会』は大きな発展を遂げました! 心から感謝を申し上げます」


 深々と顔を下げるフローラ。


 それに続く多くの拍手だった。


「そんな『アカバネ商会』ですが、この度、皆様へ恩返しの一環として、一先ず『奉仕活動ボランティア』を行います! この奉仕活動は全ての町にエクシア家御用達・・・アカバネ商会直轄・・孤児院を設立しました! 勿論、孤児院全ての子供達はアカバネ商会が責任・・を持って預からせて頂きます!!」


 その声に多くの拍手と、感極まって泣き出す人もいる程だった。


 そもそも、孤児達のために支援しようと寄付しても、孤児達のために使われない事を、多くの者が知っていたからである。


 特に教会に対して王国は立場が悪い・・ので、寄付金に関してはますます厳しかった。


「二つ目の活動は、今でも多くの子供達が虐待・・や貧困に困っております。勿論、それは子供達だけでない事も理解しております。アカバネ商会ではその問題を出来る限り救いたいという気持ちがございます。ですので二つの活動を開始しました」


 観衆が息をのんだ。


「虐待を受けている子供は、現在調査隊が全ての町の住民及び兵士の皆様と力を合わせ探して保護しております。ですので、この場にいらっしゃる方の中にそういう子供を見かけた場合は、アカバネ商会までご一報お願いいたします」


 観衆の中でも何人かは目を光らせた。


 きっと思い当たる事があるのだろう。


「貧困家庭でございますが、そこはアカバネ商会で可能な限り、仕事の斡旋を行わせて頂きます。この仕事に関してはまた後程にも説明しますが、今現在多くの貧困家庭が既に斡旋した仕事に従事しております! どうか皆様、彼らを暖かい目で見守ってください!」


 大きな歓声と拍手があがった。


 アルテナ世界は貧富の格差がとても大きい。


 だから力がある者は貧困層を見下す事も多い。


 けれど、皆が皆、貧困層を見下しているわけではない。


 中にはどうにか助けられないだろうかと思う人も沢山いた。


 そんな彼らの思いを『アカバネ商会』が代弁したのであった。

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