ゴジラ対ガメラ 大怪獣戦記 ——巨獣列島編——

イーグルプラス

第1話 「魔獣復活」

アメリカの水爆実験により生まれた怪獣王——ゴジラは1954年に初めて日本に上陸した。


自衛隊の攻撃をものともせず、戦後の復興を果たした東京を火の海に変えて侵攻を続けるゴジラ。だが、その魔獣を葬ったのは、一人の青年学者が開発した水中の酸素を破壊する化学兵器——オキシジェン・デストロイヤーだった。


オキシジェン・デストロイヤーの無数の泡に包まれ、肉体が崩壊してゆくゴジラ——。


全てが終わったかに見えた。


だが、このゴジラの出現が全ての始まりであった。


ゴジラの出現以来、日本各地で未知の巨大生物による災害が多発し、その被害はとどまるところを知らない。


日本政府はこれらの災害に有効に対処すべく、新たに「対特殊生物自衛隊」——通称「特生自衛隊」を創設し、対怪獣用の強力な兵器の開発を進めた。


それがゴジラを日本に呼び寄せつつあることを知らずに——。



——2036年 東京——

 

時代が変わるごとに進化を繰り返すこの日本の首都、東京の街は、毎日大勢の人々でごった返していた。スーツ姿のサラリーマン、手を繋ぎながら歩くカップル、仲良しグループで話している学生。いくら時代が変わろうとも、この賑やかさだけは変わらない。


かつては怪獣による災害が多発していた日本だが、2022年に現れた個体を最後にそれらの災害は全く発生しなくなり、人々は怪獣の恐怖をすっかり忘れ、平和な生活を謳歌していた。


怪獣災害が発生するたびに多大なる被害を受けたこの街は、その度に復興を遂げ、まさにスクラップアンドビルドで成長していき、高層ビルが立ち並び、沢山の人や車が行き交う大都会へと進化を遂げていった。


また、高度なインターネットシステムによってその成長は加速していき、様々な情報が行き交い、人々の暮らしはより豊かなものになっていった。


そんな街の上空を、海上自衛隊のP-1哨戒機が海へ向かって飛んでいった。


目的は、最近頻発している海水の異常な温度上昇の調査だ。 


「おい、お前もう聞いたか?ここ最近の海水の異常な温度上昇はゴジラが原因だっていう噂だぜ?」


退屈しのぎに一人のクルーが他のクルーに話しかけた。


「バカ、そんなわけねえだろ。ゴジラはとっくの昔に倒されたんだぞ。海底火山の運動が活発になったんだよ。ここ数年怪獣による被害や怪獣の目撃情報は、全くないじゃねぇか。お前まだそんな何の根拠のない話を信じてんのかよ。」


話しかけられたクルーは、少々苛立ちをあらわにしながらその噂話を否定した。自衛隊の内部では、そのような噂が出回っていて、そのクルーもすでに耳にタコができるくらい聞いていた。もちろん、海水の温度上昇がゴジラによるものだと決定づける証拠など全くないのだが、一部の隊員がそのような話をでっち上げて、それが広まってしまったらしい。


「けど、もし、第2や第3のゴジラがいるとしたら...?」


「おい、お前ら。もうすぐ現場海域だぞ。さっさと測定の準備しろ。」


否定されてもなお話を続けるクルーに貫禄のあるベテランクルーが呼びかける。そうすると、二人のクルーは気だるそうに立ち上がり、音響測定用のソナーであるソノブイを準備した。


「まったく、最近の若いのは...。」


ベテランクルーはそんな若手のクルー達を見て、呆れた口調で呟いた。


ほどなくして、P-1は現場海域に到着した。


「よし。ソノブイ投下。」


ベテランクルーの指示によって、ソノブイが投下され、着水と同時に海面に小さな水飛沫が上がった。


ソノブイを投下すると、P-1は現場海域の上空を飛行しながらソノブイとレーダーによる海中の測定を開始した。


「またどうせ何も反応はないだろうがな...。」


ソノブイ担当の音響員はそう呟くと、ソノブイが探知した音を聞くためのヘッドホンを装着した。


彼の言う通り、この温度上昇の調査は最近頻発に行われているが、どの調査でも、全く何も探知しないのだ。やはり海底火山によるものだと考える隊員も多いのだが、この国は怪獣災害を多く経験したこともあり、このような調査を続ける必要があることは、やはり仕方がない。


「それにしても、静かな海だな。東京とは大違いだ。」


「まったくだ。あの街は騒がしくて敵わん。こんな静かな景色を眺めるのも現代人には大事だよ。」


操縦士と副操縦士は眼下に広がる広大な水面を見ながら駄弁っていた。本当に静かな海だ。この海を見ていると、自分たちの悩みや不安など、ほんのちっぽけな物なのだと思い知らされる。


30分、40分......。


やはり今回も何もないまま時間が過ぎていく。


「やっぱ怪獣なんかじゃなくて、海底火山じゃないのか?怪獣なんて、2022年に倒されたやつでもう最後だろ?早く帰還しようぜ。」


沈黙に耐えかねて一人のクルーがぼやいた。


彼の言う通りだ。全く何の反応もない、本当に静かな空間だ。まるで、一面が海に囲まれ、沈黙が支配する違う世界に移動してしまったかのようだ。


測定機器を見つめていたクルーも、あまりの静けさに思わずあくびをした。


幾度も繰り返される無意味な調査飛行は、クルー達の士気をすっかり低下させてしまっていた。


「おい、お前ら!ボケっとしてんじゃねえぞ!もっと真剣に任務にあたれ!!」


ベテランクルーが気の抜けたクルー達に喝を入れた。多くの実戦を経た者の顔立ちは、やはり迫力が違う。喝を入れられたクルーは、再び機器へと意識を集中させた。


1時間経ち、基地へと帰還しようとしたとき、突然、


「巨大な心臓の音を探知!間違いありません、怪獣です!」


と、音響員が驚きの声で叫んだ。


「何!?怪獣だと!?」


あまりにも突然の報告に慌てるクルー達。


続けて、レーダーを担当する非音響員が報告する。


「移動物体の反応あり!全長...約100メートル!」


「100メートル!?」


「めちゃくちゃ大きいぞ!」


そんなクルーの動揺のなか、非音響員の報告が続く。


「移動物体、急速に上昇!」


「姿を見せるぞ!撮影の準備急げ!」


クルーが慌ただしく撮影用のカメラを準備していると、「それ」は海上に姿を現した。


バタバタと準備をしていたクルーは、「それ」の姿を確認すると、作業の手を止め、全員唖然とし、「それ」を驚きの目で見つめた。


「おい...あれって......。」


「ウソ......だろ......?」


「それ」は、炎のような禍々しい背鰭に、どす黒い巨大な体を持つ、数十年前、東京を焦土に変えた魔獣——「ゴジラ」そのものだった——。

















































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