163.奉仕活動の開始

 次の日。


 僕とお母さん、ナターシャお姉ちゃん、セレナお姉ちゃん、ディアナ、リサ、セシリアさんの七人が集まった。


 奉仕活動ボランティアの打ち合わせのためだった。




「では、これから奉仕活動について会議を行います!」


 ナターシャお姉ちゃんの凛々しい声から会議が始まった。


「まず最初に、物資については全て不問とします。私の給金で補うので――」


「はいっ!」


「えっと……どうぞ、クロウくん」


「僕も出資します!」


 ナターシャお姉ちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。


「分かったわ。ありがとう」


「そもそも、僕も使い切れない程、余っているから、こんな素晴らしい事になら、寧ろ使って欲しいくらいだよ」


 白金貨が一体何枚入っているのか想像も付かない。



「はい、では物資は全く問題なくなったので、次は、どういう奉仕活動をするかの案を募集します!」


「はい!」


 最初に手を挙げたのは、セシリアさんだった。


「セシリアさん、どうぞ」


「一番最初にして欲しい・・・ことは、アカバネ商会直轄・・孤児院の設立です」


「アカバネ商会直轄ちょっかつ孤児院?」


「ええ、今の孤児院は、全て教会が取り仕切っているんだけど、それは名ばかりで一切援助なんてしてくれないんです」


 えええええ!? そうなの!? 全然知らなかった……。


 やっぱり他の皆も驚いていた。


 お母さんだけは「分かる」と頷いていた。



「なので、アカバネ商会……つまり、エクシア家御用達アカバネ商会の直轄だと、教会もそう簡単には手を出せないはずなんです」


 教会とエクシア家って仲悪いからね。


「恐らく、それによって既にある孤児院からも、編入をお願いされるくらいにはなると思います。現在寄付されている寄付金の七割は教会に取られているはずですから」


 うわあ……とんでもない情報を聞いてしまった。


 寄付金って、その孤児院に寄付なのに、どうして教会にそれを取られるんだろう。


「今、唯一寄付金を一切取られないのは、エクシア領の孤児院だけですから、他の町でもアカバネ商会直轄孤児院を優先して建てて欲しいんです」


 確かに、それは最優先しなければいけないね。



 僕はダグラスさんに遠話で、王国内及び共和国内の全ての町で孤児院を作って貰うようお願いした。


 決まればすぐに動く。


 これは僕が決めた事の一つだ。



「え!? もう動いたの!? 流石はクロくんだわ……」


 セシリアさんが驚いていた。



「では、次は孤児ではなく、貧困層についてです、貧困層は生活が苦しく、子供達が虐げられていたりと、どう救えばいいか、案があれば手を挙げてください」


 虐げられるという言葉に僕とリサとセシリアさんの顔が曇った。



「はい」


「ディアナちゃん、どうぞ」


「獣人族の中には、鼻が利く種族がいます。その種族を活かして各町を歩き回り、家の中から血の匂いがする子供を確保するというのはいかがでしょうか」


 確か猪人族だったかな? 凄く鼻が利くらしくて、そういう事に向いているかも知れない。


「確かに良いかも知れないわね、今では獣人族も堂々と歩けるし……護衛も付ければ安心だね」


「はい、更に郵便隊にもお願いして、もしそういう家庭を見つけたら教えて貰い、調査するのも良いかも知れません」


 うん! ディアナの意見はとても良い。


 ただ……どれだけ虐げられていても、親と離れる事になるので、そこは上手く説得しないと。


「その説得なら私に任せて!」


 セシリアさんが笑顔でそう話した。


「こう見えても、そういうの得意だから!」


 うん、まず調査隊を編成して調査して、その後セシリアさんを相談役として向かって貰う。


 一応、親にお金等を渡して子供を引き離す事が出来る場合はそうしても良いと伝えた。



「それでは三つ目、働けない人達をどうしたらいいか!」


 働きたくても働けないのには理由があるはずだ。


 身体的な問題や精神的な問題、経済的な問題、立地的な問題……数えたらキリがなさそうだ。


「はい!」


「クロウくん、どうぞ!」


「全く動けない人以外で多少動けるなら、うちで『瓶』の制作なら簡単に行えるはずだし、ある程度歩ける人なら各町の『リリーの草』集めでもいいかも知れないかな?」


「『リリーの草』なら定期的に採らないといけないから町の奉仕にもなって一石二鳥だね」


「うん! あと僕的にはそれぞれの町の『清掃員』を雇いたい」


「「「「「「『清掃員』??」」」」」」


 皆、首を傾げた。


「うん、町の清掃って、住民達が行っているけど、その負担を少しでも減らせられたらいいんじゃないかなと思ったの、それに清掃員は給金を得て、住民達は掃除の負担が減れば、お互いに良いかなと思って」


「クロウくん、それはとても良い案だわ。是非やりましょう」



 ダグラスさんに二件目と三件目も伝えた。


 すぐにアカバネ商会では『調査隊』を結成し、各町では『清掃員』を募集した。


 身体的及び精神的な問題を抱えている人達にも『瓶』制作の募集を掛けた。


 この方達には自宅で働いて貰い、毎日夕方頃に出来上がった『瓶』を受け取りに行く予定だ。


 彼らは『補助従業員』と呼ぶ事になった。


 給金は副従業員よりは少なめだが、前日買いたい物を伝えておくと、次の日の夕方の『瓶』回収時に持ってくる配達サービスが付いているのでとても人気になった。



 これを機に『補助従業員』だけでなく、老人や色々問題があって動けない方々からも、支払いを多めにするからうちにも配達してくれと言われたので、『配達隊』が出来上がった。

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