変態メイドはご主人様を愛しすぎている
@wasabisenpai
第1話 白銀撫子と冴島智也
銀色のロングヘアを靡かせ、鼻歌混じりに赤い絨毯が敷かれた廊下を歩くひとりの女性。
メイド服の胸部分を大きく押し上げる豊満な双丘は、彼女の軽い足取りに合わせてゆっさゆっさと揺れている。目つきが鋭く、ぱっと見で性格のキツそうな女性であることが窺えるが、上機嫌であるためかその雰囲気もいくらか緩和されている。
彼女の名は白銀撫子。この屋敷に住まう少年に仕えるメイドである。
現在の時刻は朝の6時50分。これから学校に行かなければならない主人を起こすため、彼の部屋に向かっている最中である。
愛するご主人様の部屋に辿り着くと、音を立てないようにそっと扉を開く。
本来ならノックをしてから入るのだが、すやすやと気持ちよさそうに眠る主人を起こさないよう敢えてノックはしない。いや、本来なら起こさなければならないのだが、撫子の私情によりまだ起こすわけにはいかないのだ。
薄暗い部屋の中を淀みなく進み、ベッドの側で膝立ちになると部屋の主である少年の寝顔を覗き込む。
「ふふ、可愛い……♡」
デレデレとだらしなく頬を緩ませる撫子。
しかし、それも無理はない。彼の主人である冴島智也は、高校1年生でありながら見た目は小学生にしか見えないほど幼い。
顔立ちも非常に可愛らしく、同年代や年上の女性から絶大な人気を博している。
「くっ……!このまま坊っちゃまの幸せそうな寝顔を見つめていたいが……そろそろ起こして差し上げねば」
心底名残惜しそうな顔をしながら、何故かベッドに潜り込む。
そして智也の顔が胸元に来るよう位置を調整すると、彼の頭部をぎゅっと抱きしめる。
「坊っちゃま、おはようございます。朝ですよ」
優しい声色で囁くように言うと、智也の頭がピクリと動き、撫子の大きな胸に顔を埋める。
「ん……おはよ……」
母親に甘える子供のような姿に、撫子の母性本能がくすぐられた。
智也はこうして甘えん坊な一面を見せることがあるのだが、撫子がそれを拒否するはずもない。むしろ、とことん甘やかしてやろうという気概すら感じる。
「ぼ、坊っちゃま……! 可愛すぎますぅ♡」
抱きしめる力を一層強めると、寝ぼけ気味だった智也もさすがに息が苦しくなり、目を覚ました。
「な、撫子さん……! 苦しい……!」
「はっ……! 申し訳ありません坊っちゃま! この撫子、坊っちゃまのあまりの可愛さについ我を忘れてしまいました!」
慌てて腕の力を緩めると、智也が苦笑しながら撫子の胸の谷間から顔を出す。撫子に上目遣いを向ける智也を再び強く抱きしめたい衝動を抑え込み、改めて朝の挨拶を交わした。
「おはようございます、坊っちゃま」
「おはよう、撫子さん」
これは、天使のように可愛らしく無自覚に周囲の女性を魅了してやまない少年と、そんな彼を愛しすぎるあまり変態ストーカーと化しているメイドの日常の物語である。
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