探偵はやめられない

長屋創

第1話 探偵登場

 探偵は崖の上で連続殺人事件の犯人と対峙していた。

「馬鹿な真似はやめなさい!」

「そこをどいて!あたしは海に身を投げて死ぬんだから!」

「駄目だ。たった一度の過ちで自ら命を絶つなんて…」

「一度じゃないでしょうが!あたしは三回も間違いを犯したのよ!どの面下げて生きていけばいいってのさ!」

「あ、そうか。そうだった。いや、しかし何も死ぬことはないんじゃないかなあ…」

「つべこべ言ってないで、いいからそこどきなさいってば!」

「あ、ちょっと、あ、あ、うわあああぁー!…」

「ヤベっ」

 そこへ、サイレンを鳴らしてパトカーが到着した。車から降り立ったのは警視庁捜査一課の蟹鞠警部である。ドタドタと崖の淵へ走り寄り、

「や、奴は?奴はどこへ?!」

「えーと、海に落っこち…いや、身を投げました」

「そんな…」

 ヘナヘナとその場に崩れ落ちる蟹鞠警部。

 力ない声で、

「いったいどうなってんですか、金田一さん。犯人当てに三回も失敗した挙げ句、真犯人をみすみす死なせてしまうなんて…」

「面目ない。ごめんね〜」

「ああ、上になんて言われるか…」

「ほらほら、くよくよすんじゃないわよ。次よ次!さあ、ついてらっしゃい!」

 自称名探偵・金田一京子は蟹鞠警部を引きずるようにしてパトカーに押し込み、自らも乗り込むと、声高らかに告げた。

「運ちゃん、銀座へGO!事件解決の打ち上げよ!」

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探偵はやめられない 長屋創 @nagayaso

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