第69話 空も飛べるはず

 バレイント領の事業や領内各町の支店の運営も順調だ。


 バレイント領は田舎と言うだけあって、高品質の野菜や果物、食料を買取が主に進んだ。


 まだグランセイル王国では売り業はしていないので、購入した多くの食材も異次元空間に入れておく。


 グランセイル王国のシリコ村程の高級品ではないのも、返って安価で回せるのが良いところだ。


 あまりに高級品過ぎる物は買い手が限定されているからね。



 そんなこんなで季節は過ぎ、僕は7歳に、セレナお姉ちゃんは8歳になる年がやってきた。


 そしてこの年、僕が思う最も大きい事は……ライ兄ちゃんが遂に学園に入学する年なのだ。



 学園は王都ミュルスにあり、屋敷や家がある者は通うが、地方貴族は寮で暮らす事になる。


 入学は春の1月の上旬、10日に入学だ。


 そんなライ兄ちゃんは、入学準備で屋敷ともに大忙しだった。



 僕はそんなライ兄ちゃんに入学祝いを贈りたいと思っていた。


「ライ兄ちゃん! あと少しで入学だね!」


「そうだな、3年も屋敷を離れるんだな……」


「それでライ兄ちゃん? 何か欲しい物ない?」


 ライ兄ちゃんが首を傾げた。


「う~ん、屋敷のような便利な魔道具は欲しいけど…………『エアコン』が欲しいと言えば欲しいかな?」


「『エアコン』か……あれ魔道具じゃないからね」


「確かクロウの魔法だっけ?」


「うん。ライ兄ちゃんが入学まであと10日あるし……ちょっと作ってみようかな?」


「あはは……作るって、相変わらず簡単そうに言うんだね」


「最近色々作ったから、作れるかも知れない! ではさっそく行ってくるね!」


「あ、クロウ! …………あ、行っちゃった……入学まで10日しかないから、僕は今日で屋敷を出るんだけどな……大丈夫かな?」




 僕は早速『エアコン』作りに取り掛かった。


 箱に風属性魔法を固定させて、箱の左右に氷属性魔法と火属性魔法を固定した魔石を嵌める。


 よし、これで『エアコン』が完成だ!


 うん! 氷属性魔法の方を押すと涼しい風が、火属性魔法の方を押すと温かい風が出る。



 その時、丁度お姉ちゃんが部屋に入って来た。


「クロウ! 今度は何を作っているの?」


「あ、お姉ちゃん! 丁度良い所に!」


「うん?」


「これを見て! 『エアコン』の魔道具だよ!」


「へぇー、今度はあの魔法を魔道具にしたんだね」


「これでライ兄ちゃんに『エアコン』を贈るんだ~、お姉ちゃんも一緒にライ兄ちゃんとこに行こう」


「え? ……クロウ? ライ兄ちゃんはもういないよ?」


「へ?」


 あれ? さっきまで一緒に話してたのライ兄ちゃんだよね?


「ライ兄ちゃんは学園があるから、もう出発したよ?」


「ええええ!?」


 僕はあまりの衝撃に気を失ってしまった。


 ライ兄ちゃんごめんよ……見送りも出来なくて……。



 後から知ったけど、ライ兄ちゃんは僕の研究の邪魔はしたくないから呼ばずに出発したそうだった。




 ◇




 次の日――。


「う……うぅ…………ライ兄ちゃん……うぅ」


「もう! いい加減に泣かないの!」


 僕は今日も衝撃で落ち込んでいた。


「そんなに心配なら王都に飛んで行って渡せばいいじゃん」


 あれ? そう言えばそうだね?


「そっか! 飛んで行けばいいのか!」


「自分の魔法でしょう?」


 お姉ちゃんからジト目で見られた。


 ライ兄ちゃんを見送りも出来ずに研究に没頭した衝撃で色々忘れていた……。


「そうだね! んで会いに行けばいいのか!」


「うん、んで会いに行けばいいのよ」


「そっか! お姉ちゃんありがとう! ちょっとんでくる!」


 そう言い、僕は窓を全開に開けた。


 そうだ、今こそ――。


 僕は飛べそうだ!


 まず、風属性魔法で自分の周りに使ってみる。


 弱過ぎて全然飛ばなかった。


「え? 飛ぶってその飛ぶなの?」


 後ろからお姉ちゃんの呆れた声が聞こえる。


 しかし、思い立ったが吉日だ!



 想像イメージするのは……突風だ。


 強くて速い風に吹かれたら飛べるだろうって安直に考えた。


 そして窓に立って、後ろから前方へ、下から上で二重・・で使用してみた。


 そして、僕は空を飛んだ。



 - スキル『飛行魔法』を獲得しました。-



 あ……ちゃんと飛ぶための魔法って存在していたのね……。


 そのまま僕は空を飛び駆け抜けた。




 ◇




 ◆ライフリット・エクシア◆


 僕は学園に入学のため、馬車で王都へ向かっていた。


 弟のクロウくんは『転移魔法』が使えるようで、王都へも瞬時に行けるみたいだけど、僕は使えないから馬車での移動が必要だ。


 そんな中――――。



 ――――「ライ……にぃ……ん 」



 うん、どこからクロウくんの声が聞こえた気かした。


 恐らく幻聴だろう。


 何せ僕は走ってる馬車の中だからね。



 ――――「ライ――にぃ――ゃん!」



 うん? …………?



 ――――「ライ兄ちゃん!!!」



 えええええ?


 どこからかクロウくんの声が聞こえる。


 これ幻聴だよね? ね?



「ライ兄ちゃん!!」


「う……うわぁぁぁぁ!!!」


 馬車の窓にクロウくんが現れた。


 だって……この馬車走ってる馬車なんですけど?


 しかも窓に現れるってどういう事?


「ライ兄ちゃん! 『エアコン』作ってて見送り出来なくてごめんなさい!」


 クロウくんが謝って来た。


「い、いや……そこじゃないだろうクロウ……」


「え? どうしたの?」


「だって……走ってる馬車にしかも何で向きで……え??」


「あ、これはお兄ちゃんを追いかけるために空を飛ぼうとしたら飛べたの!」


「空を飛……えええええ!?」


 僕の弟は……本当に規格外です。





 名前 クロウティア・エクシア

 年齢 7歳

 性別 男

 種族 人族

 職能 アザトース

 レベル 49

 HP 590/590

 MP 45000/45000

 力 490×10=4900

 速 490×10=4900

 器用さ 490×10=4900

 耐 490×50=24500

 魔力 490×300=147000+5000

 精神 490×300=147000


 『従魔』

 アルティメットスライム『ソフィア』


 『レジェンドスキル』

  #&$% 、#!$&、異次元空間魔法、精霊眼、神獣の加護


 『魔法系統スキル』

  中級回復魔法、火属性魔法、水属性魔法、風属性魔法、土属性魔法、氷属性魔法、雷属性魔法、霧属性魔法、木属性魔法、光属性魔法、闇属性魔法、転移魔法、次元魔法、飛行魔法


 『スキル』

 言語能力、睡眠無効、痛覚無効、多重魔法発動、魔力超上昇、魔法無限調整、魔力高速回復、魔力超強化、魔法高速演算、MP消費超軽減、自動魔法、影封印、超手加減、自動収集

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