第39話 原始的だが有効だ

 4回戦は、レオとエミリートだ。

 この2人は結構剣の腕が高いし、いい試合が見れそうな気がする。


「では、構えて…。始め!」


 その合図とともにエミリートはレオに突撃する。レオは油断なく木剣を構えて、エミリートの動きを観察する。

 エミリートは薙ぎ払うように木剣を一閃、剣先はレオのギリギリを掠める。

 レオは木剣をよく観察して、避ける間合いを完璧に理解して避けた。

 そして、最速の突きでエミリートの腹部を狙う。

 だが、エミリートはそれを空中で体を捻って避け、着地ざまにレオの足を狙う。

 だが、レオはそれをも完璧な間合いで避けて剣を叩きつける。

 エミリートが避けた場所はひび割れる。


「すごいパワーだね」


「ふん、お前こそやるな」


 互いに一言ずつ言い合った後に再び距離を詰めるためにエミリートは飛び出す。

 レオはエミリートの動きを見て、次に来る手を予想して、避けの動作に入る。

 その時、エミリートは更に加速をして、レオを切り抜けた。


「は、はやいな」


「勝ちはエミリート!」


 エミリートは最初から本気でスピードを出していなかったのか。そして、レオの完璧な間合いの避けの動作に入った時に、スピードを解放して、一気に詰め寄り切り抜けた。

 エミリートの剣の戦闘センスはかなり高いな。


「レオは木剣を見すぎたねー。完璧な間合いの避けだったけど、それを意識しすぎてもらったから、不測の事態が起きても対応出来るようにしよう。エミリートは流石だな。その調子で次も頑張れ!」


 しかし、エミリートは剣の腕は確かだな。

 勝つために相手を騙して誘導させるのも上手い。フェルは剣がからっきしでごり押ししてくるけど、エミリートと訓練すれば上達しそうだ。

 レオとエミリートは観客席に戻り、フェルとカルトが闘技場に立つ。

 フェルがどう戦うのか見ものだな。


「では、構えて…。始め!」


 フェルは合図とともに薄く跳躍して、突進する。

 カルトは剣を振りかざして、フェルの剣と打ち合った。

 あのスピードのフェルを避けずに、迎撃するとは…。カルトは相当、目が良さそうだ。

 だが、その後にフェルが空中で体を一回転して、対応に遅れたカルトの脳天に木剣を当てた。


「はい!フェルの勝ち!フェルはスピードで相手を翻弄出来るからその調子でね!カルトは正確に超スピードで突っ込んでくるフェルの木剣に対応は出来たけど、そこから更に対応出来るように頑張ろう!」


 イザベラ先生も無茶を言うな…。

 フェルの超スピードは身体強化の魔法を使ってる俺でさせ対応出来ないんだから。


 フェルは闘技場に残り、カルトが観客席に戻る。入れ替わりでエミリートが闘技場立つ。


「早いね、君」


「あぁ、それほどでもないのじゃ」


 本当にフェルは謙遜とかではなく、そう思ってそうだな。

 しかし、この試合…。どうなるか、凄く気になるな。


「では、構えて…。始め!」


 その合図で、両者とも加速して、距離を詰める。そして、両者の木剣が打ち合う。

 力で勝つフェルが押し返して、エミリートの木剣を弾く。

 その隙に、フェルは超スピードの突きを足目掛けて放つ。

 だが、エミリートはすんでのところで避けて、後ろに跳躍して距離をとる。


「ふむ、スピードでは勝ってるのに当たらん。心を読まれているみたいじゃ」


「ふふ、本当にそうだとしたら僕は君の木剣には当たらないね」


 そう言ってエミリートは駆け出す。

 フェルも同じく駆け出し、目の前に迫ったら剣を構えて振り下ろ…さず、エミリートの後ろに回りこみ、突きを繰り出す。

 だが、エミリートはそれにも対応して見せた。


「本当に心を読んでるのか?」


「うーん、そんなことってできるのかなぁ」


 俺の呟きに、カルトが言葉を返す。


「魔法にはそんなものは無かったはず。あったとしても、木剣での試合で態々魔法を使うのはおかしいと思うけど」


 そう言って、自分の考えを口に出すエマ。

 うーん、あんだけフェルの攻撃が当たらないのも珍しいし、本当に心を読んでいるのか?


 未だ剣戟が続く中、フェルの攻撃は一切当たらず、フェルも超スピードで動くからエミリートの攻撃は当たらない。

 …なんで心が読めてるのに攻撃は当てないんだろうか?うーん、そこに答えがありそうだ。


「ふは、分かったぞ。前にもこんなことをしてる奴と戦ったことあるのじゃ!」


 そう言ってフェルは距離をとって、何やら制服の上を脱ぎ始めた。


「おいおい、何やってんだ?」

「フェルちゃんって意外と大胆…」

「男子ー、興奮するなよー」


「してねーよ」「していない」


 フェルは制服を脱いで、肌着の状態になり、右腕には木剣、左手には制服を持っている。

 そして、フェルは今までで1番早いスピードで、エミリートに向かって飛び出す。

 そして、エミリートの前に来たら制服をエミリートの方に投げて、木剣を振り下ろす構えをする。

 目くらましか?心を読まれているならそれは通用しないと思うが…。


 すると、エミリートは跳躍して後ろに下がった。その隙を逃すはずがなく、フェルは追撃をする。追撃の木剣はエミリートの腹部に当たり、決着がついた。


「勝ったのじゃ」


「…流石だよ、見切られたね」


「勝ちはフェルー!優勝もフェルー!おめおめー!」


 こうして、訳が分からぬままトーナメントは終わったのだった。

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