「ショート」僕の隠れ家。

たのし

僕の隠れ家。

賑わう町からほんの少し外れた場所にそこはある。喫茶店「海から」排気ガス撒き散らす道路脇には似つかわしくない名前。


海からも遠く何故こんな名前?なんて考えながらいつも入っている。


ボロボロの雨除け、アンティークを基調とした看板に本日のメニューとか書かれている。


アイスコーヒー。にモカ。アメリカン。そして、ランチに様々なメニューが書かれている。


しかし、僕はいつも目をくれず扉を開ける。


カランカラン。


懐かしい音だ。いつも、ここに来たら懐かしさから入れる。


中に入ると奥にカウンター。

カウンターの前にはテーブル席。


そこは喫煙者用の様だ。


僕はテーブル席に座り、アイスコーヒーを注文する。


ジリジリと焼けた皮膚に心地よい空調の冷気。


この前来た時は腰の曲がったおばあちゃんが店員さんだったけど、今日はもう少し若い子綺麗にしている女性だ。


タバコに火をつけ目の前にあるカセットテープのもう動かないであろうコンポを見ながらカウンターを挟んで向かい合う店員さんと老人の会話に耳を傾ける。



「今日はお昼食べたの?」


「いや、食べてないね。」


「なら、軽く何か作ろうか。」


「頼むよ。」


店員さんは冷蔵庫を開けて材料を出す。


「ナポリタンでいい。」


「うん。」


そして、何かを手際良く切り始め炒める臭いが店全体を覆い始めた頃、ハッと思い出したかの様に氷を砕き始めた。


そして、「お待たせしました。」


っと、3本目のタバコに火をつけた頃、僕の待つ席にアイスコーヒーが届いた。


水滴がついたグラスに注がれたコーヒーとガムシロップとミルクが入った小瓶が二つ。


溶けかけた氷が入った水が届いた。


僕はストローを刺しブラックで一口飲んだ。

雑味の無い苦味が口に広がる。くどくないせいか、スッキリとした後味。


カウンターの横にはアンティークの時計に何処の民族のものか分からない木の模型。


その横には増加と思われるアサガオが飾ってある。


僕は、スマホを取り出し作品を書いている。


どんな始まりにしよう。そして、どんな終わりにしよう。


ジャズの音楽が店の雰囲気によく合っている。


集中力が無くなると音楽が耳に入る。


そして、気づくと隣の席に甚平を来たおじさんがハイプに火をつけ煙を口よらせていた。


鼻にツンとする匂いがしてきて、コーヒーの匂いと相まって心地よい。


僕はまた、作品を書き始める。


コーヒーの中の氷が消えてなくなりそうな頃、頭に糖分を入れるためガムシロップを入れ一気に飲み干す。


物語が1つ完成し、テーブルに500円置くと僕は外に出た。


日差しは暑いが心は細波の様に穏やかだ。


中古の本を見に行こう。

僕はまた背中に垂れる汗を感じ「海から」を後にした。



おしまい



-tano-

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