人間合格
迷い猫
人間合格
彼氏のいる女性を愛してしまいました。彼女は大学の同級生で太陽のような笑顔をしていました。僕のような男からしたら高嶺の花だったのかもしれません。
ある日、彼女から連絡が入りました。内容は彼氏と上手くいっていないという相談です。彼女は「私に構ってくれない」と悲しそうに言っていました。僕はその彼氏を妬みました。こんなにも可愛い彼女を放っておいて何をしているのだと怒りも湧きました。
「君は私のこと、どう思っているの?」
相談を何回か受けるうちにそんなことを聞かれました。僕は何と言ったでしょうか、あまり覚えていないです。それでも彼女と関係を持つことになるということからして肯定的な返事をしたのではないでしょうか。
彼女は僕のことを好きだと言い始めました。最初は半信半疑だったのですが、彼女を信じたいという想いが日に日に増していった僕は彼女を完全に信じるようになりました。
僕は21歳になっても彼女ができたことがなく、童貞でした。だから僕は彼女を愛するよりも先に行為をしたいという気持ちが強く出てしまったようです。
セックスは彼女の部屋でしました。彼氏ともここでそういうことをしているのだと思いながらするセックスは最高でした。カーテンを閉め切り昼間からしました。声を抑えようと口を手で塞いでもなお溢れる声量が堪りませんでした。
彼女から太陽のような笑顔が消えていることに気づいたのはそれから少ししてからです。
「私はやっぱり彼のことが好きだったみたい」
彼女にそう聞かされて僕は怒りと悲しみとそれから、人間としての喜びを感じてしまいました。
一人の男を愛する女をこの目で見られたのだと思うと僕は吹っ切れたように笑いました。悪魔から人間の心を返してもらったかのように盛大に笑いました。
「……ははは」
笑いは次第に涙へと変わっていきました。ここで僕は気づきました、自分はなんて弱い存在なのだろうと。
本気で好きだった女性が手に入らなかった現実をそこでやっと痛感しました。
人間合格 迷い猫 @straycat_7
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