第16話 冒険者ギルド
「サディスさん! 昨日教えてくれた森の向こうの街って、誰が管理しているんですか?」
「港街セベジアですかね? あの街でしたら、メリッド子爵様ですね」
「そのメリッド子爵はどんな方なんですか?」
「そうですね。多能の才がお有りなのですが、少々現実離れした思想をお持ちの方ですかね」
「現実離れ……ですか?」
「えぇ、周りの人がみな自分と同じくらいには多能だと思っていらっしゃるとか」
早速港街セベジアから戻り、執事のサディスさんにあの街の貴族様を調べる事にした。
中々癖のある方なのかも知れない。
しかし、先程出逢った平民一家は貴族様の無茶ぶりのせいでああなったと言っていた。
解決になるかは分からないけど、お母さんに相談してみる事にした。
「お母さん」
「ん? どうしたの?」
「実は――――セベジアという街で、貴族様の無茶な要求をして、大怪我を負った人達がたくさん出たって聞いて…………」
「えっ!? それ本当なの? 何も連絡はないわよ?」
「だけど、大怪我でもう働けなくなった人がいるそうだよ?」
「それは大変ね…………ねぇクロウくん、その話し本当なんだよね?」
お母さんが真っすぐ僕の目を見てくる。
「はい、間違いないです!」
「分かったわ、まず怪我人が優先ね、今すぐ向かわなくちゃ」
そう言って、お母さんは足早に準備を整え港街セベジアへ急行するのであった。
その二日後、港街セベジアに現われたフローラ・エクシアはこの度大怪我を負った人達を回復して回るのであった。
そして、この件の発端となった子爵は自分の非を認めて、各自へ謝罪及び報償等行ったという。
もともと人徳はあるのにたまに無茶ぶりな依頼をするのが玉に瑕という子爵であった。
「サディスさん。魔法の訓練でおすすめな方法はありませんか?」
「そうですね…………高い職能を既にお持ちですから、次は実戦でいかがですか?」
「じっせん?」
「はい、例えば野生のモンスターを倒す事ですね」
「もんすたぁ」
「モンスターを倒す事にはメリットがあります。まず戦いに実戦経験が一番大事だからでございます」
「じっせんけいけん」
「モンスターも人も戦いとなりますと、勝つために卑怯な手も使います。たった一瞬で生死が決まりますから、みな生きるために必死です。それは実戦でしか経験出来ないので、とても大事なのです」
戦いか…………。
「そして、モンスターを倒す事でレベルが上がります。レベルは職能と同等なくらい大事でございます」
「れべる!?」
「はい、ステータスボードの上段にレベルという項目がございます。レベルが上がるとそれぞれのステータスも上がり、職能によってはスキルを獲得する場合がございます」
「凄い! サディスさんありがとう! 僕レベル上げてくるよ!」
「お坊ちゃま。最初は護衛と一緒に向かわれた方が良いと思います。もし宜しければ冒険者に依頼してみましょう。彼らは実力もさることながら豊かな経験もありますから、良い助言を聞けるかも知れません」
「ぼうけんしゃ!? ぜひお願いします!」
「はい、かしこまりました。では今日依頼して参りますので、明日朝から狩りに行くように段取り致します」
「分かりました! サディスさんありがとう! お願いします!」
◇
◆エドイルラ街の冒険者ギルド◆
エクシア領の最大街のエドイルラの冒険者ギルド。
依頼も桁一つ多いので、多くの冒険者が在籍している。
現エクシア当主様は不正等に非常に厳しいので、在籍している冒険者はみんなが高い質の冒険者達だ。
冒険者はEランクからAランクまで存在しており、Aランク冒険者は高い信頼を得ることが出来る。
そのAランク冒険者になれる人はほんの一握り、大半はDランクCランクだ。
エドイルラ冒険者ギルドは今日も賑わっていた。
その中に執事サディスが現れる。
「ん? あれは――――サディス様!? いらっしゃいませ!」
受付嬢の眼鏡をした清楚な女性が驚きつつ声をかける。
「アーミアさん、お久しぶりです」
「あわわ、お久しぶりです」
受付嬢のアーミアはオロオロしながら挨拶を返す。
エクシア家執事のサディスは国内外でも有数の空間魔法使いであり、国内外で非常に有名である。
ことエクシア領ではさらに有名だ。
「一つ大至急依頼があるのですが、宜しいでしょうか?」
「ええ勿論です! すぐにギルドマスターをお呼びします!」
と言いアーミアは急いでバックヤードに走って行く。
数秒後、アーミアが帰ってきた。凄い早さである。
「はぁはぁ…………さ、サディス様。ギルド、マスターが、お待ち、して……はぁはぁ…………」
全力疾走したアーミアが息切れしている。
「ギルドマスターのところですね。ありがとうございます。では参ります」
サディアは慣れた仕草でアーミアに軽く会釈して、ギルドマスターの部屋へと歩いて行った。
トントントン
「どうぞー」
サディスが扉を開け部屋に入ると、四十代程のはみ出すかと言わんばかりの筋肉のナイスミドルな男性が待っていた。
「サディス殿、お久しぶりです」
「ガイア殿、お久しぶりでございます。いきなりの訪問失礼致します」
「ハハハ、わし達の仲ではありませんか! いつでもいらしてください。それはそうと今日は急用依頼があると?」
「はい、明日から三日間とあるお方のレベリングを依頼したいのです」
ガイアはニヤリと笑みをこぼす。
「なるほど…………それは急用ですね、分かりました。サディス殿程の方からの頼みでしたら――――それでどれ程の?」
「はい、まずこの件に関して参加者の皆様も勿論ですが、ガイア殿も『秘密の契約』を結んで頂きます」
「ほお…………『秘密の契約』をしかも私にもですが…………日程は明日からとなると…………分かりました。まず信頼出来る冒険者パーティーにも声掛けてみましょう。今日夕刻前にもう一度いらして頂けますか?」
「はい、かしこまりました。どうぞ宜しくお願いします。場所はルシファーのダンジョンでお願いします」
「ルシファーのダンジョンですか。これはお願い出来るパーティーもあのパーティーしかありませんね…………分かりました。サディス殿の顔をつぶすわけにもいきませんので、そちらはお任せください」
「ガイア殿。ありがとうございます。どうかこの件宜しくお願いします。ではまた夕刻にお邪魔致します」
サディスが一度帰って行く。
ガイアは小さい溜息を吐き、アーミアを呼んだ。
「ギルドマスター、お呼びですか?」
「アーミア、Aランクパーティー『スレイヤ』の連中を今すぐ緊急招集してくれ」
「緊急招集ですか!? もしかしてサディス様の件ですか?」
「うむ、確かにサディス殿の案件だか、この件に関しては他言無用だ。ギルドの信用にかけてな」
「っ!? 分かりました! ギルドの信用にかけて他言致しません! 緊急招集をすぐ行います!」
ギルドの信用にかけるというのは、機密中の機密であることを指す。
アーミアは急いでAランクパーティー『スレイヤ』の元に向かうのであった。
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