132.生まれ持ったスキル
「もう全部話しますから!」
ようやくセレナお姉ちゃんから解放されたリサが大きく溜息を吐いていた。
「そもそも、私のどこが可笑しかったの? セレナ先輩」
「昨日、あれだけ狩りをしてて、気づかない方がおかしいのよ。アリサちゃん、貴方が倒した
「うっ」
ディアナちゃんも「うんうん」と頷いている。
「あれから分かれて狩りをしたとき、私達は中型魔石なんて一つも落ちなかったのよ?」
「うっ」
「えっ!? そうだったの?」
全然気づかなかった……。
「クロウはそんなの当たり前だみたいな顔してるからね」
「…………」
むむっ、反論できない。
そして、リサがとんでもない事を語り出した。
「実はね、私生まれたとき、既にレジェンドスキルが二つあったの」
あ、僕と一緒だ。
「これは職能スキルではなくて、私個人が持って生まれたスキルで――」
あれ? そう言えば、僕もそうだったね……。
レジェンドスキル『#&$%』と『#!$&』ってアザトース専用スキルではなくて、僕自身のスキルなのか?
「その一つが『
うわ……何て凄いスキルなんだ……。
だから一階にも関わらず、倒したゴーレム達から中型魔石が確実に落ちていたのね。
セレナお姉ちゃんとディアナも納得したようで、頷いている。
「それと……もう一つはね、『見聞ノ神』なんだけど……効果が二つあって、知識と思ったモノをずっと記憶し続けられるの」
「ああ、だからそんなに博識なのか」
「うん。お母さんが仕事の時には、帝都にある図書館で端から端まで本読んでいたからね~」
凄く納得した。
リサってこの世界の事、あまりにも詳しかったからね。
スキルも相まって、本を読むのが元々好きだったからどんどん吸収していたのね。
「そして、もう一つの効果はね、獲得経験値が百倍になるの」
「百倍!?」×3
それって物凄くレベルが早く上がるってことだよね?
「だから、昨日、あのダンジョンでゴーレムを百体くらい倒したけど、あれで実質一万体倒したのと同じなの」
「桁が大きすぎて良く分からないね」
「えっと、くろにぃが使った魔法と同じくらい……と言えば分かるかな?」
「ええ! クロウ様の氷属性魔法と同じくらいの範囲でモンスターを倒した量と」
「うん」
何だか僕の事で納得するディアナ。
「それで今レベルはどのくらいになっているの?」
「はい、今は六十になっています」
六十!?
滅茶苦茶高い!
僕はまだ五十八なんだけど……。
「凄いわ、私もまだ三十しかなってないから、頑張らないと!」
「そうですね! 私もお二人に負けないよう頑張らないと!」
「ふぅ、これで一応説明終わったけど、あと質問はあるかな?」
「あ、アリサちゃんって本当に『魔法使い』なの?」
「ううっ」
これだけ凄いスキルが揃っているんだ……只の『魔法使い』というのは無理があるよね。
「ち……違うかな……」
「やっぱり! でも魔法が使えるから……、『賢者』かな?」
「確かに火属性魔法を使っているし、そうかもしれないですね」
リサの職能って発表しづらいよね……。
僕はまだ『良く分からない職能』くらいで済むけど、リサの職能はそうはいかないからね。
「私の職能……『聖女』です……」
「ええええ!?」×2
二人とも凄く驚いている。
魔法職だと思っちゃうよね。
「お母さんとくろにぃにしか話してないけど、私『聖女』なんだよね」
「あ~、そう言えば、『聖女』ってさ、何で火属性魔法使えるの?」
以前から疑問だった。
『聖女』と言えば回復魔法の特別職能だし、回復魔法とか光属性魔法とか使いそうだからだ。
「それはね、『聖女』のスキル『聖なる炎』というのがあって、そのスキルって火属性魔法と光属性魔法がないと使えないみたいで火属性魔法が使えるの」
「へえー、そうだったんだ。その『聖なる炎』ってどんなスキルなの?」
「『聖なる炎』は言葉通りで、光属性を持った炎を出すの、でも闇属性にしか効かなくて、味方には回復の効果があるから集団戦では便利そうね」
「『聖女』らしいスキルだね」
「うん、だってこれ『聖女』専用技だからね」
あ、『聖女』も専用技ってあるのね。
だからリサって、技の事を言われても不思議がっていなかったのね。
それと『聖女』は特別で、回復魔法全てが使える。
これはある意味、専用技のようなモノだ。
「まさか、伝説の『聖女』様がこんな身近にいるなんて……」
「セレナ先輩……、私は確かに『聖女』だけど、そんなつもり一切ないです……」
「え? ないの? どうして?」
意外な表情をしたセレナお姉ちゃん。
「だって『聖女』って色々救うモノでしょう? 私、人って嫌いだから救いたくないの」
ええええ!?
これを聞いたら、教会の信者達みんな泣いちゃいそうだ。
「前世ならともかく、今世でも誰も助けてくれなかったのよ? なのに、こちらからばかり助けなくちゃいけないって、凄く嫌なの」
「ふむ……」
「勿論、力を持った者の責務というのは分かるんだけどね……私はこのままくろにぃの傍がいいかな」
「あ、それは私もね」
「私もこの先ずっとクロウ様の傍にいます」
何か話の趣旨が変わった気がするけど、まあいいか。
「なので、私はこれからも、この力を公表するつもりもないし、仮に公表しても誰かに言われて人々を救うなんてしないかな」
リサは人嫌いのままのようだった。
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