第12話 初クエスト
「へぇー、お二人でパーティをですか……私の話なんてどうでもいいんですね……シオンさんの馬鹿……」
「あの……アンジェリーナさん?」
「いいんですいいんです、私とあなたは、ただの冒険者と、受付嬢ですからね。私の忠告なんてどうでもいいんですよねー」
「この受付嬢はなんであなたをスラム街に転がるゴミをみるような目でみているのかしら……」
翌日、冒険者ギルドで待ち合わせをした俺たちは、さっそくパーティー結成を報告したのだが……アンジェリーナさんがむっちゃ不機嫌になってるぅぅ!! いや、確かにカサンドラとは組むなとはアドバイスされたけどさ。でもあの噂はギフトのせいだったんだよ。俺がどう誤解を解こうかと考えていると彼女はいつもとは違い、事務的な感情のない口調で進める。
「ではカサンドラさんはソロでBクラスですが、クズ……じゃなかったシオンさんはソロではCクラスなので、一応試験のようなクエストをうけてもらいます。クエスト内容はトロル退治です。お二人も経験済みだとは思いますがBランクの登竜門ですね。カサンドラさんは一人で戦うのではなく、シオンさんとの連携を意識してくださいね。無事依頼を達成すればBクラスのパーティーとして認められますよ」
「ええ、ありがとう、パーティー結成の初のクエストね、シオンがんばるわよ!!」
「ああ、がんばろうね……」
待って、今、アンジェリーナさん、俺の事をクズって言わなかった? 扱いがひどくなってるぅぅぅ!! 初のパーティーとしてのクエストでテンションが高いカサンドラと反比例して、俺のテンションはむっちゃ低くなっている。どうしてこうなった? ちなみに本来ならばランクアップはもっと大変なのだが、俺の場合直前までBクラスのパーティーに所属していたからこんな簡単なのだろう。
「その……興味本位なんですが……お二人はどういう経緯でパーティーを組むことになったんですか? 私がパーティーを組むのを勧めた時は断ったくせに……強引にナンパとかされませんでした?」
「いや、その……」
なんていう事を言うんだこの人!! 確かにアンジェリーナさんの紹介は断ったけどさ……あの時はソロでの自分の力を知りたかったし、そういう気分じゃなかったんだよ、でも、俺の事を必要だっていってくれるカサンドラにひかれたんだのだ。そりゃあカサンドラは美人だし、髪の毛もきれいだけどさ……別に彼女が好みのタイプだったから組んだわけではないのだ。俺がなんと説明をしようか悩んでいるとカサンドラが口を開く。
「そっか、シオンはしばらくソロで活動するつもりだったのね。ごめんなさい。私がなんでもするから組んでって頼んだのよ。シオンに強引にお願いしただけだから、彼は何も悪くないわ」
「へぇー、なんでも……なんでもですか……ドクズですね……」
カサンドラの言葉にアンジェリーナさんが俺を睨みつける。ひぇ……アンジェリーナさんの目がむっちゃ冷たいんだけど……すっげえ、勘違いをされた気がする。
「あら、シオンはクズなんかじゃないわよ、昨晩だって私の髪の毛を綺麗で好きって褒めてくれたのよ、すっごい嬉しかったわ。本当にクズならそんなことは言わないでしょう?」
「あの……カサンドラちょっと黙っててくれない!?」
「へぇー、昨晩ですか……出会ったその日にずいぶんと仲良くなりましたね。シオンさんは女性と仲良くなるのがお得意なんですね。そういえばアスさんともいい感じでしたもんね? あ、しゃべらないでくれますか、クズがうつるので」
確かにカサンドラの髪を綺麗っていたけど、それはここの酒場での話である。確かに昨晩だけどさ、絶対あらぬ勘違いをされている気がするんだけど。
「いや、違うんですって!! これには色々と流れが……それに、別に俺はカサンドラの髪がきれいだから組んだわけじゃ……」
「私の髪が綺麗と言ってくれたのは嘘だったの? そうよね……こんな色の髪変よね……せっかく気を使ってくれたのに……調子にのってごめんなさい」
俺の言葉に今度はカサンドラがすごい悲しそうな顔でつぶやいた。いや、違うよ、違うんだってば!!
「カサンドラの髪は炎みたいですっごい綺麗だよ。トリートメントとかがんばってるの?」
「あの、いちゃつくならよそでやってくれませんか? 私も忙しいんですよね」
「とりあえず、依頼は受けたんでもう行きますね、カサンドラいこう」
あっちをたてればこっちが立たずである。誰かたすけてくれぇぇぇぇぇぇ。俺は逃げ出すようにギルドを出ようとする。その背中に声がかけられる。
「シオンさん……無事に帰ってきてくださいね」
「ええ。もちろんです」
俺はアンジェリーナさんに笑顔で返事をしてクエストへと向かった。
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