第29話 一休憩

 長い大量の買い物を終え、サンルームが併設されたお洒落なお店でケーキと紅茶を前に休憩した。



「アレクシスが買い物好きだとは知りませんでした。領地で女性に人気があるのは当然ですね」


「母上以外、女性にプレゼントなんてした事ないよ。乾杯のワインくらいかな」


「仲良くていらっしゃるのですね」


「確かに、うちはかなり仲がいいと思う。


後は・・靴だな」



「アレクシス! 流石に靴は無理ですわ。サイズを合わせなくては使えませんもの」


「アメリアに試してもらうからいいよ」


「無理です。靴はドレスのようにサイズを変更なんて出来ませんから」




「アメリア、結構鈍感なんだ。全部アメリアへのプレゼントだよ」



「あっ、あり得ません。いただく・・理由がございません。あのように高価なお「アメリアって緊張したり困ったりすると普段より益々丁寧口調になるんだ」」



 悪戯を見つけた子供のように、アレクシスはとても楽しそうだ。


「しかも、ちょっぴり吃ってつっかえる。

初めて会った時も、物凄い丁寧口調だった」



 アメリアは真っ赤になってプルプルと震え、

「信じらんない、あの時の事を言い出すなんて!

あん、あんな・・最低! 変態!」



「ここを出たら、靴を選んで帰ろうか」


「買いません、頂きません。お断りします」


「今週末のパーティーに着て欲しい。俺の為に着飾って欲しいんだけど、駄目かな?」


 首を傾げ、にっこり笑ってアメリアの動揺を誘う。


「・・駄目です。私は自分の本分を全う致します」


「なら、俺も。ここにいるのはアメリアに求愛する為だしね。ガンガン攻めないと」



「きっ求愛? あり得ませんわ。家庭教師に公爵家の方が求愛とか」


「ほら、吃ってる」


 ケラケラと笑うアレクシスを睨みながら、ケーキにフォークを突き刺した。




 その日の夜、イライジャから遠乗りに誘われたアメリアは、

「残念ですけど、馬には乗ったことがありませんの」


「現地まで馬車で行くし、試してみて無理だと思ったらのんびりピクニックすれば良いと思う」


「外はかなり寒くなっていますわ。ピクニックなら来年の春くらいの方が宜しいかと」


「風邪なんか引かさないから大丈夫だ」



 アメリアは目をすがめて、

「・・お二方とも何を考えておられますの? 退屈しておられるなら他にお相手はいくらでもいらっしゃいますでしょう?」


「逃げるのか?」


「はい?」


「馬が怖くて逃げるんだろ、正直に言えよ」


「・・別に怖くなんて「よし、なら明日の朝迎えに来る。手ぶらで構わないから」」


「乗馬服など持っておりませんから無「問題ない。準備して持ってきてある」」



「は? 私の・・ですか?」


「ロージーに頼んでサイズは調整してもらってるから大丈夫だ」



 慌てて後ろを振り返り、

「ロージー、あなたいつの間に?」


「お嬢様がいくら言ってもレースから離れなさらんで、イライジャ様の提案に乗りましたです」



 味方の裏切りで、アメリア再び万事休す。


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