第70話 エアコンキューブ

「それでわざわざ飛んで追いかけてくれたのか」


「うん!」


 僕は笑顔でそう答える。


 ライ兄ちゃんが乗っていた馬車にそのまま飛び乗りした。


 もちろん『エアコン』を渡すのと、ちゃんと『行ってらっしゃい』って挨拶がしたかった。


 だって……僕の大事な家族なんだから。



「それでこれが『エアコン』だよ!」


 僕は『エアコン』の箱を渡した。


「わざわざありがとうね!」


「ううん!」


 ライ兄ちゃんが嬉しそうに『エアコン』を触っている。


 と思っていたら、


「ねぇ、クロウくん?」


「なに? ライ兄ちゃん」


「…………これってどうやってめるの?」


「え? ……止める必要あるの?」


 『エアコン』を止めるなんて、一度も考えた事がなかった。


 だって便利だからずっと掛けてた方が良いと思っていたからだ。


「だって……冷たいか暖かいしか選べないんでしょう?」


「……ぅん」


「寒くなったり、暑くなったら消したい時だってあるんじゃない? 家の『エアコン』はいつもクロウが調整してくれていたんでしょう?」


「…………ぅん」


 落ち込んでしまった僕の頭にライ兄ちゃんの手が触れた。


「でも、ありがとうなクロウ、わざわざ僕のために頑張って作ってくれて、ここまで来てくれて」


 うぅ……ライ兄ちゃん……。


「正直、馬車で移動で退屈だったから助かったよ~」


 馬車には旅用に本が山積みになっている。


「それなら『エアコン』を付け消し出来るように改造するよ!」


「それはありがたいけど……まあクロウだとすぐ直せそうだもんな」


 早速改造に取り掛かる。


 この箱に固定した風属性魔法……。


 単純に切る事は可能だ。


 しかし、強弱の調整が出来ない。


 僕の『魔法固定』って基本的には一定発動だから。


 異次元空間とセットで作った物ならば色々可能なんだけど、『エアコン』となると難しい。


「と言うか、クロウくん……『魔道具』として作ればいいんじゃないの?」


「『魔道具』?」


「うん。クロウくんが作った物って、以前厳密には『魔道具』じゃないって言ってたよね?」


「うん、魔石を使わず僕の魔法を……あ、魔石」


 そもそも『魔道具』って、魔道具師がスキル『魔道具作成』作るよね。


 う~ん……スキル『魔道具作成』は持っていないので作るのは出来なさそうだ。


「『魔道具』は専用スキルがないと作れないみたいだから僕には作れないや」


「『魔道具』は『魔道具師』の職能を持った者しか作れないらしいもんね」


「ん~いっそのこと『エアコン』を囲ってしまうか!」


 『エアコン』箱を覆う箱をもう一つ作り、『エアコン』箱を入れる。


 外箱の扉の開け具合で出てくる風の量を決められる仕組みだ。


「完成! 『エアコンキューブ』だよ!」


「凄いね……そんなに簡単に作れるんだ」


「正直無理矢理作った感じだけどね……はい、ライ兄ちゃん!」


「うん! ありがとう! クロウくん」


 そして僕は屋敷へと帰って来た。




 次の日――。


 ダグラスさんに『エアコンキューブ』の事を話したら、売って欲しい方々は既にたくさんいるとの事だ。


 僕の作った『魔道具』は魔石がいらないので『無限魔道具』と命名するそうだ。


 そして、その『無限魔道具』を、この先どうするかは商会会議で考えて良い案が出たら商品にするかも知れないとの事だ。


 従魔のソフィアちゃんに『エアコンキューブ』も大量に作って貰う事にした。


 ソフィアから全ての『無限魔道具』に『分解した場合魔法を消す』罠も掛けられると言われ、もし他人に渡って分解された場合、僕に被害が及ぶかも知れないからの対策のようだ。



 その後、お姉ちゃんの襲来があり、「私も飛びたい!」と言われたので、『飛行魔法』を試して見る事にした。


 お姉ちゃんをお姫様抱っこして『飛行魔法』を使う。


 初めてお姉ちゃんと空を飛び回った。


 まるで人が…………。


 人は全く見えない、高く飛ぶと景色がこういう風に見えるんだなと感動した。


 お姉ちゃんも物凄く目がキラキラして景色に見入っている。


 それにしてもお姫様抱っこしているからお姉ちゃんが近い。



 空を飛んでいて思ったのは、風が強いので声が全然届かない。


 なので空では基本『遠話』を使う事にした。


【ねぇクロウ! あっちの海側に行ってみようよ!】


【うん! 分かった! ちょっと早めに飛ぶね!】


 それから僕達は大陸の南側を目指して飛んで向かう。


 何となくシリコ村が見えた。


 その南の山脈を越えた先に……海がある。


 凄い……!


 海が果てしなく続いている!


 南側に別な大陸があるかなと思ったけど、全くないね。


【クロウ、海って果てしなく流れているね~】


【うん!】


 その時、以前ギムレットさんから手に入れた『宝石』が光り出した。


 異次元空間に入れてたはずなのに、異次元空間で物凄く光っている。


 もしかして、異次元空間から出して欲しいのかな?


 異次元空間から『宝石』を取り出してみる。


 『宝石』はますます光りを放った。

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