開通編

128.開通

「こちらは最後のダンジョン『ウリエルのダンジョン』です!」


 ヘレナが表情を変えず、ドヤ顔っぽい声で話してくれた。


「凄い!! ん? 最後ってどういう事?」


「ハイ! 世界に存在するダンジョンは八つまでです。ここが最後の八つ目のダンジョンになります!」


 そうだったのか!


 と言うか、ダンジョンに存在する数なんてあるんだね。


「一年前、『アカバネ島』の魔導島点数が一定値を超えたので、ダンジョン開通が可能となりました。最後の一枠だったので急ぎました!」


「そっか! だからあんなに急いだのね。ヘレナありがとうね」


 僕はそう言いながら、ヘレナの頭を撫でてあげた。


 表情は変わらないが、とても喜んでくれていた。


「ねえ、ヘレナちゃん? さっきダンジョンは全部で八つあると言っていたけど、ここを入れても世界には六つしかないよ?」


 そう言えばそうだ、帝国に二つ、グランセイル王国に二つ、フルート王国に一つのはずだ。


 ここを入れても六つしかない。


「いえ、その他にも二つダンジョンが展開されております。何処にあるかまでは存じませんが……」


「そっか、もしかしたら、まだ見つかってない場所にあるのかも知れないわね」


 今度機会があれば、探してみようかな?



「それはそうと、折角だからこのダンジョンを攻略しつつ、アリサちゃんのレベル上げもしちゃおう」


「おぉ! それがいいね」


「はい、ここなら私達だけですので、効率も良いと思います」


「あ……あはは……そんなに急がなくても……」


 リサがひきつった表情になっていた。


「ではまず一階から回ってみよう!」


 念のために、精霊眼を常に全開にしよう。


 僕達以外は誰もいないね。


 それもそうか、そうでないと可笑しいよね。




「うん、この階には誰もいないし、どんどん進もう!」


 僕がそう話すとセレナお姉ちゃんとディアナが頷いた。


 しかし――


「えっ、くろにぃ? 何で分かるの?」


「えっ、探索魔法使ってるから……?」


 厳密には『精霊眼』だけどね。


 そう言えば『精霊眼』って、既に二回くらいパワーアップしていたっけ……


 この先もパワーアップする事あるのかな?


「そんな便利な魔法あるんだ……」


「アリサちゃん、クロウの事だもの、何でも出来るから」


 えっ、セレナお姉ちゃん?? 僕は何でもはできないよ??


「そうだよアリサちゃん、クロウ様だから」


 ディアナまで……。




 一階を歩いて最初のモンスターに出会えた。


「ゴーレムかな?」


「ゴーレムだね」


 目の前にはゴーレムらしき土の人形が歩いていた。


「ふ~ん、もしかして、ここのダンジョンって、ゴーレムのダンジョンかも知れないね」


 各ダンジョンでは属性や種族等が統一されているという。


 僕はルシファーのダンジョンしか行ったことがないから分からないけど、他は何かしら必ず一つ統一性があるようだ。


「しかし……遅いわ」


「うん、遠くから攻撃したら簡単に倒せそう」


「でもゴーレムだから堅いかも知れないね」


 セレナお姉ちゃん達が分析してくれた。


「それじゃ、私が試しに魔法撃って見てもいい?」


「いいよ! 元々アリサちゃんのレベルを上げたいし、初撃はお願いね!」


「はい! 火の神よ! 貴方の力を我に貸し与えたえ! ファイアランス!」


 リサの詠唱と共に、1m程の槍の形をした炎の槍が出来上がった。


 魔法名と共に、炎の槍を放った。



 ドバ――――ン



 炎の槍がゴーレムにぶつかり、ゴーレムが一瞬で消えた。


「え?」×4


 あれ? ゴーレムさん弱くない?


「ま、まだ一階だし、一撃なのは良いね」


「う、うん」


 本来ゴーレムって魔法耐性高いはずなんだけどな……。



 そして消えたゴーレムの元には中型の魔石が落ちていた。


「あっ……、はぁ」


 リサが大きく溜息を吐いた。


 セレナお姉ちゃんとディアナは魔石を拾いに行っていたので、溜息は聞こえていないと思う。


「リサ? どうしたの?」


「うん……、後で話すね?」


「分かった、無理はしないでね?」


「ありがとう……でも、もうやってしまったから……」


 ちょっと疲れた表情をしたリサだった。



 それから一階を歩いてみた。


 一階は、先程の土型ゴーレムしかいなかった。


 動きが殆ど無く――というか、ほぼ棒立ちだった。


 あれ? これって、もしかして……子供でも倒せるんじゃ……?


「ねぇ、クロウ? ちょっと試したい事あるんだけどいい?」


「ん? どうしたの? セレナお姉ちゃん」


 セレナお姉ちゃんが悪巧みの顔になった。



 セレナお姉ちゃんは、おもむろに落ちていた小石を拾った。


 そして棒立ちでゴーレムに投げた。


 石がゴーレムに当たった瞬間―――


 ブシュ――


 ゴーレムが消えた。



 お姉ちゃんの腕力凄いね~。


「ねえ、クロウ? 今とても失礼な事思ってない?」


「えっ!? 思ってないよ! 小石一つでゴーレム倒したお姉ちゃん凄いな~~しか思ってないよ!」


「ふ~ん」


 そのジト目やめてください! ごめんなさい!


「ねえ、アリサちゃん、そこの小石をあのゴーレムに投げてみて」


「え? 分かりました」


「出来るだけ弱くね、弱く」


「?」


 リサが小石を拾い、軽く投げた。


 そして小石がゴーレムに当たった。


 ブシュ――


 ゴーレムが消えた。


「やっぱり……」


「えええええ!?」×3


 驚いている僕とリサとディアナを横に、セレナお姉ちゃんだけは何か納得したように頷いていた。

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