110.ファッションショー
◆ナターシャとアリサ◆
ナターシャはアリサを連れて自分の衣裳部屋へ連れ込んだ。
「凄い!! こんなに綺麗な服が一杯!! こんなキラキラしている服初めて見ます!」
「ふふっ、全部『ライブ』の衣装よ?」
「あ……やっぱり『ライブ』あるんですね?」
「ええ、既に十二回目が終わってね、再来月には十三回目のライブがあるわ。ライブの日って『アカバネ祭』って言って、王国全土で祭りになるわよ?」
「えええ!? 本当ですか? 是非見てみたい……」
「う~ん、そうね、今回は見る
「え? あ……、はい?」
ふふっ、と笑うナターシャは豪華な衣装を何着か素早く持ってきた。
「ほらほら、アリサちゃん、この衣装着てみて!」
「えっ!? いいんですか? こんな高いモノ――」
「ええ、問題ないわ。私、こう見えても凄いお金持ちなんだから。何なら衣装はクロウくんにおねだりしたら、何着でも買ってくれるから」
「うわ……くろにぃってナターシャさんに甘いんですね……」
「ふふっ、そうかも知れないわ。それにしても……くろにぃ……ね」
何やら不敵な笑みをしたナターシャ。
「それはそうと早く着替えてみて! こっちの白いドレスなんか似合うんじゃないかしら」
それからナターシャに勧められるがままに衣装を着替えさせられたアリサだった。
数分後、試着を終えたアリサは、それはそれは綺麗で清楚感のある白いドレスが、彼女の美しさを更に引き立ててより、絶世の美女になっていた。
「うん! やっぱり! 私の目は間違いないわ! 凄く似合うわ!」
「えっ!? あはは、これは服が綺麗ですからね。何だかお姫様になったみたいです」
「ふふっ、お姫様ね~いいわね、よし、そのままおいで」
「えっ!? あれ? ナターシャさん? 何処へ?」
そしてアリサはナターシャに連れられまた何処かへ向った。
◇
先程、ナターシャお姉ちゃんから『遠話』で、
【クロウくん? ちょっとステージ練習場に来てくれる?】
と連絡があったので、セシリアさんとステージ練習場にやってきた。
道中、学園が終わったようで、セレナお姉ちゃんも合流して、四人でステージ練習場に向った。
「えっと、確か……ナターシャお姉ちゃんがここで待ち合わせだと……?」
そう呟いた時、周りの明かりが消えた。
そしてステージ上に明かりが点灯した。
これはナターシャお姉ちゃんが考えた、より一層ステージだけを華やかに見せるための方法だった。
前世のライトアップと同じ考えと言うか……これライトアップだね。
流石はナターシャお姉ちゃん、目の付け所が素晴らしい。
それから後ろから一人の女性が出て来た。
白いドレスを着て、少し恥ずかしそうにステージの中央に立った。
彼女は――リサだった。
それはもう――美しいという言葉すら失礼になるのではないかと思えるくらい美しかった。
「えーっと、くろにぃ? どう? 私似合う?」
僕達しかいない練習場に、彼女の声が綺麗に響いた。
「うん! 凄く似合うよ! 物凄く美しい!」
「そっか! えへへ、ありがとう!」
それから、アリサが裏に消えて、次はナターシャお姉ちゃんが現れた。
ナターシャお姉ちゃんは赤いドレスを着ており、美しさの中に歴戦のアイドルらしく、色っぽい雰囲気を出していた。
「ナターシャお姉ちゃん! 凄く色っぽくて綺麗だよ!」
僕の言葉にふふっと笑い、投げキスをしてくれた。
もうそれだけでドキドキがとまらなかった。
そして、ナターシャお姉ちゃんはステージをぐるっと歩き、時折全身をくるりと回し衣装を見せてくれた。
そんなナターシャお姉ちゃんに見惚れて、僕は気づいてなかった……。
ナターシャお姉ちゃんが裏に消えると、今度はセレナお姉ちゃんが出て来た。
えええええ!?
セレナお姉ちゃん!? いつの間に!?
セレナお姉ちゃんは青色のドレスを着ていた。
お姉ちゃんの綺麗な黒髪が青色ドレスで強調されており、美しい碧眼とドレスの色は相まって言葉に言い表せられない程美しかった。
元々、綺麗な顔立ちは服装により更に強調されていた。
アリサとナターシャお姉ちゃんとはまた違う美しさだ。
ナターシャお姉ちゃんは女性らしい美しさ。
アリサは清楚で可愛らしい美しさ。
セレナお姉ちゃんは美形の美しさだった。
僕が気が遠くなる程の美しさに、言葉を失っていると、
「私には何も言ってくれないの?」
と目で言われた。
うん、そう伝わって来た。
「ごめん、セレナお姉ちゃん、――――天使みたい」
そう言うと、ご機嫌になり、セレナお姉ちゃんもナターシャお姉ちゃん同様にステージを回り、衣装を見せてくれた。
その姿にひたすら目が奪われた。
そしてセレナお姉ちゃんが裏に消えていった。
そこに今度はディアナが現れた。
ディアナは前世で言う、ゴシックなドレスだった。
真っ黒でカッコいいゴシックドレスだった。
獣人族の銀狼族らしく黒灰色尻尾と耳がドレスに引き立てられ、茶色の長い髪もドレスに相まって美しく光輝いていた。
「あ……あの、クロウ様……私はあまり綺麗ではありませんが……」
恥ずかしそうにディアナがそう話した。
でも、そんな事ない、確かに前者三名は何処か遠い夢のような美しさだけど、ディアナの美貌も素晴らしく、町を歩けば十人中十人は振り向く程に綺麗だ。
「ディアナ! とても似合ってるよ! ドレスすら目に入らないくらいに! とても綺麗だよ!」
そう話すと笑顔になった彼女は、ぺこりとお辞儀をして、ステージを回った。
意外だけど、凄い様になっていた。
実はディアナがこの中で一番上手なのでは? と思えた。
そんな彼女達に僕とセシリアさんは止める事なく、拍手を送った。
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