第49話 何処にでも行けるあれ

 困った。


 アカバネ商会の事を広めるためにやっていたのに、アカバネ商会の文字は一切なく、『プラチナエンジェル』『天使ナターシャ』『ライブ』の文字だけが記事となり、王国中に広まっていた。


 この世界アルテナの記事を扱っているのは唯一の新聞だけだ。


 ただ、伝達速度が遅いので、前世の新聞と比べるととても精度の低いものになっている。


 それでも、遠くの情報を得れる唯一の情報源なので、それはもう飛ぶように売れる。



 そして数日後、僕の前にある新聞には、貿易街ホルデニアにて『ライブ』という祭りが行われた。可憐な『天使ナターシャ』が踊り歌う『ライブ』という祭りは貿易街ホルデニア史上最大の盛り上がりを見せた。


 と書いてあった。


 アカバネ商会の名前が一文字も入ってないじゃないか…………。




 暫くして、セレナお姉ちゃんが飛んできた。


「クロウ! これはどういう事なの!?」


 お姉ちゃんが手に持っていたのは今朝の新聞だ。


 見せているのは、『ライブ』の事だね。


「お姉ちゃん? いきなりどうしたの?」


「この新聞に数日前『ライブ』という祭りが行われたって書いてあるの」


「うん」


「それで、クロウ? これはどういう事?」


「どういう事って……?」


「だって、これクロウがやった事なんでしょう?」


 えええええ!?


 お姉ちゃん、何でそれが分かったの?


 驚いている僕を見たお姉ちゃんは「やっぱりそうじゃない……」って呟いた。


 うっ……感情がすぐ顔に出るからスキル『感情無効』があれば使いたいくらいだ。


 それからアカバネ商会の事を洗いざらいお姉ちゃんに話した。



「私も行きたい」


「えー、一週間以上かかるよ?」


「何とかしなさい! 転移魔法使えるんでしょう!?」


 そんな無茶な……。


「だって、飛べるのは僕一人しか出来ないんだもん」


「むむっ! いつもだと箱から色々出してるじゃない。箱に入って行くとか出来ないの?」


「え?」


 箱?


 でもあれは異次元空間だから出来るのであって……。


 あ……闇の手で一瞬封印して……って出来なくもないけど、何となくお姉ちゃんに闇の手は付けたくないしな…………。


「もうー、早く何とか作ってよね!? 扉でも開けると向こうに行けるとか出来ないのかしら」


 え? 扉?


 扉を開けると……向こうの世界?


 何となく自分の部屋の扉を開けてみる。


 扉を開けると向こうには廊下が広がっている。


 確かに言われてみれば、扉の内側と外側って別世界見たいに見えるよね。


 つまり、向こうとこちらを扉一枚で区切っているだけか。



 閃いた僕は魔法訓練所に来て土属性魔法で適当な大きさの扉を作る。


 このままだと、ただの土の板のままなのでしっかりふちも作る。


 おお、ちゃんと扉になってる。


 扉を開けると勿論魔法訓練所の向こうのままだ。


 ではここで扉に転移魔法を固定してみよう。


 転移魔法を固定してみる。


 しかし結果は失敗。


 何故なら転移魔法は飛ばすモノじゃなくて、飛ぶモノだからだ。


 つまり、これを使うと扉がそのまま飛んでしまうのだ。


 その時、扉に転移魔法を『固定』しようとした事によって……。



 - スキル『次元魔法』を獲得しました。-



 え? 『次元魔法』って何? 僕、異次元空間魔法ならあるけど…………次元魔法って空間の文字は入っていないな。



 『次元魔法』

 現実世界の部分と部分を繋げる事が出来る魔法。



 ますます分からない……。



「……現実世界を繋げるってなんだ?」


 そんな事をボソっと呟いた。


「繋げるってくっ付けるんでしょう? どうしたの? クロウ」


 え? くっ付ける? というかお姉ちゃんまだいたのね?


 でもくっ付けるって何となく分かった気がする。


「うん、分かった。ちょっと試そう、お姉ちゃん僕ちょっと向こうに飛ぶね」


 と言い、支店へやってきた。


 支店には僕専用の総帥室という部屋が割り当てられている。


 総帥室は僕の魔法で鍵がかかっていて僕以外は誰も入れない。


 いつも飛んでくる際はこの部屋に飛んできているのだ。


 さっそくここに魔法訓練所と同じ扉を作る。


 そして『次元魔法』を固定した。


 仮名を『屋敷~ホルデニア支店』と名付けてみる。


 また魔法訓練所に戻り、今度はこちらの扉に同じ魔法を固定した。


 そして…………扉を開けた。










 何とその先の景色が変わっている!


 今立っている場所は魔法訓練所だ。


 でも扉の向こうに見えるのはホルデニア支店の総帥室が見える。


「え!? クロウ!? 扉の向こうが変わったわよ!?」


 入ろうとするお姉ちゃんを止め、まだ危ないかも知れないから僕から入ると話し、向こうへ恐る恐る入った。




 目の前に広がっているのは、アカバネ商会の総帥室で間違いない。


 今度は総帥室から扉の向こうを見ると、魔法訓練所が見える。


 もちろんお姉ちゃんも見えるし、声も聞こえた。


 怖いのでもう一度向こうに行き、お姉ちゃんと手を繋いで入ってみる。


 ――――ちゃんと通れた!




 この日初めて『何処にでも行ける扉』こと『次元扉』を作れた。




 お姉ちゃんが今すぐ町に出たいと言ったけど、あまりにも急に行くとみなさんが吃驚びっくりするから、明日朝みなさんに紹介すると言い、お姉ちゃんをなだめた。


 お姉ちゃんは渋々了解し、一度屋敷に帰った。


 それと僕が名前を伏せていて、名前は『クロウ』ってしか名乗ってないし、皆からはオーナーと呼ばれているから、お姉ちゃんにもそのつもりでいてくれと言ったら、「なら私も『セレナ』でいいわ」と言ってくれた。




 ◇




 ◆ナターシャ・ミリオン◆


 今日の朝礼が始まって、クロウくんがとある女の子を連れて来た。


 しかもご丁寧に手を繋いでいる。


 ちょっと悔しい……。


 でもよく見ると、二人には共通点が多い。


 美しい黒い髪に可愛らしい顔立ちもそっくりで、目の色も碧眼だ。


「久しぶりに朝礼に出ますね。今日はみなさんに紹介したい人がいるので来ました。こちらは僕の姉のセレナお姉ちゃんです。時々こちらに遊びに来ると思いますが、宜しくお願いします」


「よろしくお願いします」


 ペコリと挨拶をする彼女――――あぁ、クロウくんの実姉だったのね。


 それから朝礼が終わると彼女が私のところに来て、「『アイドル』のナターシャさんですか!?」って言ってきたので、そうだよと答えると握手してくださいと言われたからぎゅーっと抱きしめてしまったわ。


 だって、クロウくんに似てて可愛いんですもの。


 セレナちゃんもぎゅーっとしてくれてそれはとても幸せな一日になったわ。





 名前 クロウティア・エクシア

 年齢 6歳

 性別 男

 種族 人族

 職能 アザトース

 レベル 49

 HP 520/520

 MP 45000/45000

 力 490×10=4900

 速 490×10=4900

 器用さ 490×10=4900

 耐 490×50=24500

 魔力 490×300=147000+5000

 精神 490×300=147000


 『レジェンドスキル』

  #&$% 、#!$&、異次元空間魔法、精霊眼、神獣の加護


 『魔法系統スキル』

  中級回復魔法、火属性魔法、水属性魔法、風属性魔法、土属性魔法、氷属性魔法、雷属性魔法、霧属性魔法、木属性魔法、光属性魔法、闇属性魔法、転移魔法、次元魔法


 『スキル』

 言語能力、睡眠無効、痛覚無効、多重魔法発動、魔力超上昇、魔法無限調整、魔力高速回復、魔力超強化、魔法高速演算、MP消費超軽減、自動魔法、影封印、超手加減、自動収集

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