万能薬と副作用
宮沢コウスケ
若医者ホッペンハイム
ある村にホッペンハイムという若い医者がいた。容姿端麗で頭脳明晰。村で初めての医師ということもあり、大変将来を嘱望されていた。
村では数年前から謎の病が流行り、人々を苦しめていた。
その病は咳・倦怠感の症状が出た後、一週間以内に死んだように眠りにつき、そのまま目を覚まさない。
特筆すべきは、小学校に入る前の幼い子供しか発症しないということだった。
正義感の強いホッペンハイムは、なんとかして病を治したいと思った。村の診療所に自分の代わりの先生として親友であるパッペンホイアを呼び、子どもたちの治療を任せた。
ホッペンハイムはこの世のどこかにいる仙人に病を治す薬を貰おうと旅に出た、天竺へ。遂に彼は仙人を見つけ薬を頂いた。
ホッペンハイムは希望に満ち溢れた顔で村へ帰ってきた。パッペンホイアに手伝ってもらいながら、眠る子ども達に薬を投与した。
すると今までピクリとも動かなかった子どもたちの顔色に生気が戻り、数日後には元気に屋外で遊べる程に回復した。
ホッペンハイムの起こした奇蹟はすぐに拡まり、村人から天才医師や神などと称賛され英雄の様になった。だがどこか浮かない顔をしていた。
なぜなら子供達を治した薬は自分で調合したものではなく、仙人から貰ったものだった。
ホッペンハイム自身は何もしていないのだ。そしてホッペンハイムの不安は的中した。
薬を投与した子供たちが急に昏睡状態に陥ったのだ。恐れていた最悪の事が起きた。
薬の副作用だ。今のホッペンハイムには、仙人の薬に対する解毒薬は持っていなかった。子供達を昏睡状態から救う手立ては無かった。
ホッペンハイムは仙人という非科学的存在を信じ、利用した自分を悔いた。ホッペンハイムは解毒薬を手に入れる為、もう一度天竺へ行くことを決めた。
親友に診療所を任せ、彼は旅立った。
数年が経ったが、彼は帰ってこない。診療所も眠る彼らもこの世界のどこかで今も存在しているらしい。
万能薬と副作用 宮沢コウスケ @kosuke-miya
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