わたしが死んだのは妹のせいです

あめいろ

第1話 私、死にました

目が覚めたら、そこは白い部屋だった。

一宮遥香はボーッとする頭をキョロキョロさせて、辺りを見渡した。

まったくもって何もない。殺風景な部屋だ。

部屋の大きさとしては6畳くらいのものだろうか。恐らくそこまで大きくない部屋なのだろうが、1人でいるとなんとなく広さを感じる。

何、ここ.....?

というか、そもそも何故、自分はこんなところに?





わたしの記憶が正しければ、わたしはビルの屋上から飛び降りて死んだ。

まさか生きていた?

にしては身体にどこも傷がないのはおかしい。

なんかSFとかでよくあるクローンで生き返ったとか、漫画でよくある異世界に転生したとかそんな感じだったり.....んなわけないか。

現代科学から考えてありえない。でも、だとしたらこの状況をどう説明する?

実は何年も眠っていて、その間に傷は治してもらっていて、でもその治してくれた研究機関の実験対象にされてて、この白い部屋にモルモット的なノリで入れられてるとか.....いやないか。てか出口ないもんな。

そもそもわたしの格好もおかしい。

わたしは改めて自らの格好を見た。一糸纏わぬその姿は貝ブラ時代の武田久美子を彷彿とさせる.....って、いや何で全裸?

わたしは全裸だった。もし本当に実験対象とかだったら笑えない。20代女子を全裸で監禁とか今ドキ、BSスカパーのアダルト枠でもやりそうにない。てかコンプラに引っかかる。

言い忘れたが、わたしは一宮遥香。千葉生まれ千葉育ちの永遠の24歳である。死んだのだからある意味本当に永遠の24歳になったわけだが。

て、そんなことよりも、ここがどこなのか。そして、わたしは本当に死んだのか調べる必要がある。ここが死後の世界だとしたら、それはそれで困る。こんな何もないところで生きていけない。いや死んでるから生きてるもクソもないか。てかこの思考回路を実際にやる日が来ようとは。幽遊白書は偉大だったなぁ(遠目

ふと壁に仕掛けがないか見に行こうと足を踏み出したとき、何かにつまづいた。

「おっとっと!て、何コレ?」

つまづいたものはテレビのリモコンのようなもの。何でこんなものが?

リモコンをよく見ると、スイッチには数字は書かれておらず、何やら文字が書いてあった。

「ん?」

電源らしき赤いボタンには『キス』と書かれていた。

キス。マウストゥーマウスか?それとも大穴の魚の方?それともホッチキスの片割れ?

意味が分からない。

他のボタンを見てみるが、さらに謎は深まるばかりだ。

他のボタンには

『告白』『お泊まり』『ぶりっこ』『脱ぐ』『ハグ』

などと書かれている。

実に不謹慎極まりない。

どーゆうことだ?

さらに他のボタンを見ていくと、

『お墓参り』『参拝』『お見舞い』『退学』『オーディション』

などと書かれている。

まったくもって統一性がない。

ただ、なんとなく引っかかる部分もあった。

「わたし、これ、やったことあるような....」

実はわたしには3つ下の妹がいた。ただ、7年前に亡くなっている。それは丁度わたしが高校生だった頃のことだった。妹は当時、中学生だったのだがクラスでイジメに遭っていた。そして校舎の屋上から飛び降り自殺してしまった。わたしは当然、妹を虐めていた奴らを半殺しにして病院送りにしてやったわけだが、そのせいで高校を『退学』させられていた。その際に運良く芸能事務所のマネージャーにスカウトされて、アイドルグループの『オーディション』を受けたのだ。高校を中退していることもあって、後が無かったわたしは死に物狂いで頑張った。枕営業もやったし、わたしのキャラじゃない『ぶりっ子』キャラも演じた。売れる為には『脱ぐ』ことも厭わなかったし、時には好きでもない奴に『告白』することもあった。でも、そんな中でも妹の『墓参り』も忘れなかったし、妹と毎年欠かさず行っていた近所の神社への『参拝』も......


やっぱコレわたしのことでは!?


考え出したら、そう思わずにはいられなくなってきた。偶然だとは思えない。

だとしたら、何で生前(?)のわたしの行動を記したリモコンがここに?

まるで誰かがわたしをこのリモコンで操ったみたいな.....

え、でもここに来る為には死ぬしかないんじゃ?

それにここまでわたしのことを理解した上で操作できるのなんて、1人しか.....

だとしたら『キス』が電源ボタンにあったのも頷ける。わたしが屋上から飛び降りたのは『キス』がキッカケだったから。


1つの事実に辿り着いたとき、

わたしは背筋が凍ったような気がした。



わたしが死んだのは、妹のせいかもしれないから。

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